みなさんは、路線バスを利用したことがありますか? その走行ルートを見る機会はあまりないかもしれませんが、バス運行会社が発行する時刻表やルートマップを見ると、こんなところも走っているんだ!と驚かされることもしばしばです。
地元の方々の足としての役割を主に担っている路線バスですが、観光旅行としても活用できるのでは? そう考えた編集部は2017年夏、「バスタビ北海道」企画を立ち上げ、路線バスを使って実際に旅をしてみることにしました。
第一弾は、三村遙佳さんと竹内真子さんの二人が、留萌駅前から路線バスだけを使ってサロベツ原野を目指すバスタビです。
このルートは沿岸バス(本社・羽幌町)が路線バスの運行を行っています。留萌駅前―豊富駅間は豊富留萌線と呼び、主にオロロンライン(国道232号線)を通って留萌・宗谷管内を縦断する全国有数の長大路線です(164.5㎞・約4時間・6系統11.5往復)。豊富駅―稚咲内第2間はサロベツ線と呼び、道道444号線でサロベツ原野を横断します(14.2㎞・20分・夏3往復 冬2往復)。
【注記】2021年3月31日の運行をもって、60年にも及び地元の足として活躍した沿岸バス「サロベツ線」は廃止されました。
今回の旅程
09:25 留萌駅前発(豊富留萌線・豊富駅行き)
13:22 豊富駅着
13:25 豊富駅発(サロベツ線・稚咲内第2行き)
13:44 稚咲内第2着
14:15 稚咲内第2発(サロベツ線・豊富駅行き)
14:23 サロベツ湿原センター前着(観光・スイーツ)
15:38 サロベツ湿原センター前発(サロベツ線・豊富駅行き)
15:49 豊富駅着
15:55 豊富駅発(豊富留萌線・留萌十字街行き)
16:14 トナカイ観光牧場前着(観光)
17:19 トナカイ観光牧場前発(豊富留萌線・豊富駅行き)
17:28 豊富温泉着(夕食・温泉・一泊)
2日目
08:30 豊富温泉発(ふれあいセンター)(豊富留萌線・留萌十字街行き)
09:19 てしお温泉夕映着(ランチ・スイーツ)
12:49 てしお温泉夕映発(豊富留萌線・留萌十字街行き)
15:48 留萌駅前着
▼ルートマップ
このルートの見どころは、晴れていれば青い海と焼尻島・天売島・利尻島が望めること、周りに何もない広大なサロベツ原野の中を走ること。また、日本最北の温泉郷である豊富温泉やてしお温泉夕映など温泉施設、トナカイ観光牧場やサロベツ湿原センターなど観光施設も点在し、海のものから乳製品、スイーツにいたるまで食べ物にも恵まれています。
今回は、実際に乗ったルートとともに立ち寄ったポイントをご紹介します。この通り真似していただいてもよいですし、ご自分でアレンジしてもよいでしょう。思い思いに北海道でバスタビを楽しんでくださいね。
【動画】バスタビ北海道第一弾 沿岸バスでサロベツへの旅(この記事の最後にも動画を掲載しています)
9:25留萌駅前→豊富駅 駅弁を携えて4時間の長旅!
▼留萌駅前にて記念撮影
留萌駅前バス停から豊富留萌線・豊富駅行きに乗車します。留萌駅前バス停は留萌駅舎前ではなく、駅前の信号の近くにありますので注意しましょう。
終点の豊富駅まで約4時間の長旅です。前日まで要予約の留萌駅弁「にしんおやこ」(890円)を買っておくとよいでしょう(予約電話:090-7644-3774。留萌駅構内の立ち食いソバ屋で受け渡し)。「にしんおやこ」は、にしんとかずのこがご飯の上にドーンと乗っています。
▼(レベル高すぎて)これは弁当じゃないと好評だった「にしんおやこ」。贅沢な駅弁だ
トイレはどうすればいいの?という点については、途中羽幌町の羽幌ターミナルで数分間停車しますし、各営業所でも運転手に申し出ればトイレ休憩できますのでご安心を。
沿岸バスでは、10市町村にまたがる主要路線バス(特急はぼろ号など一部を除く)が一日もしくは二日乗り放題となる「萌えっ子フリーきっぷ」を販売しています。沿岸バスの各営業所で販売しているので購入しておきましょう。今回のバスタビでは、2日券(3,290円)を購入しました。普通運賃は留萌―豊富までが5,560円(往復利用時の運賃)、豊富―稚咲内第2までは1,280円(同)ですので、3,500円以上お得になりますよ。
留萌市を抜けて小平町から苫前町にかけては、海岸線を縫うように走行するルートです。すぐ左手に海、右手に風力発電が点在。中でも苫前町上平地区の風車群は圧巻です。羽幌町を過ぎると徐々に海岸線と道路との距離が開いてしまいますので、海を楽しむならこの区間です。晴れていれば真っ青な青色の海に感動するはずです。
▼日本海を横目にバスは北上します!
