赤と緑のコントラストが美しい「ちっぷべつ緑のナポリタン」とは

【秩父別町】 2013年6月29日、人口2700人に満たない小さな町に新たなご当地グルメ「ちっぷべつ緑のナポリタン」が誕生した。デビュー直後の7月6・7両日に芽室町で開催された「新・ご当地グルメグランプリ北海道」では、初参戦ながら注目を集め連日完売、堂々の総合3位にランクイン。さらに、デビュー1カ月間で町内3店舗だけで2000食を突破した。関係者も驚きのスピードで、その勢いはとどまるところを知らない。いま注目の『緑のナポリタン』(ミドナポ)とはどのような料理なのだろうか、まずは提供店舗の一つ、キッチンハウス小島を訪ねた。

赤と緑が美しい「ちっぷべつ緑のナポリタン」とは?


白色の皿に盛られた鮮やかな赤いソース。その中央に置かれた緑色のパスタ。そしてその上に置かれたブロッコリーのソテー。シンプルながらとても鮮やかで、赤と緑のコントラストが美しく、一部では『クリスマスカラー』とも言われる。緑のナポリタンと聞くとソースが緑なのをイメージしがちだが、ソースは赤で麺が緑というのがポイント。まずは、誰もがこの見た目に興味をひかれるはずだ。

パスタは太さ6mm・長さ20cmの平麺。一口食べてみると、ブロッコリーの香りが口の中で広がり、しっかりとした歯ごたえでブロッコリーの味もしっかり感じられ、トマトソースともよく合う。ソテーしたブロッコリーもシャキシャキしていて甘みもあり、麺の食感との違いも十分に楽しめる。


使っている素材は主に二つ。(1)秩父別特産品のブロッコリーと(2)トマトジュース「あかずきんちゃん」だ。まず、ソテーして盛りつけられた薄切りブロッコリー。キッチンハウス小島オーナーで推進協議会長・小島昇一さんによれば、開発の段階で『ブロッコリーを茹でたり揚げたりと1年かけていろいろ試し、ようやく薄切りのソテーに辿り着いた』という。



さらに、平麺生パスタにも秩父別産ブロッコリーパウダーが入っており、緑の粒粒を視認できる。麺の原材料である小麦粉や米粉も地元産で、ブロッコリーパウダーと共にフタバ製麺(留萌市)に持ち込んで製造している。ちなみに麺の茹で時間は約1分20秒。ブロッコリーと麺の味付けは塩コショウとバターと決められている。

トマトソースに関しては、地元産トマトジュース「あかずきんちゃん」をベースにしたオリジナル。タマネギ、ニンジン、ベーコン、ナツメグなどに醤油や砂糖などを加えて炒め、赤ワインで香り付け。素材をミキサーしトマトジュース「あかずきんちゃん」とを合わせる。それ以外の味付けにより、各店それぞれオリジナリティや個性を出している。


付け合わせの副菜やスープ、デザートは各店に任されている。キッチンハウス小島では、サラダ、スープに加え、深川市のMOMO工房製のブロッコリーアイスを提供、ここでもブロッコリーにこだわりを見せる。

ミドナポを食べる際、なぜかフォークではなくトルネード箸を使うのは、気軽に食べていただきたいという思いが込められている。とにかくデビュー以来ミドナポの反響は大きく、同店では今や『来店客の約9割がミドナポをオーダーする』と言うほどの人気ぶりだ。

ちっぷべつ緑のナポリタンの主なポイント
・秩父別町の名産ブロッコリーを練りこんだ緑色のオリジナル地粉生パスタ使用。
・名産トマトジュース「あかずきんちゃん」をべースにした赤色の特製トマトソース使用。
・塩コショウとバターでソテーしたブロッコリーをトッピング。
・各店オリジナルの副菜・スープ・デザートを添える。
・トルネード箸でカジュアルにいただく。

