「ジンギスカン」という言葉はもはや全国に知れ渡っています。ではここで少しおさらいを。ジンギスカンとはそもそもなんでしょうか。その歴史は? タレは?
道民に愛されるジンギスカン
ジンギスカンとは羊肉を使った焼肉・バーベキュー料理のことです。とにかく道産子にとってジンギスカンはきってもきれない重要な関係。
道産子は小さい頃から北海道独特の家庭料理であるジンギスカンを食べ育ち、すんなりとジンギスカンを好きになります。だから焼肉とかバーベキュー……ったら当たり前のようにラム肉を持っていったり……それが普通のことになっています。道外の人にとって見たら羊肉の独特の臭みがいやでいやでたまらないという人が多いのも事実です。
特に、春の桜の時期になると、花見と称してジンギスカンを開催する家庭もあります。例えば、札幌市の円山公園では開花シーズンに合わせて花見をしながらジンギスカンを楽しめるよう、火気使用を認めています。
ジンギスカン花見しますか?調査してみました
北海道ファンマガジンでは2006年4~5月にかけて、花見をしながらジンギスカンを楽しんだ経験があるかどうか調査をしました。
アンケート名:花見(桜)ジンギスカン経験調査
アンケート実施期間:2006年4月~5月
アンケート実施開始日:2006年4月24日
アンケート実施終了日:2006年5月22日
対象地域:全国
回答総数:551
設問:「花見(桜)しながらジンギスカン」をしたことある?
選択肢1:道民:ある!(256件・46.5%道民の77.6%)
選択肢2:道民:ない!(74件・13.4%道民の22.4%)
選択肢3:道外:ある!(53件・9.6%道外の24.0%)
選択肢4:道外:ない!(168件・30.5%道外の76.0%)
集計したグラフは以下の通り。
ジンギスカンの地、北海道。そして桜の花見をしながらジンギスカンという習慣が道民に広く定着していることを伺い知ることができる結果に。北海道では77%ほど、おおかた経験したことがあるようです。2割の道民は未経験となっています。花見自体あまりしないということも多いですしね。
道外では、北海道とまったく逆の結果になっています。2割ほどは経験していますが、道内出身者も含まれることを考慮すべきです。また、このアンケートでは76%で未経験です。ジンギスカンブームが道外でもおこっているようですが、「花見にはジンギスカン」という風習は一般的ではないということになります。
北海道に来た旅行者が一番美味しいと回答!
北海道の一番美味しい料理とは何か―。そんな疑問に対する答えが出ました。北海道で一番美味しかった料理1位にジンギスカンが選ばれたのです。
調査したのは楽天株式会社(東京都)。2014年12月25日、「北海道に旅した人が選ぶ!北海道・旅めしランキング」を発表しました。調査は楽天トラベルが北海道の宿泊施設に宿泊した道外からの旅行者を対象に実施したもの。2013年11月末から1年間に北海道を旅行し宿泊した人たちを対象に、2014年12月5日~9日にかけてアンケートを実施し、総数1852票を得ました。道内在住者ではなく、道外からの旅行者が対象であり、北海道の料理を外から見た感想であるという点に注目したいところです。
結果は、「ジンギスカン」が454票を得て堂々の1位。2位の「寿司」254票を200票近い差をつけてトップに輝きました。海産物が多い中で、トップの「ジンギスカン」を筆頭に、5位に札幌の新名物「スープカレー」、7位に十勝発祥の「豚丼」、9位にシンプルながら素材そのものの美味しさが楽しめる食べ方「じゃがバター」がランクインしています。
1位 ジンギスカン (454票)
2位 寿司 (254票)
3位 海鮮丼 (148票)
4位 ウニ丼 (138票)
5位 スープカレー (135票)
6位 茹でカニ (99票)
7位 豚丼 (96票)
8位 イカ刺し (75票)
9位 じゃがバター (68票)
10位 ウニいくら丼 (65票)
トップに輝いた北海道の郷土料理「ジンギスカン」はなぜ道外の旅行者から支持されたのでしょうか。その理由として(1)素材の新鮮さ、(2)コストパフォーマンスの良さ、が挙げられるといいます。アンケート結果では、「お肉が柔らかくジューシーで、ついつい食べ過ぎてしまう」「独特のクセや臭さもない」「手軽な価格で楽しめる」「他都府県とは味や量が全く違う」といった意見が寄せられていました。
特に、北海道を10回以上訪れている旅行者の7割がジンギスカンを支持しました。いまやジンギスカンは首都圏の専門店でも食べることはできますが、それでも、やはり北海道に何度来ても食べたくなる、北海道ならではの料理として人気を得ていることが判明したのです。
ジンギスカンの肉の種類。マトンとラムの違い
ラム、マトン。この言葉はどういう意味かご存知でしょうか? 生後1年未満の子羊のラム肉は、生後1年以上のマトンよりもやわらかい肉で、なおかつくせが少ないのでジンギスカン=ラムという方程式が成り立つほど、ジンギスカン料理ではほとんどラム肉を使用します。
ちなみに、ホゲットという言葉を使うとき、それは生後1年以上2年未満とし、マトンを生後2年以上と分類します。ラム>ホゲット>マトンの順番になります。
なべは、真ん中が盛り上がっている特有のジンギスカンなべを使い、肉こそ違いますが焼肉のやり方は普通のカルビなどの焼肉とほぼ一緒です。野菜としてたまねぎは必ず入れたい材料です。最後はうどんなんかを入れて味付ジンギスカンの余韻を楽しみます。
ジンギスカンにはダイエット効果がある?
