静内市街を一望できる新ひだか町「真歌公園」の楽しみ方

日高管内最大の人口を誇る新ひだか町静内。その街を高台から一望できるビューポイントがあります。それが真歌公園の展望台です。静内の街並み、眼下を流れる静内川、そして太平洋を独り占め。日高管内でも指折りの眺望スポットです。真歌公園には他にも見どころがたくさん。その楽しみ方を紹介します。

あのシャクシャインが最後の砦とした高台

真歌公園は静内市街から国道235号の静内橋を渡り、真歌地区へ通じる「はまなす坂」を約1㎞上っていくと左手にあります。面積は26.3ヘクタール。

真歌山展望台

展望台は、真歌公園駐車場から歩いて5分ほど西、静内川左岸の断崖の上に建つ木製展望台です。真歌山にあることから真歌山展望台とも呼びます。標高80mほどの高さで、見下ろすと崖の下を静内川が太平洋にそそいでいます。河口には、その川に架かる国道235号と日高本線の鉄橋、両岸緑地に架かる人道橋が見られます。川の向こう側には静内市街地が広がります。

真歌山展望台からの眺望(太平洋側)
真歌山展望台からの眺望(中央)
真歌山展望台からの眺望(山側)
真歌山展望台から見る静内川
真歌山展望台から見る静内市街
真歌山展望台から見る静内市街(静内駅方向)
真歌山展望台から見る静内川河口付近

これほど近くでワイドに静内の街を俯瞰できるのは真歌公園展望台くらいです。静内の街って意外と大きいんだな、と実感できること間違いなしです。展望台は西向きなので、夕日が沈む時刻も美しく、夜景も楽しめます。

2019年12月のリニューアルで屋根が撤去される前の展望台施設(2014年9月)
新ひだか町静内地区が一望できる案内板

木製展望台が設置されている高台は、シベチャリチャシ跡(城砦跡)またはシャクシャイン城趾として紹介されています。あの「シャクシャインの戦い」(1669年)で知られるアイヌの首長シャクシャインが砦としていた場所なのです。シャクシャインが最後の砦とした場所がこのシベチャリチャシでした。(寛文九年蝦夷の乱の舞台になった。)

シャクシャイン城址の碑は1959年8月に建立された
シベチャリチャシ跡の看板

展望施設のあるシベチャリチャシ跡は、深さ1mほどの壕が1本あります。展望台に通じる散策路に小さな橋が架けられているのはそのため。かつては3本の壕があったといわれています。1997年12月2日に「シベチャリ川流域チャシ跡群」の一つとして国の史跡に指定されました。

公園内には遊具も設置されている

静内灯台近くにもチャシ跡が?!

静内灯台

真歌公園から海側に進むと静内灯台が建っています。高さ12mで、1967年11月に初点灯した灯台です。

この灯台近くまでは車で行くことができるのですが、この灯台から150mほど歩いた先に「ホイナシリチャシ跡」があります。先に紹介したシベチャリチャシ跡と同様「シベチャリ川流域チャシ跡群」に指定されたチャシ跡のひとつです。

ホイナシリチャシ跡

このチャシは「入舟のチャシ」とも呼ばれ、シャクシャインが築いたチャシと考えられています。1959年に静内高校郷土研究部が発掘調査を行い、その際に鉄鍋や漆器、鹿角などが出土しています。シベチャリチャシ跡からは海側に200~300mほどしか離れていない距離ですが、草木に覆われているため見晴らしは比較的よくありません。

国指定史跡「シベチャリ川流域チャシ跡群」は今回紹介した真歌公園の2つのチャシ跡のほか、静内目名のメナチャシ跡、オチリシチャシ跡、ルイオピラチャシ跡が含まれており、いずれもシャクシャインの戦いに関係するのだそう。この真歌公園は眺望のよい高台だったこともあり、他にも数々の遺跡が確認されています。

