SL冬の湿原号はいつ、どこを走る?見どころは?

JR北海道は20年以上、冬季限定で「SL冬の湿原号」を走らせています。JR北海道で唯一のSL(蒸気機関車)運転であり、雄大な北海道、白銀の釧路湿原を車窓から楽しめる観光列車として人気を集めています。SL冬の湿原号はいつ、どのルートを走っているのでしょうか。その見どころと共に紹介します。(動画あり)

SL冬の湿原号とは?

塘路湖付近を走行するSL冬の湿原号

SL冬の湿原号は、SLつまり蒸気機関車が5両の客車を牽引して運転する臨時観光列車です。雪に覆われた冬の釧路湿原を横目に、広大な北海道らしい風景の中を走り抜けます。

道内ではSLふらの・びえい号、SLニセコ号、SL函館大沼号、SLはこだてクリスマスファンタジー号など数々のSLが運転されてきましたが、2014年までに運行終了。しかし、2000年1月に運転を開始したSL冬の湿原号は、北海道では唯一のSLによる観光列車です。

標茶駅に到着したSL冬の湿原号
茅沼駅に停車するSL冬の湿原号の客車
客車に掲示される列車名

通常はC11 171号機(釧路運輸車両所所属)が運転し、赤帯の入ったぶどう色の客車5両を牽引します。標茶方向から順に1号車、2号車(カフェカー)、3号車、4号車、5号車となります。この前後にSLを連結して牽引します。6両編成の全長は117.85メートルにもなります。

釧路地方の冬は天気の良い日が多く、澄み切った青空の中、運転されることが多いようです。積雪量も多くないのですが、その分、気温は冷え込みます。車内は温かいですが、可能な限り十分な防寒対策をして楽しまれるようおすすめします。

エンブレム
SLの足回り
雪国ならではの仕様

C11 171号機は標茶町に静態保存されていた?

SL冬の湿原号で活躍している蒸気機関車C11 171号機は、1940年7月に兵庫の川崎車輌で製造されました。1942年以降北海道で活躍し、1975年に釧路機関区で廃車。その後の約20年間は標茶町桜町児童公園で静態保存されていました。1998~1999年に復活のための工事が行われ、1999年以降、道内のSL観光列車に使われてきました。最後まで残ったSL冬の湿原号は、まさに静態保存されていた標茶町への回帰となります。

SL冬の湿原号の運転区間と停車駅は?

SL冬の湿原号は、釧路駅と標茶駅の間を1日1往復しています。停車駅は釧路駅、東釧路駅、釧路湿原駅、塘路駅、茅沼駅、標茶駅。標茶駅で折り返し、同じ駅に停車しながら釧路駅に戻ります。

SL冬の湿原号の運転区間・停車駅・ルート地図

運転時刻は下記のとおりです。下りは1時間30分、上りは1時間42分で運転しています。距離でいうと、釧路―標茶間48.1km、往復で96.2kmの区間です。

停車駅と時刻表(2021年)

駅名下り↓上り↑
釧路駅11:0515:42
東釧路駅11:1215:35
釧路湿原駅11:3815:09
塘路駅11:5814:50
茅沼駅12:1214:25
標茶駅12:3514:00

※運転時刻は変更される場合があります。

SL冬の湿原号の運転期間は?

SL冬の湿原号は、毎年1月中旬~3月初旬に運転しています。1月中旬以降の土日のみの運転ですが、2月は平日の運転もあります。最後の運転が2月最後の土日となることが多く、そのため3月1日に最終運転日を迎える年もあります。

運転日(2021年)

1月23日(土)・24日(日)
1月30日(土)・31日(日)
2月5日(金)~14日(日)
2月19日(金)~23日(火・祝)
2月27日(土)・28日(日)
※運転日は変更される場合があります。

SL冬の湿原号の運賃は?

