霧の多い太平洋岸の海運を支えた霧笛

「霧信号所」をご存知でしょうか。わかりやすく言うなら「霧笛」。霧で視界が悪いときに、海上を航行する船舶に音で位置を知らせるというものです。ほとんどが灯台に併設されていました。

2010年3月、最後の霧笛が廃止され、国内から全廃されました。かつて北海道では太平洋岸沿いを中心に霧笛が欠かせない存在でした。

霧笛が全廃された理由

管理している海上保安庁は、2009年度内に全国の霧信号所を全廃しました。廃止の理由として、レーダーやGPSの発達を挙げています。

1968年には全国に53か所(うち道内28か所)あった霧笛は、2007年には全国16か所(うち道内10か所)、2009年には全国9か所(うち道内8か所)と徐々に減らされてきました。いずれの場合も、北海道が霧信号所の数で全国トップでした。

道内では特に、太平洋岸の道東で多くみられます。釧路市、根室市、浜中町などにあり、日高管内えりも町の「襟裳岬灯台」もその一つです。こうした沿岸部では夏季に霧が発生しやすく、海上交通の支障となっていました。視界が悪い中で頼りになるのが霧笛でした。

襟裳岬灯台

最後まで残った北海道太平洋岸の霧笛

2010年3月廃止の道内の霧笛(霧信号所)
納沙布岬灯台(根室市)……40秒に3回(2010年3月31日廃止)
十勝港広尾灯台(広尾町)……(2010年3月19日廃止)
厚岸大黒島厚岸灯台(厚岸町)……(2010年3月19日廃止・荒天のため20日に延期)
花咲灯台(根室市)……30秒に2回(2010年3月31日廃止)
落石岬灯台(根室市)……30秒に2回(2010年3月31日廃止)
湯沸岬灯台(浜中町)……30秒に1回(2010年3月19日廃止)
日和山灯台(小樽市)……30秒に1回(2010年3月31日廃止)
釧路港霧信号所(釧路市)……2km先の釧路埼灯台で検知(2010年3月19日廃止)

2010年3月19日には釧路市釧路港の霧信号所、厚岸町大黒島厚岸灯台の霧信号所、浜中町湯沸岬の霧信号所、広尾町十勝港の霧信号所の4か所が廃止されました(厚岸は天候不良で20日に延期)。

納沙布岬灯台。「視界不良時霧笛注意」の立て札が立っていた

そして2010年3月31日、最後まで残っていた霧信号所つまり霧笛9か所がすべて姿を消しました。国内最後となった霧信号所は、宮城県の四子ノ埼を除けば、残りはすべて北海道。根室市の3か所、納沙布岬灯台の霧信号所、落石岬灯台の霧信号所、花咲港灯台の霧信号所、および小樽市の日和山灯台の霧信号所です。

根室市の花咲灯台

釧路では市民団体が保存

釧路市釧路埼灯台では、19日に廃止式が行わました。ブォーという霧笛が10分間鳴らされ、1925年設置以来80年以上の歴史に幕を下ろしました。

釧路では霧笛の音が有志により録音されているほか、釧路海上保安部から譲り受けた機器(霧探知装置・発音器)を釧路市が釧路霧笛保存会に無償譲渡、大切に保存されています。2012年には豪華客船入稿歓迎セレモニーで、2017年には霧フェスでその音が披露されました。

太平洋沿岸で名物となっていた霧笛がすべて消え去りました。聴けなくなったのは寂しいものですが、計器類が発達し海上交通が便利になったことを反映するものだといえます。