根室市でよく見かける名物郷土料理、その名は「エスカロップ」です。エスカロップとだけ聞いても何の料理なのか分かりません。ときには地元の学校給食にも出るほど浸透しているエスカロップ。今回はそんなエスカロップの秘密に迫ります。
エスカロップとは?
カタカナの名称なので外来語ということが分かりますが、フランス語の「肉や魚の薄切り」という意味があります。しかしながら、命名のもとになったのは「エスカロッピーニ」というイタリア風料理から。略称で「エスカ」とも呼びます(後述)。
ここでは、肉、それも豚肉を使ったものになります。しかし、ただ薄切りにした豚肉ではありません。トンカツ状の豚肉にします。そして、「ドミグラスソース」をかけます。
そして、いためたライスの上にトンカツをのせ、サラダも添えます。これで根室名物「エスカロップ」が完成します。「いためたライス」には、2パターンが存在し、赤色に見える「ケチャップライス」、白色に見える「バターライス」が出されてきました。誕生当初以来、ケチャップライスよりバターライスのほうが人気が高く、現在もバターライスがメジャーです。
こうしてみると、兵庫県加古川市の加古川名物「かつめし」に似ているものに見えますが、ご飯と肉が異なります。
エスカロップのはじまりと定着
1963年ころに根室市で考案されたといわれています。30歳を迎えた森町出身の若手シェフ古村欣也氏が横浜から根室市内にやってきて、別海町の網元・鈴木和彦氏が1957年に開店した洋食レストラン・喫茶の「モンブラン」(現在はない)に勤め、エスカロップを考案・命名・提供したのがはじまりです。創案者はすぐに根室から旅立ちましたが、昭和50年頃に根室市内に急速に広まり定着しました。
「モンブラン」というレストランは、エスカロップ誕生に貢献したあとすぐに閉店します(1965年倒産)。1963年、ここで勤務していたシェフ・梅田勝利氏が独立創業し「ニューモンブラン」を開店、そこから1969年に小滝文吾氏により「どりあん」が独立創業しました。これらの2店舗がエスカロップを広めたとされていますので、元祖エスカロップの後継者といえます。
しかし遡ってみてみると、根室名物として定着したエスカロップの前身は新橋や横浜にあるという意見もあります。「ヌプカ2000Vol.2」によれば、根室にやってきた古村シェフが勤務していた経験のある東京・新橋の「グリル明治」で、同店の小川光男シェフが「エスカロッピーニ」(エスカロッピニー)を出していたのが原形ではないかと言うのです。古村シェフも実際に作っていたということなので、遡ってみると、エスカロップは新橋から来たと言えるのかもしれません。
今や、根室市内では知らない人がいないほどの有名メニュー。しかし、道東以外ではなかなかお目にかかれないというのも事実です。※現在「どりあん」が提供するエスカロップは登録商標です。
▼「どりあん」の提供するエスカロップ
エスカロップの変遷
当時は、ビフカツ(牛肉)を薄切りにしたものと、今のようなご飯の上にではなくナポリタンを用いていたようです。しかし、これはすぐに、豚肉は豚ロースをソテーしたポークカツレツに、そしてケチャップライスに変換され、現在の元になりました。
後にマッシュルーム入りのバターライスもメニューに加えられるようになりました。現在はタケノコが入っているバターライスに変更され、いまはこれがメジャーなメニューです。
広まった理由としてはいろいろあげられますが、作り手の側としては、作りやすさ、食材の入手しやすさ(発案当初は牛肉にマッシュルームにナポリタンと、高価な食材を使っていましたが変更)といわれています。消費者側としては港町ゆえ、ボリューム感あるメニューが好まれたのでしょう。
近年、根室特産品のサンマを肉の代わりに使ったエスカロップも誕生しました。名前の由来が”肉や魚の”薄切りというわけですから、これもエスカロップといえるでしょう。
まとめ
エスカロップとは:トンカツをご飯の上にのせてドミグラスソースをかけた もの。サラダも添える。
赤エスカロップとは:ご飯がケチャップライスのもの。
白エスカロップとは:ご飯がたけのこ入りバターライスのもの。
ビフカツ+ナポリタンスパゲッティ
↓
豚ロースソテーのポークカツレツ+ケチャップライス(元祖赤エスカロップ)
↓
トンカツ+ケチャップライス → 赤エスカロップ成立
↓
トンカツ+マッシュルーム入りバターライス(元祖白エスカロップ)
↓
トンカツ+たけのこ入りバターライス → 白エスカロップ成立