登山初心者におすすめ!活火山「樽前山」の外輪山を一周してみた

日本は世界でもとりわけ地震や火山の噴火が多い国であるというのは、ご存知でしょうか。

平成に入り、雲仙普賢岳、有珠山、三宅島、新燃岳、桜島、御嶽山、口永良部島、その他水蒸気爆発や海底噴火等、かなりの数の噴火が起こっており、その都度甚大な被害をもたらしています。そう考えると、改めて日本は火山の国だということを認識することでしょう。

もちろん北海道にも多くの火山が存在し、駒ヶ岳、有珠山、樽前山、十勝岳、雌阿寒岳が活発な活火山として挙げられます。そんな私たちの身近にある火山(特に現在も噴煙を上げている山)について、少しでも認識を深めてみようと、実際に間近で見てみることにしました。

身近ながら、意外にも噴火が多い樽前山

樽前山は北海道南西部にある支笏湖の南に位置し、風不死岳(ふっぷしだけ)、恵庭岳と共に支笏三山の一つに数えられる火山です。記録に残る主な噴火は以下になります。

1667年(寛文7年)、1739年(元文4年)、1804年~1817年(文化元年~文化13年)、1867年(慶応3年)、1874年(明治7年)=マグマ噴火
1883年(明治16年)、1885年~1887年(明治18年~明治20年)、1894年(明治27年)=水蒸気噴火
1909年(明治42年)=マグマ噴火
1917年~1921年(大正6年~大正10年)、1923年(大正12年)、1926年(大正15年)、1928年(昭和3年)、1933年(昭和8年)、1978年(昭和53年)、1979年(昭和54年)、1981年(昭和56年)=水蒸気噴火

火山活動に伴う噴煙や地震等も含めると、19世紀以降で70回以上観測されているようです。最近では2003年(平成15年)、2011年(平成23年)、2012年(平成24年)に火影が観測されているようで、観測機器等の発達により、より精細な情報を得られています。そのおかげで現在は山へ安心して登れるわけですが、こんなにも噴火の回数が多いとは、調べてみるまでは知りませんでした。

樽前山は1739年の噴火でできた直径1.2km×1.5kmの火口が外輪山と呼ばれる尾根筋となっており、東側の東山(三角点点名=樽前山、1,022m)、南西の西山(994m)とつながり、その中心では1909年の噴火で形成された黒色の溶岩ドーム(三角点点名=樽前岳、1,041m 樽前山熔岩円頂丘として北海道指定文化財天然記念物)が現在も噴煙を上げています。

南の麓には1667年の噴火とその後の侵食でできた「樽前ガロー」、北西の麓には1739年の噴火とその後の侵食でできた「苔の洞門(現在は崖崩落の危険があり閉鎖中、立ち入り禁止)」があります。どちらも幻想的な風景で人気の景勝地であり、多種の苔が密生する学術的にも貴重な場所。その光景を作り出した樽前山の噴火がどれほどのものだったのか、規模の大きさを考えると圧倒されます。

登山初心者にも人気の火山

樽前山へは、国道276号線より道道141号線へ入り、七合目ヒュッテ駐車場まで車で登り、その先にある登山口から登るのが一般的です。

登山ルートは様々ありますが、七合目ヒュッテからは「東山コース」または「お花畑コース」を選ぶことになります。今回は東山コースから山の外輪山に沿って溶岩ドーム外周を一周することにしました。

東山コースは外輪山まで1時間程で登れるのが魅力。初めての登山にちょうど良いようで、子供連れの親子も多く人気があります。

登山を開始して10分程で眺めの良い場所へ出ます。振り返ると支笏湖や周辺の山々の綺麗な景色を眺めることができるので、飽きずに登ることができます。

▼地面に転がる軽石に、火山を登っていることを改めて感じる

▼東山分岐、外輪山の尾根へ出ると、目の前に噴煙を上げる黒々とした溶岩ドームが見えてくる

生きている山を感じることができる、外輪山一周

外輪山取付(東山分岐)まで登れば、一周約4km、溶岩ドームをぐるっと見て回ることができます。

まずは噴煙がより見える方へ向かうべく、外輪山の尾根を西山の方向へ時計回りに20分ほど行くと、鳥居と石積みの祠(樽前山神社奥宮)が見えてきます。

この位置から見ても、溶岩ドームのゴツゴツとした岩肌から立ち昇る噴煙に、火山であることを十分に感じ取れますが、他の側からも見るべく、道中の安全を祈願し、さらに西山を目指します。

▼山の平穏と登山者の安全を祈願して建立された樽前山神社奥宮

西山頂上までは30分程ですが、この区間では「立ち止まらないでください」という注意書きがあります。尾根が少しへこんだように低くなり、その後西山頂上への登りとなっているのですが、火山ガスが溜まる危険があるようです。この区間は、かすかに臭う硫黄臭や噴煙の噴出音が聞こえ、火山の勢いを間近に感じることができます。

西山頂上からは、中央の溶岩ドームを囲む外輪山全体を確認できると共に、非常に綺麗な景色を楽しめます。支笏湖や周辺の山々も見えるので、噴火の歴史を年代毎に順を追ってイメージすると、「生きている山」を実感でき、さらには「地球は生きている」という表現を理解できる場所だと気づきます。

▼外輪山全体を含む樽前山の全景を観賞できる

▼風不死岳や支笏湖、恵庭岳、左奥には羊蹄山も見える

残りの約半周は、岩と砂の荒涼とした中にも足元に生える緑に生命の息吹を感じ、原始の時代を想像させる景色を楽しめます。

▼登山者から「鬼ヶ島」と呼ばれている、西側から見た溶岩ドーム

▼溶岩ドームに立入禁止の現在、樽前山の最高点となっている東山山頂

▼綺麗な景色を見つつ元来た道を下山

樽前山は登ることで「生きている山 = 活火山」というのを実際に体で感じることができます。

登山口の駐車場がいつも混んでいるという樽前山。人気の理由は綺麗な景色だけではなく、その体感できる部分にもあるのではないでしょうか。

登山を通して噴火などの対策について考えるキッカケにもなるでしょうし、地球規模の視野で物事を考えることを教えてくれる山です。

【動画】映像で見る樽前山