羊肉の成分は以下のとおりです。タンパク質、ビタミンB2、鉄分、これらは豊富に含まれています。ビタミンA、B1、ナイアシン、必須アミノ酸、カルニチンといったものも含まれます。脂肪が少なめなのもよいところ。
羊肉は他の食品に比べてこの「カルニチン」が豊富なので(豚肉の9倍、牛肉の3倍)、脂質の代謝を促進させて効率よく体脂肪を燃焼させ、またコレステロール増加も抑制するというメリットもあるのです。つまりつまりダイエットや体重コントロールに役立つのはもちろん、生活習慣病予防にも貢献してしまうんです。
鉄分も豊富なので、貧血にも効果があります。ジンギスカンなら、健康のためにも良い食品といえます。ジンギスカンに合わせて緑茶を飲むのもオススメとされています。そうすると、より脂肪の燃焼が活発になされます。
ジンギスカンの歴史
日本に羊肉料理がやってきたのは日本の歴史の中でも比較的最近のことで大正時代。それが北海道の家庭に普及したのは昭和初期のころで、メンヨウの飼育だけではなく食用として広まりました。ジンギスカンといえば北海道というイメージがありますが、実は本州でも見られるようです。いずれにしても北海道でジンギスカンが広く普及しているのは事実です。
名付け親は、1977年毎日新聞社北の食物誌によると、南満州鉄道株式会社の調査部長であった駒井徳三さん。勘のいい方ならおわかりかと思いますが、あのチンギスハンをイメージして命名したとか。料理自体は、中国の羊肉料理を応用したものです。
もともとは、軍服用として羊毛を生産するために羊を道内で飼育し始めました。それは1918年のこと。それまでは輸入でしたが、それが戦時下において不可能になり、国内で生産することになったわけです。種羊場は道内では札幌市月寒、滝川市に設置されました。
それに乗じて、手に入りやすい羊を有効活用して、北海道版羊肉料理が誕生したというわけです。戦前の1931年に文献に初登場、1936年に札幌でジンギスカン鍋料理試食会があったことから、このあと普及していったことが分かります。
戦後、そうした下地の上、肉料理の中では低料金で食べられるものであったこと、名前のインパクトが強いことから、道内で普及したと考えられています。戦後は羊飼育数は減少していきますが、輸入の羊肉を使っていて、今もジンギスカンは道民の食文化に欠かせません。
さて、北海道内で普通のことのように食べられているジンギスカン。羊肉といってもどこ産というのがもちろんあります。道民にジンギスカンの肉といえばどこのが一番?と聞いたらたいてい滝川の「松尾ジンギスカン」!という答えが返ってきます。
認知率98%を誇る松尾ジンギスカン
松尾ジンギスカン。ジンギスカンをこれから食べてみようという人は基礎知識として覚えておきましょう。あるアンケートでは北海道内の認知率が98%と言われています。まさに知らない道民はいないといっても過言ではない有名ブランド松尾ジンギスカンです。
その松尾ジンギスカン、創業の昭和31年以来ずっと変わらない味を提供し続けてきています。なにがそんなに道民にうけて人気が高いのかというと、「結論。うまいから!」ということになります。うまいという一言に尽きますね。どんな秘密が隠されているのでしょうか。
まず食材の厳選です。豊富な経験を持っているだけでなく羊肉への深い情熱を持ったベテランの職人さんが見つけ出したクリーンでヘルシーな羊肉にこだわっているからです。
脂身が少ないのに、やわらかい肉が魅力です。脂肪分をひとつひとつ手作業で丁寧に取り除いて、赤身だけを厳選している特上ラム肉なのです。口にしたときの柔らかさはもちろんのこと、かんだときの口の中で広がる肉汁のジューシー感もたまりません(道民の皆さんはこの表現だけでよだれが出てきますので……)。
2つ目に秘伝の生タレ。10年間の歳月をかけて生み出した松尾ジンギスカン独自の秘伝のタレは、羊肉独特の臭みを消し、うまみを引き出すのです。りんごとかたまねぎをベースに独自のスパイスを効かせている秘伝のタレがうけたというわけです。
NHKが取材してもゼッタイに秘伝の生たれを明かしません。そして安全性や味へのこだわりは、合成着色料や保存料を一切使わないというところにも現れています。
ジンギスカンのタレは味付き?後付け?
