北海道東部の釧根エリアに広がる根釧(こんせん)台地は、ほぼ平坦な台地形状であるため、高い場所に上ると地平線がどこまでも続くパノラマシーンに出合えます。
その根釧台地の展望スポットといえば、中標津町の「開陽台展望台」や標茶町の「多和平」、弟子屈町の「900草原」が定番ですが、実はそのほかにも絶景の展望塔や、観光ガイドにも載っていないような穴場展望地があるのです。
景色も台地形状もそれぞれ、根釧台地の広さを実感する「八景」をご紹介します。
屈斜路・摩周・阿寒の火山噴火で、火山灰が降り積もった根釧台地
はじめに少し、根釧台地の成り立ちや広さについて触れておきましょう。根釧台地は屈斜路・摩周・阿寒の火山噴火による火山灰が降り積もってできた台地です。
屈斜路火山が最大級の噴火を起こしたのが約12万年前。そして2万年前からは阿寒火山群が、続いて1万数千年前からは摩周火山も活動を始めました。
このように気が遠くなるほどの長い期間、たび重なる噴火によって大量の火山灰が降り、広さ約5,000平方キロメートル、標高100~200メートルという日本最大級の台地が作られました。
根釧台地は釧路川より東側とされ、西端の弟子屈町や標茶町から始まり、中央部は別海町や中標津町、そして東端はオホーツク海に接する標津町まで広がっています。一方南端は太平洋に面する厚岸町や浜中町に至るなど、根釧台地は釧路・根室全体の約52%を占めています。
これは東京都がまるごと2つ以上入る広さ。そうたとえると、規模の大きさを想像できるのではないでしょうか。ではいよいよ、各眺望スポットを紹介します。
(1)~(3) 定番3スポット
(1) 開陽台展望台(中標津町)
(2) 多和平(標茶町)
(3) 900草原(弟子屈町)
(4) 思わず歓声!地上30メートルの「標津サーモン科学館」展望室
エレベーターを降りた瞬間、誰もが「うわぁ!」と声を上げてしまうのがここ。知床半島のほぼ付け根、標津町の標津サーモンパークでそびえる「標津サーモン科学館」の展望室です。
360度をぐるりと見渡せ、北海道の東端部から根釧台地の全貌を遠くまで望むことができる、とっておきスポット。なにしろ地上30メートルと八景の中でも群を抜く高さですから、景色の迫力も満点です。
釧根台地の反対側、東方面には知床連山や北方領土国後島を眺望でき、2~3月には根室海峡を埋める流氷が見えることもあります。
▼根釧台地東端から西方向を展望
▼遠くに見える根釧台地の北部エリア
所在地:北海道標津郡標津町北1条西6丁目1番1-1
電話番号:0153-82-1141
開館時間:9時30分~17時(入館受付は16時30分まで)
休館日:5~10月は無休、2~4月・11月は毎週水曜、祝日の場合は開館し翌日休
開館期間:2月~11月(12月と1月は休館)
入館料金:一般610円、シルバー500円、高校生400円、小・中学生200円
公式サイト
(5) ただただ美しい、「新酪農村展望台」から見渡す緑の大平原
▼高さ約10メートルの「新酪農村展望台」
根釧台地の中央部、別海町にある「新酪農村展望台」は、大規模な酪農地帯と大平原を眺望できる鉄塔です。国道から離れているため訪れる人はそう多くありませんが、人工物がほとんど目に入らない360度の景色は圧巻!
