札幌のデザインの起源と発展がわかる!「札幌デザイン開拓使」開催中

現在、札幌国際芸術祭(SIAF)2017の企画のひとつとして、JRタワープラニスホールにて「札幌デザイン開拓使 サッポロ発のグラフィックデザイン~栗谷川健一から初音ミクまで~」という展覧会が開催されています。

北海道は札幌市におけるデザインの起源とは何なのか、そしてどのように発展してきたのか、展覧会の紹介と共に探っていきましょう。

実は開拓史と重なるデザインの歴史

▼五稜星で知られている開拓使の旗

札幌デザインの起源は、まさに開拓使時代にまで遡ります。現在でも五稜星がお馴染みのデザインとして、サッポロビールのロゴや時計台などにも残されていますが、これは開拓使の旗に使われていたものです。実は、五稜星が採用されてから約半年後、このエンブレムを変更したいと申し出た人物が存在しました。それが、後に第2代内閣総理大臣となる黒田清隆です。

▼今では幻となった七稜星のエンブレム

1872年、当時北海道開拓使長官であった黒田は7つの頂点を持つ七稜星を政府に提案したのです。残念ながらこの案は却下されてしまいましたが、デザインをし、プレゼンテーションをするという当時の黒田のはたらきは、まさに現在のグラフィックデザイナーの仕事と重なります。

さて、幻となった七稜星のデザインですが、それで終わりではありませんでした。1967年、「北海道デザイン界の父」と称される栗谷川健一の手によって、北海道旗として日の目を見たのです。

▼七稜星のエンブレムは北海道旗に

実に100年近くの歳月を経て、蘇った七稜星のデザイン。受け継がれていくものの、不思議な縁を感じます。

北海道の観光ポスターを数多く制作したことで知られる栗谷川健一ですが、1972年に開催された札幌オリンピックの招致ポスターも手がけています。

▼栗谷川健一『スキーの源流』1965

札幌の美しい雪景色を背景に、アイヌの男性の後ろ姿が無骨なタッチで描かれ、その白と赤のコントラストと共に、鮮烈な印象を見る者に与えます。このインパクトこそが、ポスターに求められるデザインであり、栗谷川健一というデザイナーの才能のきらめきなのでしょう。今回は『スキーの源流』ポスターと共に、原画も展示されています。

展覧会では、札幌グラフィックデザイン史の草創期からオリジナリティあふれる表現を貫いた彼の足跡を辿ることができます。

▼「Who is Kuriyagawa Kenichi?」

また、栗谷川健一の作品は、私たちの身近なところでも見ることができます。

▼札幌市民なら、見慣れた風景かも

上の写真は、札幌市地下鉄東豊線大通駅改札口近くにある壁画です。東豊線をよく利用する人なら「あぁ、あれ!」とすぐさま膝を打つことでしょう。

札幌デザイン史の転機となったオリンピック

札幌のデザイン史が大きく飛躍することになったのは、1972年に開催された札幌オリンピックがきっかけでした。1963年の東京オリンピックのデザインを手がけた日本を代表するグラフィックデザイナーたちが北海道に集結し、デザインの裾野が一気に広がったのです。永井一正によるエンブレム、亀倉雄策によるポスターなど、日本のグラフィック史に欠かすことの出来ないデザインが数多く生まれました。

また、サイン計画の中で重要な役割を果たすピクトグラム(絵文字、絵単語)は、何を指すのかひと目でわかる視覚サイン。今ではトイレや非常口など当たり前に使われていますが、これは東京オリンピックで誕生した発明であり、札幌オリンピックでさらに掘り下げられ、洗練されたと言われています。

▼チケットにもさまざまなピクトグラムが

▼展覧会会場に展示されたデザインの数々

旗に使われたエンブレムもデザインなら、ポスターもデザイン、視覚サインもデザイン。デザインは、もはやあらゆるところに存在し、私たちの目に触れ、生活に溶け込んでいます。

▼お馴染み、すすきの交差点にあるニッカ看板のレプリカも!

グラフィックデザイン、なんて言葉を聞くと、何やらスタイリッシュで特別なもののように感じてしまいますが、見慣れた企業ロゴや商品パッケージなども、もちろん立派なグラフィックデザインです。

▼北海道民ならみんな知ってるあのマーク、あのロゴ

多くのファンを持つ初音ミクだって、グラフィックデザインが生み出したキャラクターです。

▼会場に行けば、初音ミクに会える!?

ここで改めて展覧会のタイトル「札幌デザイン開拓使 サッポロ発のグラフィックデザイン~栗谷川健一から初音ミクまで~」を振り返ってみると、なるほど、栗谷川健一も初音ミクも、確かに札幌におけるデザインの開拓使であるのだと気づかされます。

展覧会に足を運んで、ぜひ「デザインって何だろう?」と考えてみてください。ありふれていると思っていた日常に、たくさんのデザインが潜んでいることに気づかされるはずです。

「札幌デザイン開拓使 サッポロ発のグラフィックデザイン~栗谷川健一から初音ミクまで~」
会期:2017年8月6日(日)~10月1日(日)
時間:平日13時~19時、土日祝10時~19時(無休)
会場:JRタワープラニスホール(札幌市中央区北5条西2丁目 エスタ11階)
料金:SIAFパスポート提示、または、個別鑑賞チケット500円

札幌国際芸術祭2017(SIAF2017)
開催期間:2017年8月6日(日)~10月1日(日)
公式サイト:http://siaf.jp/
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