揚げてないのにピロシキ? 函館新名物「焼きピロシキ」の秘密に迫る

2017年12月に誕生した函館の新名物「はこだて焼きピロシキ」が、じわじわとファンを増やしています。なぜ函館でピロシキなのか、そもそも「焼きピロシキ」という耳慣れない食べ物はいったいどんなものなのか、ご紹介しましょう。

焼きピロシキとは

ピロシキと言えば、具がたくさん入った揚げパンをイメージする人が多いはず。一般にはロシア風のパンとして認識されていますが、実はロシアでは、普通のパンと同じようにオーブンや窯で焼き上げた「焼きピロシキ」が一般的。

イメージとしては、野菜などの具材を生地で包んで焼く長野県の郷土料理「おやき」に近く、「パンに具が入っている」というよりは、「具材をパンで包んで食べる料理」として親しまれているそうです。

こうした本来のピロシキのあり方を踏まえて、「はこだて焼きピロシキ」には「『揚げ』ではなく『焼き』とすること」「生地と具材は1:1を目安に」などの統一ルールが設定されています。「必ず2種類以上のスパイスと、道南産食材1種類以上を使用すること」との決まりもあり、2018年2月現在、函館市内の6事業者からそれぞれ味わいの異なる「はこだて焼きピロシキ」が販売されています。

▼まるたま小屋「ホワイトライスカレー」。ロシアでは一般的な、具材にお米が入ったピロシキを再現。ふっくりんこの5 分づき米と道南野菜をスパイスやカレー粉などで香り豊かに仕上げた

なぜ函館でピロシキなの?

「はこだて焼きピロシキ」の“仕掛け人”は、函館市や渡島総合振興局など7つの機関で構成される「はこだて雇用創造推進協議会」。地域にある資源や素材を活用して新たな商品を開発する国の事業の委託を受け、これまでに数々の特産品を開発してきました。

今回、函館は日本で最初のロシア領事館が置かれた場所であり、現在もロシアとのかかわりが深い土地柄であることから、函館から新たなピロシキを発信しようと発案。

そこで、市内の飲食店「まるたま小屋」と、老舗ベーカリー「キングベーク」の協力を得て、「はこだて焼きピロシキ」の基本レシピを開発。実際に販売されている「はこだて焼きピロシキ」は、基本レシピを踏まえつつ、統一ルールの範囲内で各事業者が工夫を凝らしたものとなっています。

▼キングベーク「タイ風カレー」。ホクホクとした食味が魅力の道南産大豆「たまふくら」や鶏挽肉などを使用した具材がたっぷり。タイカレー風味の深みのある辛さも魅力

発売以来、パン好きが多い函館市民の間でも反応は上々。店を回って食べ比べをするファンもおり、店舗によっては人気ナンバーワンのパンになっているという話も。

開発に協力した「まるたま小屋」オーナーの北見伸子さんは、かつて函館にあったロシア料理店で食べた焼きピロシキが忘れられず、3年前の同店オープン当初から手作りの焼きピロシキを提供していました。その腕前は、撮影で訪れたロシアのタレントが「本国のピロシキよりおいしい」と太鼓判を押してくれたほど。

「焼きピロシキ」がご当地新名物となったことについて、「函館に行ったらピロシキは揚げじゃなくて焼きなんだってね、と日本中で言われるようになったらおもしろいですね」と夢を膨らませています。

▼こすもす「昔ながらのこすもす風」。かなり昔に作っていたスタンダードな揚げピロシキをアレンジし、「焼きピロシキ」に変えて復活。春雨入りの懐かしい味

▼BAKERY ル・レーブ「ごろごろ野菜カレー」。お母さんが作るカレーをイメージした野菜たっぷりのカレー風味。野菜や豚肉だけでなく、小麦粉も道南産というこだわりぶり

「はこだて焼きピロシキ」提供店舗
まるたま小屋(函館市元町2-3)
ちいさなしあわせパン☆ (函館市五稜郭町18-7)
BAKERY ル・レーブ(函館市白鳥町17-18 コーポ浩洋1F)
手作りパンの家 こすもす(函館市富岡町2-46-8)
キングベーク本店(函館市亀田本町7-8)/キングベークナチュラル(函館市本町24-1 シエスタハコダテB1F)
パン・エスポワール 戸倉店( 函館市戸倉町316-1)/的場店(函館市的場町11-23)/石川店(函館市石川町147-3)/函館駅前店(函館市若松町20-1 キラリス函館1F)