チセの個室や母親の思い出の料理も!札幌でウワサのアイヌ料理店2店

『ゴールデンカムイ』(著者・野田サトル)の人気と共に、全国的にアイヌ文化が注目されています。同作品では狩猟、風習のほか、食事などもリアルに描かれているため、「素朴な料理を味わってみたい」と、アイヌ料理の人気が高まっています。札幌でアイヌ料理を提供している代表的な二店を訪れました。

チセで味わうアイヌ料理が評判「海空のハル」

▼郷土料理が美味しいと評判の居酒屋「海空のハル」が入るビル


写真提供:海空のハル

「海空のハル」は、サンタがよじ登るJ-BOXビルの5階にあります。「ハル」とはアイヌ語で「自然から恵まれた食糧」という意味です。その名の通り道内の食材を使った料理が美味しいと評判の居酒屋です。アイヌ文化を広めるための企画「旧白老アイヌ民族博物館・ルイカプロジェクト」とのコラボレーションにより2年前からアイヌ料理を提供しています。

▼アイヌの人々の暮らしを再現

写真提供:海空のハル

かつてアイヌの人たちは、道内各地に「コタン」という集落を形成していました。白老や二風谷、阿寒などが有名ですが、シャコタン(積丹)、カムイコタン(旭川市・神居古潭)、コタンベツ(苫前町・古丹別)など、各地にその名をとどめています。コタンにはチセと呼ばれる茅葺屋根の小さな家が立ち並び、アイヌの人たちが生活していたと言われています

▼和食で培った技術をアイヌ料理に生かす松本尚之料理長

海空のハルでは、店内にチセを再現。そこでアイヌ伝統の料理を味わうことができます。「アイヌ料理は素材の味をシンプルな調理法で生かした料理です」と、松本尚之料理長は言います。そこには北海道郷土料理の原点が見え隠れしています。

アイヌ料理をセットで堪能

▼シンプルなアイヌ料理のディナー

写真提供:海空のハル

お椀は「オハウ」という汁物です。山菜、野菜、鳥獣肉、魚肉などを煮て、脂や塩で味付けしたシンプルな料理です。鮭のオハウは北海道の郷土料理「三平汁」のよう。


写真提供:海空のハル

鮭をタタキにした「チタタㇷ゚」や、イモ餅にイクラが載った「チポㇿシト」など、珍しい中にも懐かしさを感じる料理が並びます。

▼カムイトノトは「神の酒」の意味を持つ

写真提供:海空のハル

小樽の田中酒造が再現した「カムイトノト」は、アイヌの儀式で飲まれていたお酒です。エゾシカの串焼きとの相性も良く、ついついお酒が進んでしまいそう。

チセは旧白老アイヌ民族博物館館長を務めた野本正博氏の監修を受けており、忠実に再現されています。料理に関してはシンプルな味付けが多いことから、「基本から大きく外れていなければ現代風のアレンジも可能」と、お許しを得ているとのこと。

▼ご予約はお早めに!

チセの個室は完全予約制で2~4人が利用できます。囲炉裏を囲んで食事をしたいと、海外からのお客様も訪れています。個室が満席でもカウンター席やボックス席でアイヌ料理セットをいただく事ができます。素朴な料理を堪能して、アイヌ文化に思いを巡らせてはいかがでしょうか。

海空のハル
所在地:北海道札幌市中央区南3条西4丁目 J-BOXビル5F
電話:011-231-6868
営業日時: 17時~23時30分
定休日:毎月第1月曜日、毎月第3月曜日、毎週日曜日、月曜日祝日の場合は日曜日営業、月曜日代休
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アイヌ伝統の家庭料理を堪能 「ケラピリカ」

▼アイヌ文化のエッセンスが散りばめられた店内

アイヌ語で「美味しい」という店名を掲げた「ケラピリカ」は、大阪・天神橋でイタリアン&アイヌ料理店を経営していた今ひろあき氏が、「母親が作っていたアイヌの家庭料理を多くの人に食べてほしい」と、2019年5月に札幌に移転し、時計台の近くにオープンしました。

アイヌ料理を気軽に味わえるお店

▼イタリアンシェフとしても腕を振るう今シェフ

髭が印象的な今シェフは、道北・枝幸町の出身で、アイヌ民族の血を継いでいます。縄文人の遺伝子を色濃く受け継ぐと言われるアイヌ民族は、北海道のみならず、かつては南樺太(サハリン)、千島列島全域、本州北端にまたがる地域に居住していました。

▼ディナーもリーズナブルな価格で味わえる

アイヌの人たちは、漁撈や狩猟で得た鮭やエゾシカ、山野で採集したオオウバユリの鱗茎やドングリや山菜のほか、雑穀やジャガイモ等を栽培して食べていたと言われています。北海道ではおなじみの「トバ(tupa トゥパ)」や「ルイベ(ru・ipe ル・イペ)」もアイヌの食文化の一つです。ケラピリカでは、アイヌ料理がランチとディナーで味わえます。

▼人気のランチメニュー「オハウ 定食」

▼柔らかく煮込まれたエゾシカのスネ肉

ランチの一番人気は「オハウ定食」です。この日の肉はエゾシカのスネ肉。じっくりと煮込まれた野菜との相性がよく、全体に旨味が染みわたっています。アイヌ料理以外にもイタリアンの技術を生かした小鉢が付くなど、食べる人を飽きさせない工夫が見られます。

▼儀式のときに振舞われていた「いなきびご飯」

「アイヌの家庭料理と言いながら、お客様にお出しするためにグレードアップしています」と今シェフ。米、いなきび、塩、脂で炊き上げた「いなきびご飯」は、儀式のときの特別なご馳走とされていたようです。

北海道の自然が育んだ食材を使用

▼シケレペのピリッとした苦みが決め手

アイヌ語で「合わせる」という意味がある「ラタㇱケㇷ゚」は、野菜、豆類を煮て魚脂または、獣脂と塩で味付けした料理です。健胃と整腸作用があるとされているシケレペ(キハダの実)を乾燥したものを水で戻して使用します。カボチャの甘さと、シケレペの苦みのバランスが絶妙です。

多くのウタリに支えられて

▼川上竜也氏(左)と今シェフ(右)。共にアイヌの血を継ぐウタリ(仲間)

▼川上竜也氏の手によって伝統が継承される

店内にはウタリ(アイヌ語で仲間)が作った装飾品が飾られ、アクセサリーなども販売しています。公益財団法人 北海道アイヌ協会の川上竜也氏は、数々の装飾品を手掛けるほか、相方の川上将史氏と共に笑いでアイヌ文化を伝える「ペナンぺ・ペナンぺ」というコンビを結成。ケラピリカでのライブも予定しています。

「アイヌ料理でも食べに行こうか」が普通の会話になってほしい!

▼常設のステージでは不定期でアイヌの音楽などが披露される

写真提供:ケラピリカ

今シェフは、「アイヌ民族であることが枷と思った時期もありましたが、仲間に支えられて誇りに思うようになりました」と言います。今後は、ラーメンのように、「アイヌ料理でも食べに行こうか」と言われるくらい、日常的な料理になってほしいと期待しています。

ケラピリカ
所在地:札幌市中央区北1条西3 古久根ビル B1F
電話:011-522-7787
営業日時: 11時30分~14時00分(月~金)18時~22時30分
定休日:日・祝
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