▼晴れていれば天売島と焼尻島が見えるかも?!
羽幌町市街に入ると、羽幌バスターミナルと沿岸バス本社ターミナルを経由します。羽幌バスターミナルは旧羽幌駅跡に建てられた、営業所と車庫・駅機能を兼ね備えた施設。発車時はバスがバックするのがお決まりです。一方、本社ターミナルは狭い路地を縫って走る様子に注目です。
▼羽幌バスターミナル
▼沿岸バス本社ターミナル
羽幌町市街から初山別村手前までは交通量も一気に減り、アップダウンの道が続きます。初山別村市街を抜けるとすぐ右手に旧国鉄羽幌線の遺構の一つ、金駒内陸橋(地元では「きんこまない」「かなこまない」と呼び方は分かれるらしい)を望むことができます。もう一つ沿線のみどころといえる遺構は、遠別町旭温泉入口バス停脇にある陸橋です。線路跡は国道と並行して走っていたため、このほかの地域でもレール跡を見出せるかもしれません。興味ある方は、廃線跡にも注目してみてください。
▼旧国鉄羽幌線の遺構、金駒内陸橋
▼旧国鉄羽幌線の遺構、旭温泉入口バス停横の陸橋
遠別町市街を過ぎると啓明地区に小さな橋「満佐呂(まさろ)橋」を渡ります。しかし、この橋の下を流れる川の名前は「マサリ排水川」、橋のたもとにあるバス停の名称は「マサル橋」。「マサ」までは合っているのに、橋も川もバス停も語尾が一致していないという、謎に包まれた場所です。
▼国道にかかる満佐呂(まさろ)橋
▼橋のたもとにあるバス停はマサル橋
13:25豊富駅→稚咲内第2 サロベツ原野を突き抜けて日本海の漁港へ!
終点の豊富駅(13:22着)でサロベツ線・稚咲内第2行き(13:25発)に乗り換えます。サロベツ線は、豊富駅からサロベツ湿原センターやサロベツ原生花園を経て日本海側の稚咲内第2までを結ぶ14.2㎞、所要時間約20分の路線です。豊富駅では豊富留萌線のバスとの接続があるので待ち時間をあまり気にせずに乗り継ぐことができます。
▼豊富駅で乗り換え
今回は終点の稚咲内第2まで向かい、30分ほど散策したのち、折り返し14:15発の豊富駅行きに乗って戻ることにしました。終点の稚咲内第2の近くには稚咲内漁港が。防風林のような稚咲内砂丘林も、バス停の前から一望することができます。なお、「稚内(わっかない)」ではなく、間に「咲」が入って「稚咲内(わかさかない)」と読みますのでご注意を。
▼稚咲内第2バス停前で。背後に稚咲内砂丘林が広がる
14:15稚咲内第2→サロベツ湿原センター サロベツ湿原を歩こう!
夏季ダイヤではこのバスの後に最終便がもう一本走っています。それでサロベツ湿原センターで途中下車し、サロベツ原野を散策してみることにしました。
サロベツ原野は豊富町と幌延町にまたがる広大な湿原です。面積は200平方キロメートルにも及び、2005年にはラムサール条約にも登録されました。
電柱・電線や建物がまったく見えない中、バスはひたすら東に進みます。北海道の広大さを実感できるひと時です。この区間の車窓は見逃さないように!
