苫小牧市の製菓といえば「三星」。その代表的なお菓子が「よいとまけ」です。日本一食べづらいお菓子との噂があるお菓子。いったいどんなお菓子なのでしょうか。
よいとまけ誕生秘話
三星は1964年設立。前身は小林多喜二の伯父が1898年(明治31年)に小樽市で創業したお店でしたが、1912年に苫小牧市に移転し「小林三星堂」になりました。パン、和菓子、洋菓子も製造販売していますが、やはり看板商品の「よいとまけ」に代表されるように、ハスカップのお菓子屋として定着しています。
ハスカップは苫小牧市の勇払原野に自生している植物です。そんな勇払原野に実るハスカップを使って開発・発売したのが「よいとまけ」というわけ。1953年のことでした。
「よいとまけ」は、初代社長が苫小牧のお菓子を……と開発し発売。当時は、1本50円で販売しました。当初は苫小牧産を摘み取っていたわけですが、勇払は工業化が進んでしまったことから、美唄市からのハスカップ”輸入”が行われています。
そんな「よいとまけ」は1994年、第22回全国菓子大博覧会で名誉総裁賞を受賞するなど、味は一級品です。
表面にハスカップジャムを塗り込んだロールカステラ
よいとまけは、表面に特製ハスカップジャムを塗り込んだほか、中にもハスカップジャムを贅沢に使用したロールカステラです。これでもか!といわんばかりにハスカップが使われています。また、ふわふわのカステラ生地は、新鮮な鶏卵を使用しています。
さらに、表面に塗られたハスカップジャムの上からグラニュー糖をまぶした後に、オブラートで包んでいます。このオブラートも食用なので食べることができます。オブラートを剥がすとジャムもはがれてしまうため、ご丁寧に「そのまま召し上がりください」と表記されています。
表面と中の特製ハスカップジャムは、ハスカップをじっくり煮詰めて、とろり甘くした、果肉感たっぷりのジャム。甘く煮詰めたジャムだから甘すぎるのでは?と思うかもしれませんが、ハスカップはそもそも酸味が特徴の果実ですので、そのハスカップの甘酸っぱさが、甘いロールカステラのアクセントとなっています。
ロールカステラの表面にジャムがコーティングされているわけですから、手づかみはちょっと厳しい……。それゆえに、いつしか「日本一食べづらいお菓子」と呼ばれるようになってしまいました。でもご安心ください。フォークが付いています。
出演:染矢優
よいとまけの名前の由来
ところで、インパクトのある「よいとまけ」という名前はいったいどういう意味があるのでしょうか?
三星によると、「よいとォまいたァ」という掛け声が名前の由来だとか。苫小牧市の大手製紙工場では、原料の丸太を積み下ろしていたわけですが、その時の掛け声が「よいとまいたー」だったとか。
お菓子の形も丸太状、名前の由来も苫小牧の一大産業の風景からとられたというわけです。いちど、地元特産のハスカップを使ったお菓子「よいとまけ」をご賞味あれ。
日本一食べづらい「よいとまけ【復刻版 切れていないタイプ】」発売
「三星」は2012年1月9日、「よいとまけ」の復刻版を道内の三星直営店、新千歳空港2階苫小牧観光協会ショップで5万個限定で販売します。日本一食べづらいと言われている銘菓ですが、昔懐かしい切れていないタイプを楽しめます。
「よいとまけ」発売当初は、カットせず一本そのままで販売されていました。購入者自身でカットするわけですが、オブラートでコーティングされているため上手にカットできず、カステラ生地もボソボソになってしまうほか、カットしている間にハスカップジャムが手についてしまってベトベトになるという問題点がありました。
そのため近年は、製造時にあらかじめ超音波振動スライサーを使い7等分にカットしたものを販売しています。もちろん断面も美しい! 購入者は(ハスカップジャム部分に触れない限り)手が汚れにくい! よかったよかった!
とはいえ、中にはカットされていない食べづらさを懐かしむ人も多かったのも事実。そこで三星ではその声を反映して、カットされていない「よいとまけ【復刻版】」の販売を決定したというわけです。
ハスカップ産地の苫小牧だからこそ生まれた三星の「よいとまけ」。ぜひ一度、日本一食べにくいことを体験してみてください。でも、おいしさは一級品ですよ。