地元の人々に愛され続ける名物料理、それは地元の宝もの。小樽にも、そんな宝ものがあるという話を聞きました。20年以上前に生まれた「きまり丼」です。そのおいしさは評判となり、大人気になりましたが、10年ほど前に惜しまれつつ提供が終了。それが2年の時を経て、違う店で復活しました。そのいきさつとは、そしてその丼とはいったいどういうものなのでしょうか。
伝説的な名物丼「きまり丼」
きまり丼は、JR函館本線南小樽駅の北、約200m、歩いて2〜3分の場所にある食堂六味庵(ろくみあん、以降六味庵)で提供されている名物丼です。ご飯の上に目玉焼き2つが乗り、そこに甘辛のタレが絡んだ豚バラ肉とキムチが乗っている、食べる前に「これ絶対旨いやつ!」と誰もが思うであろう丼ぶりです。
▼食堂六味庵
このきまり丼、今では六味庵の看板メニューとして知られていますが、元々は「金太の金太」という店で出されていたメニューでした。今から20年以上前に、オーナーの大坂紀雄さんが考案したものです。
▼金太の金太のオーナー大坂紀雄さん
金太の金太は焼き肉店で、当時はランチもやっていました。肉体労働を生業にしているお客さんが多かったため、ガツンと胃袋にくるランチメニューを作ろうと思ったのがきっかけでした。大盛りのご飯の上に目玉焼きを2個乗せ、豚バラ肉とキムチを乗せた丼にすることに。しかし、タレがなかなか決まりません。何日も何日も試作を続け、ようやく決まった丼だったため、名前を「きまり丼」にしたのだそう。
▼これがきまり丼
苦労してできあがったきまり丼は、噂が噂を呼び、小樽の名物丼と呼ばれるようになりました。しかし、10年ぐらい前にランチを辞め、ファンからは惜しまれつつきまり丼の提供は終了したのでした。
「きまり丼」の復活
きまり丼が復活したのは今から約8年前のことでした。大坂さんと以前から親交があった阿部智恵子さんが、食堂を出すことになったのです。何か店の顔になるメニューがあった方がいいから、きまり丼を出してみては、と大坂さんが薦めたのだとか。「昔から味を大切にする人だということを知っていたからね」と大坂さんはおっしゃいます。
そして、六味庵のオープンと共にきまり丼が復活したのでした。
▼六味庵のオーナーの阿部智恵子さん(右)と昼間の手伝いをしている藤井優子さん(左)
藤井さんには、きまり丼を復活させた上で守っているルールがあります。それは、冷凍ではなく、生の豚バラ肉を使うこと。生を使うとコストはかかりますが、やはり冷凍肉では出せない豚本来の味が出るのだとか。
▼豚バラ肉の塊
もうひとつのルールは、豚バラ肉は炭火でじっくり焼くということ。余分な脂が落ちるのでさっぱりおいしくいただけるし、炭火の独特な香りが肉に付いて、より味わいに深みが出るのだそうです。
▼豪快に炎を上げながら焼く
また、決め手となるタレも、大坂さんからレシピを引き継ぎました。それを忠実に守りながら、継ぎ足し継ぎ足し使っていっています。
▼醤油ベースの秘伝のタレ
こうして復活したのが六味庵のきまり丼なのです。
▼きまり丼は味噌汁がセットになって800円(税込)
店のオープンからきまり丼は人気メニューになりました。多くの人がきまり丼を注文します。昔から知っていて久しぶりに食べたと喜ぶ人、はじめて食べてそのおいしさに感激した人など、お客さんによってそれぞれですが、きまり丼は着々とファンを増やしつつあります。金太の金太で伝説となったメニューが、新たに六味庵で伝説をつくる日もそう遠くはなさそうです。
所在地:北海道小樽市住吉町8-18
電話:0134-33-0955
営業時間:11時〜20時
定休日:日曜日
金太の金太
所在地:北海道小樽市花園3-7-3
電話:0134-24-3183
営業時間:月〜土 17時〜0時、日祝 16時〜0時
定休日:不定休
(2022年6月8日追記:営業時間・価格を変更しました。)