硬くてコシのあるパスタが好評!10年の節目迎える留萌発「ルルロッソ」

道内各地の特産品や地場産業の話題をお伝えする連載「北洋銀行この街紹介」。今回は、留萌市からお届けします。

留萌発の「ルルロッソ」をご存知でしょうか? ルルロッソとは、希少な小麦「北海259号」を原料とした小麦粉やパスタなどの商品のこと。国産小麦では珍しく、硬くてコシのあるパスタが好評です。最近では、首都圏にもルルロッソを使ったメニューが誕生し、話題を集めています。

留萌管内で試験栽培が始まって10年。節目を迎える今、その歴史を紐解きます。

「北海259号」との出会い

▼留萌市に本社・工場を置くフタバ製麺

遡ること約20年。1961年に留萌で創業した製麺会社「フタバ製麺」の仲田隆彦さん(現社長)は、イタリア帰りの先代社長の指示を受けて、日本人の口に合うパスタを生み出そうと研究を重ねていました。

日本人に受けるのは、ソフト感と硬さを兼ね備えた麺。それに近づけるため、外国産小麦で開発をはじめ、徐々に北海道産小麦を混ぜながら、道産小麦100%を目指していました。やがては、留萌産小麦で特産品を作りたいという夢を持っていたといいます。

▼「留萌を元気にしたかった」と話すフタバ製麺の仲田社長

そんな矢先、江別製粉(本社・江別市)から「奨励品種ではないが、デュラム小麦に近い小麦がある。持っていくから、留萌でやってみたら面白い」と紹介を受けたのが、超強力小麦「北海259号」でした。

このとき、フタバ製麺の仲田社長は、「北海259号」のポテンシャルに驚きを隠せませんでした。「練ったときから粘りや質感に違いがあることがわかりました。食べる前からすごさがわかる小麦は初めてで、絶対この小麦でやろうと思いました」と仲田社長は振り返ります。

たった1人の生産者から始まった栽培

一方、留萌管内の農業は、担い手不足や高齢化など深刻な地域となっています。そんな中、若手生産者は農業生産体制の効率化を進めることが喫緊の課題と考えていました。そのためには小麦を生産振興の柱に据えることが最重要と考え、きめ細やかな実需ニーズに合った小麦生産を模索していました。

その若手生産者の一人が、留萌市の北に隣接する小平町の農家、林寛治さんです。林さんは、「北海259号」の栽培に興味を示し、2009年秋に0.5ヘクタールの試験栽培からスタート。この品種は北海道の優良品種に選定されておらず、栽培マニュアルなどありませんでしたが、たった一人、手探り状態で栽培を開始したのです。

▼夏になると、黄金よりもちょっと黒い色付きを見せる「北海259号」の圃場(写真提供:留萌振興局)

生産者、製麺業者が動き出す中、製粉会社や大学なども協力。続くステップは商品化と販売体制の検討でした。そこで翌年夏の収穫を前に、留萌振興局がまとめ役となって、生産、加工、流通等の14団体を中心とした「留萌・麦で地域をチェンジする会(通称:麦チェンの会)」(現名称)が発足。試作品の製造、試食会などで検証を重ね、2011年に「生パスタ RuRu Rosso」の商品化が実現しました。

たった一人、わずか0.5ヘクタールでスタートした栽培面積も、生産者、JA南るもい、農業改良普及センターなどの尽力によって、2018年産は留萌市・小平町の9名の生産者、約36ヘクタール、生産量は年間約100トンにまで拡大しました。

パスタはもちろん、パンやピザにも

「北海259号」を原料とした商品名の「ルルロッソ」は、アイヌ語で留萌を意味する「ルルモッペ」、留萌の夕日をイメージした赤のイタリア語「ロッソ」をあわせて命名されました。漢字では「留々夕麦」と表記します。

▼江別製粉からフタバ製麺に納入されるルルロッソ

この品種は、小麦本来の香りが強く、コシのある、ゆで伸びの遅い生パスタが得られ、これまでの国産小麦にはない「コチコチ」とした独特の食感が得られるのが特徴です。こうしたことから、2012年度の「北のハイグレード食品2013」では生パスタが、2014年度には「料理マスターズブランド」で乾燥パスタが認定されるなど、高い評価を得ています。

▼フタバ製麺の前に掲げられた「新たな名産パスタ、誕生!!」の看板

地道なPR活動によって「ルルロッソ」という名前は知っている人も増えてきました。ルルロッソといえばパスタ。フタバ製麺の仲田社長によれば、ルルロッソはクリーム系のパスタがよくあいます。

▼フタバ製麺が製造する生パスタ(写真提供:留萌振興局)

フタバ製麺が最初に発売した「生パスタ」は幅6mmのフィットチーネで、現在は3mmのタリオリーニ、1.6mmのスパゲッティーニを加えた3種類を販売しています。乾燥パスタ、石臼でひいて作った全粒粉タイプの乾燥パスタも発売しました。留萌市内では、土産店「お勝手屋 萌」でパスタなどを購入できます。

▼デビュー作の「生パスタ」フィットチーネは今も一番人気

▼乾燥パスタも人気

留萌管内に目を移すと、羽幌町のTIARAではドーナツに使われているほか、小平町の道の駅ではルルロッソを原料にしたドーナツやパンが販売されています。JA南るもいが2016年6月に発売したのは、ルルロッソを100%使用した醸造酒「小麦美酒ルルロッソ」。田中酒造(小樽市)に委託したもので、市内のAコープルピナスで販売しています。

▼小麦美酒ルルロッソ

礼受牧場の畜産館トリムでは、ルルロッソと留萌管内の魚介類をふんだんに使ったオロロンパスタを提供。カフェ・メルカート、千望台レストハウス、美食酒家 司でもルルロッソを使った料理を提供しています。

▼礼受牧場畜産館トリムで提供する、魚介たっぷりオロロンパスタ

札幌市内では約20店舗でルルロッソを使った料理が味わえます。白石区のショッピングセンター「ラソラ札幌」に出店した「ピッツァスタンド DOSANKO DINING D」では、店主がこだわった小麦を使いたいと、ルルロッソを使ったピザを提供しています。

東京都品川にある「北海道留萌マルシェ」では、ルルロッソを使ったパスタやラーメンサラダを提供してきましたが、2019年4月にはブレンドながらルルロッソを使ったつけ麺「太麺ルルロッソの魚介出汁つけ麺」が登場し、人気を呼んでいます。このつけ麺だけを求めて来る人もいるそうで、ルルロッソのおいしさが道外でも広まりつつあります。

「ルルロッソは生パスタのイメージがありますが、ピザやドーナツなどに使ってもおいしくいただけることを、ぜひ知ってほしい」と留萌振興局産業振興部農務課の北島正美主査。試験栽培開始から10年という節目を迎えて、ルルロッソをもっと広めていきたいと意欲的です。

官民学一体となって生産・加工・販売・PRを行ってきた「ルルロッソ」。ぜひ一度ご賞味あれ。

北洋銀行留萌支店

所在地:留萌市本町3丁目38番地
電話:0164-42-2421