まるで車輪のような奇岩がある!根室花咲灯台の天然記念物「車石」

まるで車輪のような岩が目の前にあったとしたら……。その車輪がいまにも音を立ててまわり出しそうだとしたら……。

根室市花咲岬には、まさにそんな勢いを感じる奇岩があります。世界的にも貴重なホイールストーン、いわゆる「車石」です。

国指定天然記念物(1939年9月指定)、根室市の根室十景にも選ばれている車石とはどんな岩なのでしょうか。なぜこんな岩ができあがったのでしょうか。

直径6メートルにも及ぶ美しい放射状節理の岩

車石のある根室市花咲岬は太平洋に突き出した海食崖の岬です。花咲岬の駐車場から灯台を過ぎ、遊歩道を歩いて海岸を目指すと、まず見えてくるのがお目当ての「車石」です。

▼駐車場から灯台を目指し

▼遊歩道を進むと車石に到着

車石は下半分が地面に埋まっているかのように見えます。車輪というよりはドーム形と呼んだほうがわかりやすいでしょうか。その直径は6メートルにも及びます。これほど大きな車石は世界的にも珍しいとされています。

注目すべきは、柱状の割れ目が中心から外側に向かって放射状に広がる模様です。これを専門用語では放射状節理と呼びます。どのようにしてこのような形の岩ができあがったのでしょうか。

車石はどのようにして出来上がったのか

車石の成り立ちを探るうえで、周辺にある岩が参考になります。花咲灯台の海岸にある岩はどれも黒っぽく角ばって見えます。実はこれ、地中のマグマが冷えて固まってできた粗粒玄武岩で、車石と同じ成分でできているのです。

このあたりの岩々ができあがったのはおよそ6000万年前の白亜紀。1000度という高温のマグマが海底付近で急激に冷やされてできた枕状溶岩といわれています。節理と呼ばれる割れ目の筋が付くのは、溶岩が急激に冷やされ収縮するためです。表面が急冷された後、まだ溶けている内部にも海水が先端から侵入して急冷するため、その過程で車石と呼ばれるものを多数生み出します。

今も、崖の下側には丸太を積み重ねたような構造の「枕状溶岩」と、その上側を覆うように上下方向に節理がみられる「シート状溶岩」とをはっきり区別できます。

▼下の層は枕状溶岩、その上を「シート状溶岩」が覆う

よく見てみると、6メートルの車石のほかにも1~2メートル程度のミニ車石を幾つか見つけられることでしょう。車石は、溶岩が海底に流れ出て固結したときの状態をそのまま今に伝えているのです。(場所によっては海岸まで降りられますが、急な崖やごつごつした岩で滑りやすいため注意してください)

散策しながら花咲の自然に触れてみて

車石のある海岸からは、西側に花咲港を、天気が良ければ東側に友知島を、正面にユルリ島やモユルリ島を望むことができます。

▼日本の灯台50選のひとつ花咲灯台

花咲岬にある花咲灯台は「日本の灯台50選」(1998年11月海上保安庁公募)に選定。1890年11月に初めて点灯され1951年に改築された灯台で、塔高は10mあります。周辺は公園として整備されているので、遊歩道を歩きながら車石をはじめとする花咲の自然に触れてみてはいかがでしょうか。

参考文献:『道東の自然を歩く』