では、評判の「緑のナポリタン」はどのようにして誕生したのだろうか。開発の経緯は、ちっぷべつ緑のナポリタン推進協議会事務局の佐藤裕司さんに話を聞いた。

25回以上の試作会議を経てようやく完成

商工会の佐藤さんによれば、緑のナポリタン開発の歴史は、秩父別町役場主体で北海道から地域づくり推進事業の支援を受けたことに始まる。その事業の中でご当地グルメを手掛けたいという話をしていたという。そんな中、2012年4月、元じゃらん編集長・ヒロ中田さんによる講演会「食による観光振興」が秩父別町役場で地元料飲店参加のもと行われた。

秩父別町の特産品と言えば、主に本州の料亭で使われるが地元ではあまり使われない高品質ブロッコリー、そして、売り切れ必至の人気商品であるトマトジュース「あかずきんちゃん」しかなかった。そこで、これらを使用したご当地グルメを作るという提案を受けた。「緑のナポリタン」という名称もヒロ中田さんによる命名だ。

講演会直後から、地元の6~7店舗の料飲店が主体となって、JA・商工会などと協力し開発を進めていった。提供方法や付け合わせなどを検討するに当たり、25回を超える試作会議を重ね、そのうち10回以上はヒロ中田さん本人が参加し厳しい提案を受けた。初回の試作品にはカボチャを乗せたものもあったという。『ブロッコリーもトマトジュースも食の主役になるものではないため、開発には苦労があった』と佐藤さんは話す。

それでも妥協せずに投げ出さずに提案を受け入れ改善していった結果、1年かけて「緑のナポリタン」は完成した。『ミドナポ』をランチで提供しなければならない関係上3店舗でのスタートとなったが、メディアでの紹介やイベントもあり良いスタートを切った。

ちっぷべつ緑のナポリタンデビューまでの軌跡
2012年4月17日 ヒロ中田氏の講演会開催、以後25回以上の試作開発会議実施
2013年6月28日 完成発表会・協定調印式
2013年6月29日 町内3店舗でデビュー、4日間で220食達成
2013年7月6日 新・ご当地グルメグランプリin十勝芽室に初参戦、総合4位
2013年7月7日 新・ご当地グルメグランプリin十勝芽室で総合3位(合計2000食提供)
2013年7月15日 町内3店舗合計1000食達成、記念イベント実施
2013年7月28日 町内3店舗合計2000食達成

町民の反響も大きくサポーターも続々と


秩父別の3店舗だけで一つのメニューが1カ月で2000食というのは従来ではありえないことで、関係者は驚きを隠せない。札幌など町外からわざわざ食べに来る人も増えている。今までローズガーデンと温泉しか観光の目玉がなかった秩父別に強力なご当地グルメが誕生したことで、秩父別を訪れやすくもなった。(写真:深川留萌自動車道秩父別IC出口に設置された看板もミドナポ。町を挙げてのご当地グルメだ)

一方で、地元町民も今回のヒットを受けて興味津々だ。当初は総じて冷めた反応だったものの、デビュー時にテレビで何度か放映されたことで、町民の多くが興味を持ち可能性を感じ始めたという。地元のファンも増えつつあり、イベント出店時に協力するボランティア(サポーター)も10人以上が集まった。

最後に佐藤さんに今後の展望を伺うと、『とにかくとどまらないということ。事務局としても絶えず呼びかけをして、さらに美味しくなるよう味を磨いていきたい』。小さい町ではあるが、町を思う人たちや地域振興の一助となればという思いを持つ人たちが、いま『ミドナポ』普及に力を注いでいる。


<取材協力>
▼キッチンハウス小島
雨竜郡秩父別町2条2丁目
TEL:0164-33-3911
営業時間:11:00~14:00(LO13:30)/17:30~22:00(LO21:30)
定休日:火曜日(※緑のナポリタンイベント出張時は休業あり)
▼秩父別町商工会ちっぷべつ緑のナポリタン推進協議会
ちっぷべつ緑のナポリタン公式サイトhttp://www.midonapo.com/

▼その他の提供店舗:秩父別温泉レストランはまなす、ファミめし屋ぶろっこりー