タンチョウはどこで見られる?釧路・鶴居の観察ポイントまとめ

道東の釧路湿原を中心に生息する、特別天然記念物タンチョウ。その優雅な舞を見よう、撮影しようと、全国から多くの人たちが訪れます。特に、冬季は餌付けでたくさんのタンチョウが一度に集まる時期で、気軽に間近でタンチョウを観察できるチャンスですよ。

でも、タンチョウを見に行くならどこに行けばいいのでしょうか。釧路周辺のタンチョウ観察スポットをご紹介します。

釧路近郊タンチョウ観察ポイント全図
釧路近郊タンチョウ観察ポイント地図(鶴居村拡大図)

たくさんのタンチョウを気軽に見るなら給餌場を狙え!

鶴居村の鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ

道東に生息しているとはいえ、湿原近くを走りまわっていれば必ず見られるというわけではありません。どうしても野生のタンチョウを見たい!ということでしたら、必ず会える場所に行くほうがいいでしょう。

その一つが、給餌場。冬季間(11~3月)は毎日、給餌場にたくさんのタンチョウが集まります。雪原の中に響くタンチョウの鳴き声も、この時期ならではです。

では、その給餌場とは一体どこにあるのでしょうか。釧路湿原周辺にはメジャーなタンチョウ給餌場が下記の3か所あります。

  • 釧路市阿寒町「阿寒国際ツルセンター(タンチョウ観察センター)」
  • 鶴居村「鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ」
  • 鶴居村「鶴見台」

それぞれ詳しく写真と動画付きでご紹介します。

鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ

鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ

中でも、鶴居村市街地近くにある「鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ」は大人気のスポット。1987年11月、タンチョウ給餌に尽力した故 伊藤良孝さんの協力のもと、タンチョウ保護を目的として、日本野鳥の会が全国の募金により設置した施設です。鶴居観光十景のひとつ。

ここでは、11月上旬から一日1回デントコーンを給餌しており、12月~2月には最大で道内の3分の1に相当する300羽のタンチョウが飛来します。ネイチャーセンターは開館時間がありますが、給餌場はいつでも観覧可能、無料です。

雪解けが進んだ3月の鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリのタンチョウ
鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリにたくさんのタンチョウが集まる
鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリの給餌風景
残したい日本の音風景100選に選定されている
ネイチャーセンターでタンチョウについて学べる

鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ
所在地:阿寒郡鶴居村字中雪裡南
電話:0154-64-2620
ネイチャーセンターの開館日と時間:10~3月の9時~16時
入館料:無料
駐車場:あり

鶴見台(鶴居村)

鶴見台全景

鶴居村のもう一つのスポットは「鶴見台」。鶴居村市街地から南に向かう道道53号線ルート上に位置します。こちらも11月から3月までが見頃で、1月前後の、給餌時間である早朝・14:30の一日2回、200羽近いタンチョウが集まってきます。鶴居観光十景のひとつ。

駐車場は鶴見台側と道道を挟んで向かい側になります。交通量はそれほど多くありませんが、カーブに近いので、道路を渡る際は十分注意してください。

鶴見台に集まるタンチョウの群れ

鶴見台
所在地:阿寒郡鶴居村下雪裡
電話:0154-64-2050
入場料:無料
駐車場:あり

阿寒国際ツルセンター グルス「タンチョウ観察センター」(釧路市阿寒)

阿寒国際ツルセンター グルス(タンチョウ観察センター)の給餌場に集まるタンチョウ

釧路市阿寒町の道の駅にある「阿寒国際ツルセンター グルス」併設の「タンチョウ観察センター」前の給餌場には、11月~3月の期間中、150~200羽近いタンチョウが集結します。朝から夕暮れまで一日中観察できます。

阿寒町は1949年(昭和24年)~1950年(昭和25年)に山崎定次郎氏の手で野生のタンチョウに餌を与えたことから、タンチョウ人工給餌発祥地として知られています。その阿寒町に1977年(昭和52年)、タンチョウ観察センターが開設されました。

