地元では当たり前のように食べられているのに、少し他の地域へ行けばほとんど知られていない食べ物というものがあります。きっと日本全国、どこにでもそうした「地元民しか知らない味」がいろいろ存在しているのでしょう。今回ご紹介するのも、まさにそう。広い北海道の中で、天塩町でしかほとんど見かけることのない飲み物。マスカットサイダーです。
マスカットサイダーって何? どんな味?
マスカットサイダーは、天塩町にあるアサヒ飲料株式会社という会社で製造販売されています。その名の通り、マスカット味のサイダーです。
▼色もマスカットのようなグリーン
天塩町の人なら、一度は必ず飲んだことがあるはず。昭和時代のカルピスのように、どこの家の冷蔵庫にも常備してあるというわけではありませんが、地元ではお馴染みの味なのです。
▼3本パックで売られていることも
たとえば、天塩町の居酒屋に行けば、かなりの確率で「マスカットハイ」という飲み物をメニューに見つけることができます。もちろん、このマスカットサイダーを使った焼酎割りやサワーのことです。
天塩町内ではいろんなお店で販売していますし、天塩町や遠別町の道の駅でも販売されています。
▼マスカットサイダーを販売している「道の駅 てしお」(天塩町)
▼「道の駅 富士見」(遠別町)の物産販売コーナーでも購入可能
また、ふるさと納税の返礼品にもなっています。興味のある人は、チェックしてみるといいかもしれません。
社長の秘密の小部屋から誕生した!?
マスカットサイダーが新発売されたのは、今から40年以上前の1974(昭和49)年5月のことでした。もともとはグレープサイダーという商品を製造していたのですが、保健所の規制で紫色が使えなくなったのです。
▼販売中止となったグレープサイダー
そこで当時の社長は、グレープサイダーに代わる商品を開発したいと考えました。そこで思いついたのがマスカットサイダー。社長の好物がマスカットだったからという、至ってシンプルな理由からでした。また、当時マスカットは高価なものだったので、高級感のあるものを作りたいという思いもあったようです。
▼新発売した頃のマスカットサイダー
そこから、社長の試行錯誤がはじまります。実は社長がひとり秘密の小部屋にこもって、個人的な感覚を頼りに開発したというのです。そのため、炭酸の配分に失敗して、容器のビンがパン!と音を立てて割れてしまうこともあったそうです。
▼現在のマスカットサイダー
現在、製造販売元のアサヒ飲料株式会社は別の人の手にわたり、初代社長のレシピも受け継がれました。しかし、炭酸と甘みのバランスが難しく、オリジナルの味に近づけるのに試行錯誤したそうです。今でもたまに、以前の味を覚えている地元民から「昔よりちょっと甘くなったね」と言われることもあるのだとか。
マスカットサイダーが誕生した経緯も含め、いかにも地元の人々だけに伝わってきた味というのが、なんだかうらやましくもあります。もしかすると、あまりにも普通だと思い込み、気づいていないだけで、あなたの町にもそんな「地元民しか知らない味」があるかもしれませんよ。
【動画】マスカットサイダーを飲んでみました!(出演:三村遙佳)
所在地:北海道天塩郡天塩町山手通り4丁目32の2
電話:01632-2-1525