釧路駅から標茶駅まで乗り通して、乗車券が片道1,290円、往復で2,580円となります。SL冬の湿原号は全車指定席で運転するため、これにプラスして指定席券が必要になります。指定席券は片道840円、往復で1,680円となります。

したがって、SL冬の湿原号に片道で乗車すると2,130円、往復で乗車すると4,260円ということになります。いずれも子どもは半額です。

  • 片道 乗車券1,290円+指定席券840円=2,130円
  • 往復 乗車券2,580円+指定席券1,680円=4,260円

指定席のために乗車前に予約が必要となります。全国のJR主要駅のみどりの窓口、ツインクルプラザ、インターネットの場合は「えきねっと」で購入することになります。

客車は5両で、指定席は280席です。いずれも向かい合う4人がけのボックス席です。標茶行きの場合は進行方向左手が釧路湿原側、釧路行きの場合は進行方向右手が釧路湿原側になります。人気の観光列車なので満員になることもありますので、早めの予約をおすすめします。

SL冬の湿原号の見どころは?

出区・出発シーン

釧路駅で出発を待つSL冬の湿原号と到着したばかりの特急おおぞら1号

朝、釧路駅3番線に入線するSL冬の湿原号。その釧路運転車両所から釧路駅に移動する出区シーンが見られる跨線橋も鉄道ファンの間で人気です。釧路駅出発シーンは東釧路方の跨線橋から見られます。SL出発の約5分前の10時58分、札幌からの特急おおぞら1号が1番線に入るので、SLとの並びを見ることができます。その後、ホームに集まった大勢の人たち(とキャラクター)に見送られて、標茶駅に向けて出発します。

車からでは見られない車窓

釧路湿原近くの塘路湖付近を走行するSL冬の湿原号

SL冬の湿原号の見どころは何と言っても、車窓からの釧路湿原。釧路駅を出て釧路川を渡り、東釧路駅で分岐して釧網本線に入ると、住宅地から郊外の釧路湿原エリアへと入ります。釧路湿原駅付近から茅沼駅付近までは、道路も通じていない釧路湿原の際をSLは走っていきます。まさに鉄道旅だけの車窓です。

釧路湿原にはタンチョウが生息しているので、運が良ければ飛んでいる姿や、雪原の中に立っている姿を見ることができるかもしれません。

途中停車駅の茅沼駅
タンチョウの私有地?@茅沼駅
タンチョウがいた

茅沼駅では、線路のすぐ横にタンチョウがいることが多いので、標茶行きの場合は進行方向左手を見てみてください。

汽笛と走行音と黒煙

茅沼駅を出発したSL冬の湿原号の最後尾

蒸気機関車ならではの楽しみの一つとして、今では珍しい汽笛と走行音と黒煙があります。一般的な気動車や電車、貨物車両などでは出せないSLの音を楽しむことができます。昔懐かしいと思われる方もいるでしょうし、若い世代では非日常を感じさせる音です。

特に、大都市釧路の中心駅である釧路駅を出発する時に鳴らす長い汽笛は、澄み切った釧路の街にこだまし、昭和と令和が入り混じって感慨深いものがあります。

SLのシュッシュッシュッシュという走行音、煙突からもくもくと吹き出す黒煙もSLならでは。静寂に包まれた白銀の釧路湿原の中に汽笛と走行音が響き、ひときわ目立つ黒煙がSLの居場所を明らかにします。

特に、釧路湿原駅と細岡駅の間は急勾配の坂があり、蒸気機関車が最も力を発揮する場所。速度を落としつつ、黒煙を上げて坂を登りきります。

車内の楽しみ

SL冬の湿原号名物「ダルマストーブでスルメ焼き」

SL冬の湿原号の車内についていえば、レトロ風の作りが特徴。車掌さんもレトロな制服を着用しています。

2号車がカフェカーになっており、釧路方に車内販売カウンターが設置されており、オリジナルグッズや軽食(クッキーやプリンなど)、ドリンク(珈琲や清涼飲料水、釧路の福司ワンカップなど)を購入できます(弁当は事前予約以外は販売していないので釧路駅で購入すべし)。