▼サロベツ湿原センターに到着!
14:23サロベツ湿原センターに到着。次のバスまで約1時間、サロベツ湿原をたっぷり満喫しましょう。サロベツ湿原センターの裏側には木道が整備されており、サロベツ湿原を散策することができるようになっています。夏季には湿原の花が咲きます(取材時は夏の花サワギキョウなどが見ごろでした)。自分の足で歩き、車窓からではわからないサロベツの魅力を体感しましょう。→詳しくはこちらの記事をご覧ください。
▼何もない! 山すら遠い! 広い大地に恵まれました!
センターの横には、サロベツラーメンやあげいも、いももちなどお食事メニューを味わえる「レストハウスサロベツ」が併設しています。ここのおすすめは、豊富牛乳ソフトアイス。地元産豊富牛乳を使った濃厚なソフトクリームをサロベツ原野のど真ん中で味わえるなんて、贅沢ですよね。
▼バニラソフトとチーズソフト。おいしい! 濃厚! 甘い! を連呼していた
所在地:天塩郡豊富町上サロベツ8662番地
電話:0162-82-3232
営業時間:11~4月は10時~16時(月曜休館)、5・8~10月は9時~17時(無休)、6~7月は8時30分~17時30分
所在地:天塩郡豊富町上サロベツ8662番地
電話:0162-82-1230
営業時間:5・9~10月は10時~16時、6~8月は10時~17時、冬期休業
※取材時のサロベツ線は夏季ダイヤなので1日3往復でしたが、10月~翌5月までは冬季ダイヤで1日2往復となります。最終便は13:50豊富駅発です。本稿で紹介しているようにサロベツ湿原センター前で途中下車をすると路線バスでは帰れなくなりますのでご注意ください。もしくは、途中の報徳地区にある「民宿あしたの城」で一泊するのであれば冬季ダイヤ期間中も利用できるかもしれません。→詳しくはこちらの記事をご覧ください。
15:38サロベツ湿原センター→トナカイ観光牧場前 トナカイ観光牧場に向けて出発!
サロベツ湿原を満喫した二人。次の目的地は、動物たちと触れ合おう!ということで、幌延町トナカイ観光牧場です。一度豊富駅までサロベツ線で戻り、15:55発、豊富留萌線・留萌十字街行きに乗り換えます。
▼豊富駅で乗り換え
豊富駅では豊富町の「とよとみカタラーナ」を購入! トナカイ観光牧場前バス停で下車するまでの約20分間は、この新スイーツを楽しみます。→詳しくはこちらの記事をご覧ください。
▼とよとみカタラーナ
16:14、トナカイ観光牧場に到着しました。入場は無料! トナカイにあげるエサを購入し、エサやりに挑戦しました。トナカイ専門牧場ですが、実はヤギも2匹(ブラウンとチャーリー)いるんです。→詳しくはこちらの記事をご覧ください。
▼トナカイ観光牧場
▼こわーい!と言いながらのエサやり体験。舐め方がうまいトナカイだけにエサをあげるという“えこひいき”も発動
17:19トナカイ観光牧場前→豊富温泉 豊富温泉に入って一泊!
動物たちと遊んだ後は、豊富留萌線・豊富駅行きに乗車し、日本最北の温泉郷・豊富温泉で下車。
90年の歴史を持つ豊富温泉は、油のにおいがして油が浮かぶ油温泉といわれ、アトピー性皮膚炎の方などが長期滞在する湯治温泉として近年知られています。日焼けして肌が痛かったという三村遙佳さん、豊富温泉に入ったら肌が痛くなく、むしろ日焼けが改善し、肌がつるつるになってびっくりしたと話していました。→詳しくはこちらの記事をご覧ください。
▼油温泉といわれる豊富温泉(川島旅館提供)
こうして豊富温泉を満喫した二人。充実したバスタビ北海道の1日目を終えました。なお、豊富温泉で宿泊するなら川島旅館がおすすめです。→詳しくはこちらの記事をご覧ください。
8:30豊富温泉→てしお温泉夕映 しじみとスイーツを味わいに天塩町へ!
