北海道博物館が4/18オープン!何が変わったのかいち早くお伝えします

【札幌市】札幌市厚別区の元北海道開拓記念館の建物を活用した新たな中核的博物館「北海道博物館」が2015年4月18日にオープンします。それに先立って4月10日に観光関係者・マスコミ向けの内覧会が開催されました。元北海道開拓記念館とどこが変わったのでしょうか?見所は?北海道ファンマガジン編集部が北海道博物館の館内を一足早くご紹介します。

リニューアルオープンした「北海道博物館」とは?

新たに生まれ変わった「北海道博物館」は、「北海道開拓記念館」と「北海道立アイヌ民族文化研究センター」が統合してできた博物館です。「北海道開拓記念館」は1971年に北海道百年記念事業の一環でオープンし、北海道開拓の中で生み出された文化財を中心に様々な歴史資料を収集保存、調査研究し、北海道の歴史と先人の遺産を後世に伝える役割を果たしてきました。一方の「アイヌ民族文化研究センター」はアイヌの歴史と文化の調査研究などを目的に1994年にオープンし、アイヌ文化の普及に努めてきました。

「北海道開拓記念館」は1992年にも展示物を全面改訂したことがありますが、それから20年以上が経過。開館40年以上を経て老朽化したこともあり、施設の改修とともに展示の改定、「アイヌ民族文化研究センター」と組織統合したうえでリニューアルオープンしました。

「北海道博物館」は北海道の中核的博物館として道内各地の博物館と連携するほか、北海道の自然・文化・歴史に関する総合的な研究機関として、また、約30名の学芸員と研究職員を擁し、身近な相談窓口として道民の知りたいという気持ちに答えていく方針で、名実ともに北海道を代表する博物館となります。身近な存在として愛着を持ってもらおうと「森のちゃれんが」という愛称が付けられており、新ロゴマークが札幌市立大学デザイン学部武田ゼミ学生9名によって考案されています。

「北海道博物館」になって何が変わったの?

では「北海道博物館」となったことで何が変わったのでしょうか。このたびのリニューアルで、建物は元北海道開拓記念館をそのまま活用し、館内だけを一新しました。施設面では、バリアフリーに対応し、ゆったりと楽しめるように工夫が施されました。

総合展示は1階と2階の3,000m2で、大きく2つのコンセプトにわかれているのがポイントの一つです。一つは「極東アジアの中の北海道」。日本の中では北のはずれに位置する北海道ですが、広い視野で見ると北東アジアの中では南の暖かい島ともいえます。もう一つは「自然と人とのかかわり」で、自然の営みと人の営みを別々の視点で見るのではなく、自然と人との関わり合いを知るよう促される展示となっています。

その2つのコンセプトをもとに、北海道の自然・歴史・文化を物語る5つのテーマが展開されます。北海道開拓記念館ではこれまで通史で展示してきたものを、テーマ別に整理しなおしたのが最大のポイントとなっています。各テーマは回廊で結ばれて観覧順序を自由に選べるようにしたり、模型・ジオラマ・映像装置も活用しながら、めりはりがあってわかりやすく、ワクワクする展示に生まれ変わりました。それではその一部をテーマごとにご紹介しましょう。

1階「プロローグ」


入ってすぐの広い吹き抜けのスペースにはナウマンゾウ(左)とマンモスゾウ(右)の復元全身骨格が出迎えます。ナウマンゾウは南から北海道に入ってきたのに対し、マンモスゾウは北から北海道に入ってきており、そのことが床に貼り付けてある衛星写真地図に対応しています。マンモスゾウのほうは骨格の下を潜り抜けることができるよう工夫されています。

1階「第1のテーマ:北海道の120万年物語」






旧石器時代から、縄文時代、続縄文時代、擦文時代、オホーツク文化、蝦夷地から開拓時代に至るまでの長い期間を扱うエリアです。出土した遺物・化石・地層などが展示されています。北広島市で発掘されたマンモスゾウとナウマンゾウの歯の化石が並んでいる展示をはじめ、各時代の土器、土偶、装飾品、狩猟道具などは、どこで発掘されたものなのかも明示されています。木造船が展示されている個所では、アイヌから和人へ、和人からアイヌへそれぞれどんなものが贈られていたのか、現物と共に紹介されているほか、松前藩とアイヌのオムシャのジオラマ、松前藩と場所請負制、新選組の元幹部隊士・永倉新八ゆかりの資料が展示されています。