1996年に設立された「阿寒国際ツルセンター グルス」は国内唯一のタンチョウのための研究施設です。本館内の展示室では資料展示や映像でタンチョウの生態を知ることができるほか、キッズスペースに遊具などもあるので子ども連れにも嬉しい作りとなっています。

阿寒国際ツルセンター入口
阿寒国際ツルセンター本館ではタンチョウについて学べる
別館のタンチョウ観察センター
寒さに耐えられない場合は観察センター内へ
阿寒国際ツルセンター グルス(タンチョウ観察センター)の給餌場に集まるタンチョウ
阿寒国際ツルセンター グルス(タンチョウ観察センター)の給餌場に集まるタンチョウ

実際にタンチョウを観察できるのは、阿寒国際ツルセンター本館から外へ出て分館となる「タンチョウ観察センター」側。山の手前側に大勢いるタンチョウの群れは、ひと目見た瞬間つい声が漏れてしまうほどの感動図です。胸の高さくらいの塀はあるもののネットなどの囲いはなく、給餌場に集まってきたタンチョウの群れを贅沢に観察できます。

エゾシカも遊びに来る

ときにはエゾシカ、カラス、ワシやスズメも遊びに来ます。タンチョウは飛んでいったり飛んできたりするので、美しく飛び舞う姿も撮影可能。時間になればお魚タイムとした給餌もあり、それらを待ち構えて撮影に挑むカメラマンも大勢います。寒さに耐えられない場合は、観察センター内で暖をとりながら撮影することもできます。

飛んでいったり、飛んできたり。頭上も楽しい

なお、本館側の野外飼育場にはタンチョウとマナヅルが飼育されており、年間を通じて観察できます。夏季にタンチョウに会いたいときはこちらの施設が便利です。

阿寒国際ツルセンター グルス
所在地:釧路市阿寒町上阿寒23線40番地
電話:0154-66-4011
営業時間:本館は9時~17時、年中無休。タンチョウ観察センターは11~3月の8時半~16時半(11~1月は16時まで)期間中無休
入場料:高校生以上480円、小中学生250円(本館分館共通券)
駐車場:あり

まだまだある! 釧路周辺のタンチョウスポット

鶴居村には、他にもタンチョウの撮影ポイントがあります。早朝のねぐらや夕方の観察ポイント、夏季でも見られる公園などがあります。特に鶴居村は、タンチョウを自然の姿で観察できる観光地がいくつもあります。

  • 鶴居村「音羽橋」
  • 鶴居村「菊池牧場」
  • 釧路市「釧路市丹頂鶴自然公園」
  • 釧路市「釧路市動物園」
  • 標茶町「茅沼駅」

音羽橋(鶴居村)

音羽橋から見るタンチョウのねぐら

「音羽橋」は鶴居観光十景のひとつ。周囲に何もないところですが、雪裡川にかかるこの橋は、車道と分かれた歩行者用の橋が用意されており、落ち着いて観察できます。対象まで数百メートルと遠いため望遠鏡や双眼鏡が必須なのですが、河畔のタンチョウのねぐらを観察することができます。時には、エゾシカが川を横断する姿を見ることも。

ここの魅力は、雪裡川が冬季でも凍らず、夜間とても冷え込むことによって早朝に川霧・霧氷が発生すること。それゆえに、幻想的な霧の中タンチョウを撮影できると、カメラマンに人気のスポットです。日の出くらいには飛び立ってしまいますから、早起きして夜明け前には到着しておく必要があります。観覧自由。

音羽橋の北側にある「音羽橋周辺を眺める丘」(正式名称なし)も穴場。冬季除雪がなされず通行止めなので基本的にカメラマンしか行きませんが、早朝に河畔のねぐらから飛び立つタンチョウを撮影することができます。観覧自由。駐車場は橋の両たもとに道路沿いに駐車するスタイルです。

菊池牧場(鶴居村)

鶴居・伊藤サンクチュアリの近くにある「菊池牧場」は主に夕方の撮影ポイント。サンクチュアリからねぐらに帰るルートにあり、夕陽をバックに撮影できます。私有地なのでマナーを守って。観覧自由。

釧路市丹頂鶴自然公園(釧路市)

