北大キャンパスには明治から続くポプラ並木と平成ポプラ並木とがある

札幌を代表する観光名所のひとつ「北大ポプラ並木」。北大といえば、クラーク像と並んで人気観光名所となっています。一般に北大ポプラ並木と言われる場所とは別に、平成のポプラ並木もあるのをご存知でしょうか。北大にある2つのポプラ並木についてご紹介します。

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幾つものポプラ並木があった北大キャンパス

明治時代に札幌農学校として開設された敷地には、お雇い外国人クラークの意見などを反映して、自生していたハルニレなどの大樹が残されてきました。他にも数多くの外来種が植樹されてきました。その一つがポプラです。

北大ポプラ並木といえば一般的に、北海道大学札幌キャンパスの南西部、理学部付近から北大第1農場に向かって伸びる約300メートルのポプラ並木を指します。このほか、北18条通りの馬場付近、中央通り(メインストリート)の北大生協食堂前、西5丁目通り沿いにも明治時代にポプラ並木がつくられました。

このうち、西5丁目通り沿いのポプラ並木は、1936(昭和11)年に陸軍大演習の大本営が農学部に設置された際、治安上の理由で伐採されました。メインストリートのポプラ並木は、強風によって倒木の危険があるとの実験結果を受けて、2002年に危険木10本、要注意木2本と診断されたため伐採されました。

▼西5丁目通り沿いにもポプラ並木があった

▼メインストリート沿いにも一部ポプラ並木はあった

度重なる台風に悩まされてきた「北大ポプラ並木」

北海道大学のシンボル的存在であり、札幌を代表する観光名所として知られるのが北大ポプラ並木です。ポプラはセイヨウハコヤナギと呼ぶひょろ長い木。もともと北海道にはない樹木で、明治時代にアメリカから防風林用に持ち込まれました。このポプラ並木も、前述のポプラ並木同様、明治時代に植樹されました。

▼北大ポプラ並木

札幌農学校二代目校長の息子である森廣が1903(明治36)年にアメリカから持ち帰ったポプラを、農業担当の南鷹次郎教授が農道に植樹したのが始まりとされています。しかし、このときはわずか数本だけであったので並木と呼ぶには程遠い状態でした。

1911(明治44)年、南がアメリカに行った際に、農場の防風林として活用するためにポプラを大量購入。1912(明治45)年に林学科の実習生が45本を植樹しました。

その後、ポプラ並木は成長し、市民の間で親しまれるようになりましたが、背の高い木であるゆえ台風のたびに被害をうけることになります。1954(昭和29)年の洞爺丸台風でまず数本のポプラが倒れると、1959(昭和34)年の台風では10本以上が倒れる被害を出してしまいました。

これを受けて伐採したほうがよいという声が上がりましたが、市内の小学生の女子児童が「私たちのポプラがかわいそう。植え直してあげてください」と書いた手紙を当時の北海道知事に送ったのをきっかけに、北海道と北海道大学が新たな苗木を植えることで決着を見ました。この結果、ポプラ並木は51本になり、全長300メートルに延伸されることになりました。

それでも、老朽化による倒木の危険があることから、1970年以降立ち入りが制限されるように。隣接する植物庭園「花木園」から鑑賞するしかありませんでした。

▼花木園入口には新渡戸稲造胸像が

そして2004年にはさらなる受難を経験。台風18号の影響で、ポプラ並木は壊滅的な被害を受けたのです。51本のポプラのうち無事だったのは24本。19本が根元から倒れ、8本は幹だけを残して大きく傾きました。

このたびも全国から再生を願う手紙や義援金の申し出があったといいます。根元から倒れた19本のうち、再生の見込みが高かったポプラ2本は、世界的にも例を見ない1本30tある倒木を立て直すというプロジェクトを成功させました。その他の17本は伐採し、並木のポプラの枝を土に埋め込み育てている若木を植えることになりました。

▼現在の北大ポプラ並木

【動画】動画で見る現在の北大ポプラ並木

この整備により、ウッドチップが敷かれ、約80メートルを開放。長年立入禁止だった一部エリアでも、花木園を通って散策できるようになりました。

なお、このときに倒壊したポプラはさまざまな木工品として蘇りました。その代表例がチェンバロで、北大博物館に所蔵されています。それによると、北海道教育大学の教授から提案を受けたもので、かつてヨーロッパではポプラがチェンバロなど楽器の材料に使われていたものの、現代では珍しい試みだったとのことです。製作は横田ハープシコード工房に依頼し、2年の製作期間を経てお披露目されました。チェンバロにはラテン語で「ポプラこの古の大志、札幌の地に生まれ、2004年嵐によって倒れ、2006年ここに蘇る」と刻まれています。

▼北大博物館所蔵のチェンバロ

平成ポプラ並木構想

北大ポプラ並木が老朽化していることを受け、北大創基125周年記念事業の一環として、2000年10月に新しいポプラ並木の植樹が行われました。このポプラは、北大ポプラ並木の枝を挿し木にして育てたものです。

▼平成ポプラ並木

平成ポプラ並木は、北大ポプラ並木から北大第1農場を隔てて北西に約450メートル進んだところに位置しています。北大ポプラ並木が南から北に伸びていたのに対し、平成ポプラ並木は東西に伸びています。

現在では道路が広くアスファルト舗装され、全長約300メートルに及ぶ70本のポプラ並木を楽しむことができます。並木の向こうには手稲山を望むよう配慮されています。こちらはまだ、認知度も低く、ポプラ並木を目的に訪れる人もあまりいませんが(北大生は通る)、JRタワーをバックに広大な北大第1農場が広がっており、牛や羊が草をはんでいる姿を柵越しに見ることができます。その先に、北大ポプラ並木の一部を望むこともできます。

▼北大第1農場に隣接する平成ポプラ並木

▼北大ポプラ並木をバックに牛が草をはむ

【動画】動画で見る平成ポプラ並木から見る北大第1農場

北海道大学キャンパスにある2つのポプラ並木で、100年以上に渡り脈々と受け継がれるポプラ並木の歴史を感じてみてはいかがでしょうか。

▼北大ポプラ並木と平成ポプラ並木の位置関係

参考文献:『さっぽろ文庫:札幌の木々』、『烈風一過 北大キャンパスの木々』