日本最大級の恐竜全身骨格化石が発見!「むかわ竜」の知られざる世界

2003年4月に、北海道むかわ町穂別で、完全な状態の尾椎骨の化石が発見されました。同地区は白亜紀に海だったため、首長竜の化石ではないかと考えられていましたが、調査を進めた結果、日本古生物学史上最大級の恐竜全身骨格化石であることが判明しました。学会が震撼した「むかわ竜」について、むかわ町穂別博物館の櫻井和彦館長に話を伺いました。

むかわ竜の化石は、こうして発見された!

穂別で発見された恐竜の化石は、その特徴からハドロサウルス科に属すると考えられています。ハドロサウルス科は中生代白亜紀(約1億4550万〜6600万年前)に世界各地で繁栄していた植物食恐竜です。

むかわ竜は全長約8m、全高約3.8mの大きさで、中程度の大きさと言えます。口先が長く平たいくちばし状となり、二脚歩行あるいは四脚歩行をしていたと考えられています。

▼化石収集家による世紀の大発見

(写真提供:穂別町博物館)

むかわ竜の化石は、2003年4月に町内の化石収集家の堀田良幸氏によって発見されました。まだ雪の残る林道を歩いていたところ、沢に面した斜面に大きな尾椎骨の化石を見つけたと言います。堀田氏の連絡を受けて、当時学芸員だった櫻井館長を含む穂別博物館職員によって採集されました。

太古の日高山脈は海であり、これまで多くの首長竜など海生爬虫類の化石が発掘されていました。その時の化石も首長竜のものと思われ、希少性に気づかれることなく博物館に保管されていました。

▼2011年に恐竜であることが判明

(写真提供:穂別町博物館)

世紀の大発見となるきっかけは、2010年のことです。「フタバスズキリュウ」を研究した東京学芸大学の佐藤たまき准教授が来館し、穂別博物館の収蔵する首長竜の化石を確認していたところ、その中に異質な化石を発見。クリーニング作業を行い、2011年に北海道大学総合博物館の小林快次准教授によって恐竜であることが確認されました。

▼大規模な発掘作業が行われた

(写真提供:穂別町博物館)

2013年に、むかわ町で初めての恐竜化石が発見されたことを発表し、同時に本格的な発掘作業を開始。全長8mの全身骨格が回収されました。

▼恐竜とは「直立歩行をする爬虫類」を指す

あまり知られていませんが、恐竜とは「直立歩行をする爬虫類」であり、分類としては首長竜と区別されています。したがって「映画ドラえもん のび太の恐竜」のモデルになった「フタバスズキリュウ」は、正しくは首長竜であって恐竜ではありません。

むかわ竜発見はここが凄い

▼国内最大級の全身骨格化石

日本の恐竜化石の80%以上が福井県で発掘されています。これまでは同県勝山市北谷で2007年に発掘されたフクイベナートルが唯一の恐竜全身骨格化石でした。むかわ竜は恐竜の全身骨格の発見としては、国内2例目となりますが、フクイベナートルが全長約2.5mの小型獣脚類であるのに対し、大きさでは遥かに凌駕しています。

▼海に流された恐竜か?

むかわ竜の化石が、約7200万年前の白亜紀後期の海底だった地層から発見されたことも、大きな意味があります。当時の北海道は東西の陸地に分かれ、その間に古代のウミガメやアンモナイトなどが暮らす海がありました。

むかわ竜は、ユーラシア大陸の沿岸部に生息していた個体が、何らかの理由で海に沈んだものと考えられます。のちに東西の陸地がぶつかり合って北海道が形成されると、海底が隆起して日高山脈が誕生。偶然の発見により、私たちの前に姿を現したのです。

太古のロマンを感じてほしい

▼櫻井和彦館長

櫻井館長は、これまで首長竜などの海生爬虫類しか展示していなかったため、“恐竜博物館”と言われるたびに、内心では「本当は違うんだけど……」と、思っていたと言います。今回の発見で、堂々と恐竜博物館を名乗ることができるようになりました。

▼楽しく学べる穂別博物館

7月から10月にかけて国立科学博物館で開催される「恐竜博2019」に、むかわ竜の全身骨格化石が展示される予定です。穂別博物館でも拡張工事などを行い、立体的な骨格標本のレプリカの常設展示を計画しています。太古のロマンを感じてください。

むかわ町穂別博物館
所在地:北海道むかわ町穂別80番地6
電話:0145-45-3141
入館料:小学生から高校生100円(10人以上50円)大人300円(10人以上200円)
※小学生未満は無料
開館時間:9時30分~17時00分 (最終入館 16時30分)
休館日:月曜日・祝日の翌日・年末年始

北洋銀行沼ノ端支店(ヌマノハタ)

所在地:苫小牧市拓勇東町4丁目3番15号
電話:0144-57-7321