登別温泉といえば、やはり思い浮かべるのは湯けむりにかすむ温泉街や、鬼のオブジェ、そしてクマ牧場でしょうか。北海道を代表する温泉郷として、今や国内のみならず外国人観光客にも人気のスポットです。
そんな温泉街のど真ん中に、2017年7月、本格的なピザ屋さんが誕生しました。温泉街とピザ。この意外な組み合わせが一体どうやって実現したのか、登別温泉に行ってみました。
本格的なピザを安く気軽に食べてほしい!
▼湯けむりの街に、おしゃれなお店が
登別の温泉街を歩いていると、土産物店などが軒を連ねる中で、何やらおしゃれなお店を発見することができます。それが「PIZZERIA ASTRA」(以下アストラ)です。この店のオーナーであり、店長であり、そしてピザ職人でもあるのが、大坂大貴さん。
▼店長の大坂大貴さん(25歳)
「専門学校に通っていた時、バイト先のイタリアンの店長が楽しそうに仕事をしているのを見てショックを受けたんです。労働=大変なこと、というそれまで自分の抱いていたイメージが壊れました」(大坂さん)
自分も楽しいと思える仕事をしたいと思うようになり、弱冠19歳の時にもともと大好きだったピザの勉強を始めます。北海道だけでは飽き足らず、東京の高級イタリアンを経て、ついには本場イタリアへ。
▼本場イタリアで修行した確かな腕前
「そこでまたしてもカルチャーショックを受けました。イタリアでは、500円もあればおいしいピザが食べられるんですよ。日本と違って、もっと気軽な感覚でピザを楽しんでいるんです。そのピザ文化に感動して、日本でも実現したいと思いました」(大坂さん)
帰国してから、ピザをリーズナブルに提供することを考え、あえてキッチンカーという方法を選択した大坂さん。おいしいピザが1枚600円から食べられるということで、イベント出店などを重ねていくうちに、ファンが増えていきました。
すると、店でいつでも食べられるようにしてほしいという要望も増えていきます。考えた末、地元の登別に思い切って店舗を構えることにしました。
▼キッチンカーを始めて1年後に出店
キッチンカーで販売していた時と変えずに、ピザは1枚600円から。そのために、水はセルフサービスにするなど、店のシステムをできる限り簡略化しました。
▼懐かしい瓶コーラも、簡略化の賜物!?
最初は「温泉街で、ピザの需要なんてあるの?」と言う人もいたようですが、徐々に欧米からの観光客も増えている今、あまり心配はしていないという大坂さん。
また、周辺のホテルに勤める従業員たちからも、仕事帰りに気軽に立ち寄れる店ができたと喜ばれているのだとか。オープンから1年が過ぎ、おしゃれなピザ屋さんが温泉街にも馴染んできているようです。
3種類のマルゲリータを食べ比べ
最初は4種類から始めたピザですが、今では13種類に増えました。ししとう、サラミ、唐辛子をトッピングし、登別をイメージした「名物!! 地獄ピッツァ」(税込800円)も観光客から人気ですが、やはりマルゲリータを食べてみてほしいと、大坂さんは言います。
▼究極のマルゲリータ(税込1,000円)
なんとアストラでは、マルゲリータだけで3種類も用意されているのです。いちばん安い「マルゲリータ」が、税込600円。フレッシュトマトを使った「マルゲリータEX」が、税込800円。そしてフレッシュトマトに加え、北海道産のフレッシュチーズを使った「究極のマルゲリータ」は、千円札1枚で食べられます。
イタリアのように、できたての新鮮なチーズを使ってピザを作りたいと探したところ、白糠産のモッツァレラチーズに出会ったそう。3種を食べ比べてみて、トマトやチーズによってどれほど味わいが変化するのか、試してみるのも楽しいかもしれません。
▼カプレーゼ(税込980円)
そして、同じ白糠産のモッツァレラチーズを使った「カプレーゼ」も、絶品です。素材で勝負するメニューだからこそ、ジューシーで旨みたっぷりのフレッシュチーズの良さがダイレクトに伝わってきます。ピザと共に味わってみてはいかがでしょうか。
登別温泉で本格的なピザやイタリアンが食べられるなんて、意外に思う人も多いことでしょう。地元の人のためにサイドメニューを増やしたり、将来的にはカフェ部門も強化したりしていきたいということなので、ますます期待が高まります。登別を訪れた際には、湯めぐりの合間に、ぜひ立ち寄ってみてくださいね。