二日目はあいにくの雨。豊富温泉(ふれあいセンター)を朝一の便(豊富留萌線・留萌十字街行き)で出発し、天塩町てしお温泉夕映を目指します。てしお温泉夕映バス停は利用客がいる場合にのみ経由するため、降車する場合は車内のブザーを鳴らし、下車後は忘れないうちに温泉施設受付で乗車する旨を伝えておきましょう(初山別村しょさんべつ岬センターも同様)。
▼てしお温泉夕映
天塩町といえば、しじみが特産品。まずは天塩町のしじみについて学ぶべく、近くにある「北るもい漁業組合天塩支所直売所」に立ち寄ってみることにしました。夏が漁期という天塩産のしじみは、貝のサイズに応じて中・大・特大とわけて販売されています。とにかく大きいのが特長。特大サイズにもなれば、ずっしりと重みを感じます。
▼北るもい漁協天塩直売所
天塩町のしじみについて学んだところで、てしお温泉夕映のレストランでしじみを使ったメニュー「しじみラーメン」と「しじみパスタ」(ともに1,100円)をいただくことに。しじみが貝殻ごとこれでもかと使われているメニューで、天塩町に来たら食べておきたいところです。この味を持ち帰りたいという欲張りなあなたのために、インスタントのしじみラーメンが売店で販売されているのでゲットしてみてください。
▼しじみラーメン
▼しじみパスタ
天塩町はスイーツも充実しているってご存知ですか? その筆頭に「てしおChuChuプリン」(宴家ふく助内)があります。見た目はマヨネーズの容器なのに中身はプリンで、吸いながら食べるという斬新さがうけて、町内外で話題になりました。
▼見た目はマヨネーズでも中身はプリン「てしおChuChuプリン」
このほか、マスカットはとれないのになぜか「アサヒマスカットサイダー」(町内のアサヒ飲料)が作られていたり、竹炭を使った「黒いプリン」(とらや菓子司)、やさしく口の中でとろける「めるとロール」(とらや菓子司)、近年話題となっている、プリンでもヨーグルトでもない新感覚スイーツ「トロケッテ・ウーノ」(宇野牧場)があります。
▼アサヒマスカットサイダー
▼トロケッテ・ウーノ
▼黒いプリン
こうしたスイーツはてしお温泉夕映もしくは町内のスーパーや菓子店で販売されていますので、ぜひ手に入れて味わってみてください。
所在地:天塩郡天塩町字サラキシ5807番地
温泉営業時間:9時~22時(中学生以上500円、小学生250円)
レストラン営業時間:11時30分~15時00分、17時30分~20時00分(土日祝は11時~15時、17時~20時)
12:49てしお温泉夕映→留萌駅前 余韻に浸りつつ留萌を目指しましょう!
天塩町のグルメとスイーツを存分に味わった後は、豊富留萌線・留萌十字街行きに乗車し、約3時間かけて終着の留萌を目指します。雨の中、15:48、留萌駅前に到着しました。
▼無事、留萌駅前に到着! 長旅おつかれさまでした!
サロベツを目指して旅したバスタビ北海道第一弾を、出演者はどう思っているのでしょうか。代表して三村遙佳さんに聞いてみました。
「これまでバスで北海道を旅することはなかったんですが、バスの車窓から非日常感あふれる、きれいな景観を楽しめました。こんな絶景が北海道にあるんだ、北海道の海ってこんなに青かったんだと自分でも知らなかったことが多く、観光スポットが多かったことも勉強になりました。天塩町で食べたChuChuプリン、黒いプリンなどなかなか目にしないスイーツも印象に残りました。車で行くのと違ってバスだとゆったりできるし、みんなで一緒にわいわい楽しめるし、気分転換にもなりました。バスタビ楽しいですよ! みなさんもバスタビしましょう!」
▼『西蝦夷ここ路旅』(発行:北海道留萌振興局)を旅のおともに!
【動画】バスタビ北海道第一弾 沿岸バスでサロベツへの旅
取材協力:沿岸バス
企画協力:北海道総合政策部交通企画課
※「バスタビ北海道」は、北海道庁との協働プロジェクトにより企画したものです。