1階「第2のテーマ:アイヌ文化の世界」




アイヌ民族文化研究センターと統合したことにより実現したアイヌの豊富な展示がここ。5世代のアイヌの家族の物語をはじめ、復元した家屋、生活や儀式の道具が展示されています。特に楽しいのは、並び替えてアイヌ語作文ができるアイヌ語ブロックのコーナー、トンコリを実際に弾くことができるコーナーでしょう。こうした体験して学べるものは新しい試みと言えます。

2階「第3のテーマ:北海道らしさの秘密」










エスカレーターを上ると真正面に見えてくるのが北海道俯瞰図。ここでは「産業」「日々の暮らし」の2つのアプローチから北海道らしさが生まれた秘密を探ります。ここだけで30分くらい見てしまうほど楽しいと堀学芸主幹。産業エリアでは、北海道の漁業と農業の様子をジオラマや農機具・漁具を通して学び、炭鉱、加工業、鉄道まで代表的な産業を学べます。鉄道エリアにある等身大模型三等客車は、大正時代の長万部~小樽間の函館山線の車内の様子を音声も加えながら再現。学芸員一押しの展示というのが「くそつき棒」。池田町で100年使われてきた貴重なもので偶然手に入ったものだとか。生活エリアに入ると、特に除雪道具やストーブの発展の様子、遊び道具、食生活までが所狭しと展示されます。
交流ゾーンには、北海道開拓記念館開館時の1971年に画家・木村氏が制作した北海道最大級の油絵とされる壁画があり、右から左へと開墾が進む明治時代後期の上川地方の様子が描かれています。また、展望スペースがあり、札幌の街並みを一望できます。

2階「第4のテーマ:わたしたちの時代へ」


戦時下から高度経済成長期までの社会運動、電気製品や生活用品、家屋の移り変わり、札幌オリンピックのグッズが展示されています。昭和な雰囲気を再現しており、懐かしむ人たちも多いことでしょう。

2階「第5のテーマ:生き物たちの北海道」



北海道の動植物を中心とするゾーンです。ヒグマのいる森を表すエリアでは、木のボールを転がせる仕掛けがついています。ヒグマのフンの展示は食性を理解してもらうことを意図しているといいます。エゾシカの死体は、仕掛けを開けると死体を分解する虫の様子を見ることができるようになっています。
落ち葉が海に流れ出て海の魚を育てていることがわかっており、この展示エリアを通じて、森と海がつながっていることをわかってもらいたいと堀学芸主幹。どんぐりをたくさん食べて眠くなっている想定のヒグマの模型はベンチとして座ることもできます(シャチの模型も同様)。
2013年9月に札幌市南区藻南公園付近で目撃され射殺された1歳8か月のヒグマが展示されているほか、キタキツネとカラスがゴミ袋をあさっている様子を再現したり、鹿飛び出し注意の看板、漂着物をあわせておくことで、人と自然の共存について考えさせます。

▼エントランスにはカフェ。ドーナツやドリンクなどが販売される

新しくなった「北海道博物館」は、各所に仕掛けが施されたり見やすく工夫され、興味をそそるよう展開されています。ここではすべてを事細かに取り上げることができないの残念ですが、じっくり見ていると2時間ほどは余裕でかかってしまうほど見ごたえ十分です。特に北海道民には「北海道博物館」で北海道の自然から歴史、生活文化まで一通り学んでみることをおすすめします。

森のちゃれんが・北海道博物館
札幌市厚別区厚別町小野幌53-2
TEL:011-898-0466
開館時間:9:30~17:00(10~4月は16:30)、閉館時間の30分前まで入場可
休館日:毎週月曜日、年末年始
公式ウェブサイト
※2015年4月18日は9:30までカウントダウンセレモニーを開催。18・19両日は屋上スカイビューが特別開放されるほか、トークイベントや入場1万人達成予想などが予定されている。