アイヌ文化学べる拠点に

アイヌ民俗資料館とシャクシャイン記念館

公園駐車場付近には乗馬体験施設「ライディングヒルズ静内」(2001年10月1日開設)があり、初心者向けの乗馬教室が開かれています。覆馬場という屋内運動場、丸馬場、角馬場、トレッキングコースが設けられています。

また、新ひだか町アイヌ民俗資料館とシャクシャイン記念館が仲良く並んで建っています。

シャクシャイン記念館

アイヌ民族の貴重な資料を展示する「シャクシャイン記念館」(入場無料)

シャクシャイン記念館は、北海道の先住民族の文化財を保存し、民俗文化の交流や研修など幅広く利用できる施設として、1978年10月23日竣工しました。鉄筋コンクリート平屋建て340平方メートルで、大広間、展示室、和室などで構成されており、アイヌのコタンを再現したコーナーも目を引きます。

アイヌ民俗資料館

貴重な資料を展示する「アイヌ民俗資料館」(入場無料、冬期休業)

アイヌ民俗資料館は、アイヌの人々の生活・風俗・習慣などを歴史的、文化的に正しく理解してもらうことを目的に、1982年11月30日に竣工し、翌1983年6月5日に開館しました。

館内は展示室A・Bに分かれており、木造外洋船イタオマチプ復元、獣を捕獲する仕掛け、アワ・ヒエ・イナキビといった植物、ゴザ類、交易によって手に入れた刀・ガラス玉・漆器の食器・着物類などアイヌの民具約600点を収蔵、約150点を展示しています。中でもエゾオオカミの頭骨は、大英博物館など世界に3つしか残っていないという貴重な品で、2006年に町指定有形文化財になりました。

入口のアイヌ野草園は、静内地域の海岸から山地にかけて自生する植物を集めています。フクジュソウ、スズラン、ハマナス、コクワ(サルナシ)、ムラサキシキブなど四季折々の花が咲きます。

アイヌ民俗資料館入口に隣接するアイヌ野草園(マウタ・ミンタラ)

シャクシャイン像とユカルの塔、イレンカの塔

イレンカの塔(左)と新シャクシャイン像(右)

アイヌの英雄シャクシャイン像は1970年9月15日、シャクシャイン顕彰会により展望台近くに建立しましたが(1976年、町に寄贈)、2018年9月20日に老朽化のため町により撤去。同月23日、新ひだかアイヌ協会が別の場所に新たなシャクシャイン像を建立しました。また、ユカルの塔も建っています。

右手の山杖を高く掲げる初代シャクシャイン像(彫刻家竹中敏洋デザイン、強化プラスチック製、高さ3.5メートル、全高4.2メートル)とユカルの塔(2014年9月)
旧シャクシャイン像のアップ(2014年9月)
初代シャクシャイン像が撤去された場所とユカルの塔
オンカミ(拝礼)する姿をイメージした新シャクシャイン像(ブロンズ製、台座付き高さ約4メートル)
新シャクシャイン像のアップ。黒谷美術が製作した

同公園では1959年8月9日に第一回シャクシャイン祭り及びイオマンテ(熊祭り)が行われました。毎年9月23日、「シャクシャイン法要祭」が開催されており、アイヌ民族の古式舞踊などを見ることができます。

アイヌ文化を知ることができるゾーン

公園ではシャクシャイン・メモリアルゾーンの整備が検討されており、野外型の祭礼やイベントの場としての活用が期待されています。既存のアイヌ民俗資料館とシャクシャイン記念館を複合化して建て替えることが検討されています。また、ポロチセ、ポンチセ、ペペレセツ(小熊の檻)、プ(倉)などコタンを再現するエリアが整備されることも検討されています。

真歌公園展望台で、眺望を楽しむとともに、歴史を学ぶ機会としてみるのはいかがでしょうか。

※本稿は2015年に公開した記事のアップデート版です。