日本一の大塊炭は圧巻!釧路「炭鉱展示館」で国内唯一の海底炭鉱を学ぶ

かつて北海道には、たくさんの炭鉱がありました。時代と共に閉山に追い込まれていった北海道の炭鉱の中でも、いちばん最後まで生産を続けたのが釧路の太平洋炭礦でした。「旧太平洋炭礦 炭鉱展示館」(以下炭鉱展示館)は、そんな旧太平洋炭礦の足跡を残し、後世に伝えるべく造られた展示館です。模擬坑道や実際に使われていた坑道掘進機など、迫力の展示にきっと驚かされますよ。

石炭の巨大な塊がお出迎え

▼高台に建つ炭鉱展示館

釧路市街を見下ろす青雲台の高台に建つ、炭鉱展示館。そこはまさに旧太平洋炭礦のあった敷地の一画です。来訪者は、まずエントランスに鎮座する日本一の大塊炭に驚かされるはず。

▼重さは、なんと6トン!

坑内から運び出された塊炭としては、日本でも類を見ない大きさだといいます。これを家庭用燃料として使った場合、釧路市平均使用量からすれば約2冬も使用可能というから、さらに驚きです。エントランスを抜けると、八角形のドーム型展示ホールが待っています。ここでは、石炭の生い立ちから商品化されるまでの過程や、石炭の埋蔵量から需要の見通しなど、現在の石炭について実態を学ぶことができます。

▼石炭に関するすべてがここに

もちろん、炭鉱の歴史についても詳しく説明されています。そもそも炭鉱は、釧路の三大基幹産業のひとつでした。旧太平洋炭礦は1920年に創業し、多い時では5000人もの労働者が働いていました。石炭需要の最盛期を過ぎた1970年以降、道内の大手炭鉱が次々閉山する中でも生産を続けましたが、2002年に釧路コールマイン株式会社に引き継がれました。そんな旧太平洋炭礦の機械化の歴史や釧路市との関わりについてなど、パネルや模型、パノラマなどの展示によって説明されています。目で見る生きた学習の場として、興味をそそられるはずです。

▼旧太平洋炭礦の坑内模型

この炭鉱展示館が造られた目的は、人々が忘れつつある石炭に今一度目を向けてほしい、ということでもあります。特に旧太平洋炭礦の石炭は硫黄が少なく、火力が強いと評判でした。そうした石炭の良さ、炭鉱の歴史を後世に伝えたいという願いが、炭鉱展示館を造り上げたのです。

世界的に珍しい海底炭鉱を再現

八角形の展示ホールを抜けて下へと続く階段を降りていくと、模擬坑道のフロアに辿り着きます。ここは、広さ410平方メートル、坑道80メートル、高さ3.4メートルの実規格の坑道。そのリアルな再現に、普段はなかなか見ることのできない場所へと足を踏み入れるワクワク感が止まりません。

▼坑内電気機関車と材料鉱車

まず見えてくるのが、電気機関車と材料鉱車です。実は釧路市は、現在日本で唯一の海底炭鉱を有する街。坑内掘りの海底炭鉱は、世界的にも珍しいといいます。そこで使われてきた機械は、いずれも時代に先駆する技術水準のものばかり。

▼坑道掘進機のコンテニアスマイナー

中でも迫力満点なのが、坑道掘進機のコンテニアスマイナー8CM。1966年に導入された高性能・高能率の掘進機で、先端にある2基の切削機で炭壁を切り落とします。切り落とした炭壁をさらにギャザリングローダーで掻き寄せ、後方に待機するシャトルカーに積載するという仕組みです。

▼炭鉱展示館の外でさらに詳しく観察できる

また、自走枠(S)とドラムカッター(D)の組み合わせにより石炭を採掘するSD採炭切羽方式も間近で見学することが可能。

▼SD採炭切羽方式

ドラムカッターで切削した石炭は、切羽コンベアーでゲート坑道内のステージローダーに運びます。ちなみにドラムカッターはラジオコントロール操作方式、自走枠は隣接枠操作方式を採用しているそうです。

▼切羽コンベアーで運び込まれた石炭

この模擬坑道に置かれている機械は、すべて坑内で実際に使われていたものです。本物だからこそ伝わってくる迫力が、見る者を圧倒します。すべてを見学し終えて外に出た時、思わず深い溜め息をつかずにはいられないはずです。

炭鉱展示館は、何も知らずに訪れても石炭について興味深く学ぶことができ、有無を言わせないほどリアルな模擬坑道に感動すら覚えます。観光スポットとしてはあまり知られていないかもしれませんが、ぜひ一度訪れてみてください。帰路につく時、きっと来て良かったと思える場所です。

旧太平洋炭礦 炭鉱展示館
所在地:北海道釧路市桜ケ岡3丁目1番16号
電話:0154-91-5117
開館時間:10時~16時
休館日:水曜日、年末年始・
料金:大人300円(200円)、子供200円(100円)