【豊頃町】JR根室本線には「10$」の駅があるんだとか。ホームには巨大な10ドル紙幣(?)がでかでかと掲げられているそうです。そんな鉄道ファンに知られる面白い駅を紹介します。
「10$」に見えなくもない?「十弗駅」
やってきたのはJR根室本線、豊頃駅と池田駅の間に位置する「十弗駅」(とおふつえき)。青い屋根の駅舎は、北海道の小さな集落の駅ならではのいでたち。十弗市街地を抜けて駅前広場に立ってみても、「10ドル」の駅という印象は全く受けません。
しかし、ホームに立ってみると、巨大な看板が!どうやらお札のようです。これは、10ドル紙幣をモチーフにしてデザインした観光看板。縦1.2m×横2.7mのサイズです。
中央には擬人化された鉄道車両のイラストが描かれ、周辺マップ、そして大きな文字で「十弗は10$駅」と表記されています。下部をよく見てみると「10$持って旅に出よう。きっといいことが待っている」との文、上部にはJR北海道釧路支社であることを示す英語表記も。この看板を見ていると、不思議と「ここは日本?」と思ってしまいます。
なぜ「10$の駅」なのかというと、「10$」(縦棒は二本線でも使われる)は漢字では「十弗」であることから。鉄道ファンの間でも「10$駅」として知られています。「弗」と「$」。「S」が逆ではありますが、眺めているとそっくりに見えてきませんか?
巨大10ドル看板設置15年
そんな十弗駅は、地名の「十弗」、つまり、アイヌ語の「ト・プッ」(沼ノ口の意)に由来します。この読みに漢字をあてたのが十弗で、偶然にも「10$」をあらわすかのようになりました。
十弗駅は1911年12月15日、既に開通していた根室本線・池田駅~豊頃駅間に駅として新設したのが始まりという1世紀以上の歴史を持つ駅。1992年4月1日に簡易委託を廃止し、無人駅となりました。島式ホームで交換可能な駅でしたが、現在は1面1線の駅です。
十弗=10$というシャレから、JR北海道が巨大10ドル紙幣看板を設置したのは、2000年7月24日のことでした。設置当初は看板設置が報じられ、写真を撮りに訪れる鉄道ファンが多かったといいます。いまでは当時ほど訪れる人はおらず、静かな駅となりました。
駅待合室のメンテナンスをする地元住民に国交大臣表彰
同駅では、駅が無人化するより前から、地元住民の坂田みつさん(85)が、駅待合室の清掃、除雪、草刈、駅乗降側入口に定期的に花を飾って環境美化に尽力してきました。そのことが評価され、2014年国土交通省「鉄道の日・鉄道関係功労者大臣表彰受賞者―鉄道をめぐる一般協力者関係」の4名1団体の一人に選ばれました。
そのきれいな待合室にはノートが置かれており、十弗駅を行きかう人たちの思いが綴られています。なかには「100弗持ってすすきのに行ってきます!」というコメントも。まるで外国に来たかのような雰囲気に包まれる十弗駅を訪ねてみてはいかが?