様似海岸を眺めるならどちらがお好き?山側の「観音山展望台」から編

【様似町】前の記事では、様似の海に突き出す「エンルム岬」からの海側からの眺望を取り上げました。後編の本稿では、陸側の観音山展望台からの眺望と、そこから見える様似海岸奇岩「ソビラ岩」「親子岩」「ローソク岩」を紹介します。

山側の高台から様似の海岸を見渡す!観音山展望台

エンルム岬から様似漁港を挟んで山側の高台が、標高100mほどの「観音山」です。その名は、明治時代の1895年に蝦夷三官寺・等澍院中興の祖だった13世住職・塚田純田氏が33体の観世音石像を安置したことに由来します(それ以前は円山と呼んでいた)。こちらにもかつて山頂にチャシがあったとされており、チャシ跡でカムイノミが行われてきました。

観音山は、春にエゾエンゴサク、アズマイチゲ、カタクリ、オオバナノエンレイソウなど花々が咲く山でもあります。展望台直前で腰が曲がったかのように立っているのは、カシワの老木。「観音山の御神木記念保護樹木」として1973年3月17日に指定されている老木で、樹齢400年以上と推定されています。頂上付近に生育していたこの巨木は御神木として崇拝されてきたといいます。

観音山の頂上付近にある展望台へは車で直接乗り入れることができます。海抜90mにある展望台からは、様似漁港を見下ろすとともに、エンルム岬、漁港にあるソビラ岩、西側(右手)にある親子岩とローソク岩までワイドに広がり、様似海岸奇岩を望むことができます。エンルム岬同様、奇岩をシルエットにして沈む夕陽は格別のものがあります。


▼様似漁港とソビラ岩

▼エンルム岬方面

▼親子岩とローソク岩方面

ではここで、エンルム岬や観音山展望台から見ることのできる奇岩を紹介しましょう。

様似海岸の奇岩群―漁港の中に居座る「ソビラ岩」

様似漁港の中でドンと立ちその存在感を示しているのが、高さ10mを超える「ソビラ岩」です。かつては、平安期以降成人男性の礼服の被り物であった烏帽子に似ていることから烏帽子岩と呼ばれていたといい、それ以前はアイヌがソプラレプンケ(沖にあるもの)と呼んでいました。漁港整備以前は沖合に孤立して立っていたのですが、現在は堤防とつながっており、間近で停泊する漁船とともに写真に収めることができます。

様似海岸の奇岩群―ビーチからも見られる3つの岩「親子岩」


漁港の西側にある大中小3つの岩は、様似のシンボル的存在の景勝地「親子岩」。左から順に、父・母・子のように並んでいます。この岩々の間に落ち込む夕陽は圧巻で、アイヌの伝説の中にもその夕陽の美しさにひかれて神々が訪れたという伝説があるといいます。また、前述のソビラ岩と合わせて、父と母子の岩というアイヌの伝説もあるそう。親子岩ふれ愛ビーチ付近から見ることもできるほか、国道沿いの高台にある親子岩展望台からも見ることができます。

様似海岸の奇岩群―ローソクの炎にそっくり「ローソク岩」

さらに西側に位置するのが「ローソク岩」です。塩釜トンネルのそばの海岸に立っている岩で、文字通りローソクの炎に似ている姿から命名されました。それ以前はアイヌの神様アイヌラックルが落としたクジラの焼串と言い伝えられていたそう。干潮時にはその真下近くまで行くことも可能ですが、2003年の十勝沖地震の影響で先端部分が崩落してしまったのが残念ポイントでしょうか。ちなみに、鵜苫と様似の境に位置し、江戸時代に製塩所があったことから塩釜となりました。

エンルム岬、ソビラ岩、親子岩、観音岩はいずれも安山岩質のマグマが固まった火成岩であるひん岩で、白亜紀の地層に比べて硬いため浸食されずに残ったとされている地形です。両方ともチャシ跡があり、古くから重要な拠点だったというエンルム岬と観音山。海と山、両側の高台から見渡せる場所としては、室蘭市、かもめ島のある江差町、オロンコ岩のある斜里町ウトロがありますが、それほど例はありません。様似の海岸でその貴重な眺望を楽しんでみてはいかがでしょう。