釧路市丹頂鶴自然公園のタンチョウ

タンチョウを檻の中で見たいなら、あるいは夏季も見たいなら、あるいは夏季にヒナを間近で見たいなら「釧路市丹頂鶴自然公園」がおすすめ。

同公園の500メートルに渡る園路沿いには、自然そのままに再現された幾つもの区画があり、つがいごとに入れて飼育されているので、通年でタンチョウの姿を見ることができます。特に夏季は、自然の中でタンチョウを見られる機会がぐんと減るので、夏季にタンチョウを確実に見たい方にはおすすめです。

1955年(昭和30年)に大雪で餌がなく瀕死の状態だったタンチョウを保護する活動が行われ、1958年(昭和33年)8月に7ヘクタール(東西34メートル・南北180メートル)の公園が募金等によって完成しました。1970年(昭和45年)に高橋良治さんの手により国内初の人工孵化に成功したことから、日本で唯一、タンチョウの人工孵化が行われてきました。

ヒナが生まれるのは春頃
黄色の毛で覆われた可愛いタンチョウのヒナ

現在も20羽ほどが飼育されていて、夏季には黄色い毛で覆われたヒナを近くで見ることができます。最近では2020年にヒナが誕生しました。親鳥は常にヒナの姿を気にしており、餌のある箱から口に入れてはヒナのもとへと運ぶ様子を何度と見ることができます。母親が地面へしゃがみ込んで羽根の中にヒナが入るという、写真でしか見たことがなかった様子も見ることができます。また、給餌時間もあるので、餌を食べる姿も観察できます。

ヒナが母親の懐へ入る姿がかわいい

このほか、本館内に展示室、売店、レクチャー室があります。釧路空港から車で約10分という距離にあり、アクセスも良好です。

釧路市丹頂鶴自然公園
所在地:釧路市鶴丘112
電話:0154-56-2219
営業時間:4月10日~10月14日は9時~18時、10月15日~4月9日は9時~16時、年中無休
入園料:一般(高校生以上)480円、小中学生110円
駐車場:あり

釧路市動物園「タンチョウ保護増殖センター」(釧路市阿寒)

釧路市動物園のタンチョウ観察デッキ

1982年(昭和57年)に釧路市動物園に開設されたタンチョウ保護増殖センターでもタンチョウを観察できます。特にここでは、毎年運び込まれるタンチョウの孵化と増殖という役割を担っています。繁殖できそうなタンチョウは前述の釧路市丹頂鶴自然公園に移されて飼育されます。

釧路市動物園「タンチョウ保護増殖センター」
所在地:釧路市阿寒町下仁々志別11番
電話:0154-56-2121
営業時間:4月10日~10月14日は9時半~16時半、10月15日~4月9日は10時~15時半
休園日:12~2月は毎週水曜日(祝日の場合は開園)、12月29日~1月2日
入園料:一般(高校生以上)580円、中学生以下無料
駐車場:あり

茅沼駅(標茶町)

JR釧網本線茅沼駅
タンチョウの私有地らしい。立入禁止です
タンチョウが線路の向こうにいる

タンチョウ観察マナー

特別天然記念物タンチョウ保護のため、観察時にはマナーを守ってください。基本はタンチョウを大切にする姿勢が大事です。

  • タンチョウに近づかない。
  • 餌をあげない、ゴミを捨てない。(給餌には決まりがあります)
  • 大声を出したり、びっくりさせない。
  • 私有地に立ち入らない。決められた場所以外に立ち入らない。
  • エンジンかけっぱなし禁止。
  • 撮影はフラッシュ禁止。

タンチョウを撮影する方々は、まだ暗いうちに到着し、早朝から撮影する方が多いです。釧路地方の冬は晴天が多く、深夜帯から明け方にかけて相当冷え込みます。過剰なほど防寒着を用意していくことをおすすめします。

以上、タンチョウの観察ポイントをご紹介してきました。マナーを守って、楽しくタンチョウを観察してくださいね。

(※本稿は 2010年11月24日、2013年5月17日、2013年3月11日のタンチョウ観察スポットの記事をまとめて再編集したものです)