別海町役場から国道243号で南東方向の上風連方面へ4.6キロメートルほど進むと、右手に「新酪農村展望台」への案内板と道路が出てきます。この道が新酪道路で、一帯は新酪農村と呼ばれるエリア。1973年からの国家事業により入植と整備が行われ、当時は世界に誇る近代酪農地帯として注目を集めました。
新酪道路へ入り約4.7キロメートル進むと「新酪農村展望台」に到着します。茫洋と広がる草原に、ぽつんと立つ鉄製の展望塔。頂上に立って目に飛び込んでくるのは、計画的に造設された酪農地帯と自然が織りなす光景です。美しさに息を飲んでいると、耳元を風の音がよぎります。
▼「新酪農村展望台」から浜中町方向を望む
▼新酪道路も絶景ドライブコース
時間に余裕があるなら、帰りは来た道を戻らず、そのまま新酪道路を南方向へと走り、上風連方面へ出るのも一興。数キロ、ヨーロッパを思わせる草原ドライブを楽しめます。
所在地:北海道野付郡別海町別海396-7
問い合わせ先:0153-75-2111 別海町役場産業振興部商工観光課
利用期間:春~秋(冬季は凍結と積雪で危険なため利用は不適)
入場料:無料
公式サイト
(6) 放牧牛を見下ろす「茶内酪農展望台」は寄りやすさ抜群
▼パーキングエリアの緑地帯にある「茶内酪農展望台」
根釧台地の中央南部、浜中町の「茶内酪農展望台」はJR茶内駅より約3キロメートル東の国道44号沿い、茶内駐車場にあります。駐車スペースは大型車用を含め30台ほどと広々。敷地内にはトイレや食堂、売店もあるので、休憩かたがた立ち寄りやすいスポットです。
このように気軽な場所に併設されてはいますが、この鉄製の展望塔はなかなか高く、頂上までの階段の数は112段。しかし急こう配ではなく階段幅もゆったりとしているので、子ども連れファミリーも元気にチャレンジしています。
▼放牧中の牛たちも伸びやか
▼浜中町らしい牧草地と防風林の景色
頂上は360度の景観。酪農のまち浜中町らしく、牧草地と防風林が模様を描く独特の風景が広がります。放牧地に牛が点在する光景を上から見渡せる機会はそうそうありません。
(7) 登山客しか知らない超穴場、「武佐岳駐車場」から見える地平線
こんなところに、こんな展望地があったとは! そう感激するのが中標津町の武佐岳駐車場。ここは武佐岳の登山道入り口で、広い駐車スペースやトイレも設けられているので気兼ねなく眺望を楽しめます。
開陽台より2キロメートルほど東にあり、視界は180度。開陽台ほどはっきりとは格子状防風林を見ることはできませんが、目の前には牧草地が迫り、背後から森林の息吹に包まれる秘境感はたまりません。
▼右手に開陽台が見える
▼広々と開けている武佐岳駐車場
念のためクマよけの鈴を持参して、穴場中の穴場で根釧台地を独り占めしてください。
所在地:北海道標津郡中標津町武佐
問い合わせ先:0153-77-9733 なかしべつ観光協会
利用期間:春~秋(6月第2日曜の山開き以降が安心)
入場料:無料
公式サイト
北19号沿い武佐岳入口のマップコード 658 154 173*23
武佐岳駐車場マップコード 658 183 670*58
グーグルマップを参照する場合はクテクンの滝を目指して進行。北19号から折れて約1.7キロメートルの地点にある案内板から右折して道なり。この道は途中からダート道となり、右折してからは、荒れた坂道もあるので降雨の後などは立ち入りを控えるのが無難
(8) 知る人ぞ知る「萩野高台」から望む、根釧台地西部と母なる山々
▼折り重なる丘は根釧台地西部の特徴
ついなにげなく通り過ぎてしまう国道243号ですが、この道の標茶町虹別市街地から弟子屈町へ5キロメートルほど進んだ標茶町萩野には、あまり知られていない景勝ポイントが存在します。
それはちょうどNHKテレビ中継施設があるあたり、「萩野高台」と呼ばれる小高い丘です。
景勝地として整備されているわけではありませんが、両車線に駐車帯が設けられているので休憩をかねて車を止め、南方向を眺めてみてください。いつもは見過ごしていた、多和平方面の丘陵地を見ることができます。
西の向こうには阿寒の山々が連なり、北西を見れば西別岳や摩周岳のシルエット。これら阿寒山系や摩周山系の山々は、噴火によって根釧台地を形成した山。そう思って眺めると、根釧台地の壮大な物語が伝わってきそうな……。
▼多和平方面の向こうには阿寒の山々
▼北西方角には摩周岳と西別岳
夏季、運が良いと摩周岳の外輪山から霧があふれ出てくる幻想的なシーンに出合えることもあります。
以上6町にわたる、根釧台地を眺望する八景でした。見比べも楽しい八景めぐりですが、根釧台地はとにかく広い! ぐるりと周遊すると300キロメートルは軽く超えるので、時間とルートの計画を立ててお出かけください。