カフェカーでの車内販売品目の例

  • SLサボ
  • SL車票
  • SLエンブレム
  • マスキングテープ
  • SLクリアファイル
  • SLマスク&ケースセット
  • キーホルダー
  • マグネット
  • 手作りストラップ(タンチョウ・エゾシカ)
  • ポストカード
  • アルコール飲料(サッポロクラシック、福司ワンカップ)
  • 清涼飲料水(北海道りんごブレンド、コカコーラ、おーいお茶、コーヒー)
  • ランチボックス(予約のみ)
  • するめ
  • 鮭ジャーキー
  • ししゃも
  • こまい
  • サルルンカムイクッキー
  • 北海道駅名標キャラメル
  • SLプリン

全車両にだるまストーブが設置されていて、車内販売しているスルメ(950円)を自分で焼いて食べる体験もできます。近年ではWi-Fiも使えるようになりました。

標茶駅での入換作業

標茶駅到着直後

現在は釧路駅から標茶駅までを往復運転しているSL冬の湿原号。標茶駅に着いた後、折返し出発までの1時間半の間もSLは何かをしています。その何かというのが、入換作業・給水作業です。

SLの場合、標茶駅に到着後そのまま釧路まで逆走、ということができないので、SLを釧路方に機回しして連結し直します。さらに言えば、標茶駅に転車台(ターンテーブル)がないので、機関車は方向転換することなくバックで釧路まで戻ることになります(見た目はバックに見えますが、前後どちらにも走行できます)。そのため、見た目がかっこいいのは釧路発標茶行きということになります。

標茶駅では、2面3線の本線を使ってSLの入換作業を行っています。SL冬の湿原号は標茶駅の1番のりばに到着し、乗客を降ろします。釧路行き「しれとこ摩周号」が2番のりばを出発すると、6両編成のまま釧路方向へバックします(無線誘導)。進行方向・ポイントを切り替えて2番のりばに入線します。

標茶駅2番のりばに移動し切り離し

その後、SLは客車から切り離され、単機でいったん摩周方面に移動(踏切は鳴りっぱなしだが通過しない)。手動でポイントを切り替えて再度バックして、3番のりばがある線の給油と給炭ポイントまで移動します。給水、灰を落とす作業を行う傍ら、機関士らは昼食タイムとなります。

3番のりば近くの給水ポイント
給水作業中
標茶駅2番のりばで待つ客車
標茶駅出発直前のシーン。客車に連結

1時間以上が経過して出発時刻が近づくと、機関車は3番のりばを通過して釧路方にバック移動し、進行方向・ポイントを切り替えて、2番のりばに停車している客車に連結。その後まもなく釧路方向に向けて出発します。この一連の作業は、標茶駅ホームの他、駅の北側の駐車場から見学することができます。

動画で見るSL冬の湿原号(釧路駅入線~標茶町入換作業)

標茶駅に着いたら何をするのか

標茶駅に到着後、折返しが出発するまでの約1時間半、何をしたら良いのでしょうか。機回しを見るのも鉄道好きには楽しいものですが、他の楽しみも用意されています。

標茶駅には顔ハメパネルも設置

その一つが「湯めぐり&グルメ号」。標茶駅前にジャンボタクシー(標茶ハイヤー)が横付けし、標茶町内の飲食店・温浴施設まで送り届けてくれるという、SL乗客限定の無料サービスです。ちょうどランチ時ですので、嬉しいサービスですよね。車内でたくさん食べた方には温泉も良いかもしれません。(問い合わせ先:標茶町観光協会)

駅に近い喫茶ポケットは、石炭をイメージしてイカスミで黒くしたザンギをのせた「SLザンギカレー」を、SL運転期間中に期間限定で提供しています。

運行初日の土日と最終日の土日は標茶駅前で「しべちゃうまいもん発見市場」が開催されます。標茶町といえば酪農の街。乳製品やブランド牛肉など特産品を販売します。これも割と人気で、売り切れる商品も多々あります。

SL冬の湿原号を片道だけ楽しみ、知床斜里まで移動して、知床斜里駅―網走駅間を運転する流氷物語号に乗車するのも一つの楽しみ方です。冬の釧路湿原とオホーツク海の流氷を楽しんでみてください。

以上、SL冬の湿原号の楽しみ方をご紹介しました。ぜひ今年も白銀の釧路湿原をSLで旅してみませんか?