スーパーの肉のコーナーにはゼッタイにラム肉のコーナーがあって、味付、つまりタレにつけられた真空パックのジンギスカン、そして普通の生肉でパック詰めされたものの2種類が置いてあります。
スーパーなどで市販されている円筒状のラム肉は、味付けはまったくされていません。その代わり、上のほうに白い塊が2つ入っています。これが、あぶらです。鍋にまずそれで脂を塗りつけてから焼き始めます。
一応、北海道の地域によってはタレは焼いた後じゃないとやだ!っていうところもあれば、味付のジンギスカンを好む場合とがあります。それは育った家庭環境によって変わってきますが、味付じゃないラム肉を買ったときは「ジンギスカンのタレ」も買わなければなりません。
特に松尾ジンギスカンのある滝川を中心とした道北内陸部はタレが先です。根釧、道南、道北沿岸部(利尻礼文除く)はタレが後ということになっているようです。
ジンギスカンのタレといえば、北海道では二大メーカーがあります。まずは「ベル食品」の「成吉思汗のたれ」。1956年に発売されました。もう一つは1951年設立の「ソラチ」の「ソラチ特選ジンギスカンのたれ」。旧満州で生活していた日本人が満州で作っていたたれを芦別市に持ち帰ったのがはじまりです。
たれは羊肉の臭みを消すために様々な材料を用いています。ショウガやニンニク、トマト、タマネギ、洋ナシ、モモなど果実や野菜類を多く用いています。特にソラチに関しては、野菜をタレに入れて熟成させてみると、コクと深みと甘みがあるたれに仕上がったそうです。
ジンギスカンのタレは味付き派?後付派?調査しました
北海道ファンマガジンでは2006年9月~10月にかけてジンギスカンタレアンケートを実施しました。
アンケート名:ジンギスカンタレアンケート
アンケート実施期間:2006年9月
アンケート実施開始日:2006年9月16日
アンケート実施終了日:2006年10月2日
対象地域:全国
回答総数:854
設問:ジンギスカンのタレは後付け派?それともタレ付(先に付いている味付)派? あなたの好むほうをチェックしてね!
選択肢1:道民:タレ付き派(232件・27.2%・道民42.0%)
選択肢2:道民:後付け派(178件・20.8%・道民32.2%)
選択肢3:道民:両方好き(143件・16.7%・道民25.9%)
選択肢4:道外:タレ付き派(93件・10.9%・道外30.9%)
選択肢5:道外:後付け派(116件・13.6%・道外38.5%)
選択肢6:道外:両方好き(92件・10.8%・道外30.6%)
道民・道外の大差は特にありませんでしたが、タレ付き派のほうが若干多い北海道であります。逆に道外では後付け派のほうが若干多いようです。
広まるジンギスカン普及運動
ジンギスカンは北海道では普通に広まっていますが、道外にも知名度を高めたいとのことでいろいろな運動が展開されています。「ジンギスカン食普及拡大促進協議会」は2003年11月に設立され、「ジンギスカン新聞」の創刊・発行など様々なところで活動しています。
「北海道がおいしい、ヘルシー、風土ランド・ジンギスカン新聞」は、2004年2月7日に札幌市で開催されたさっぽろ雪まつりで制作しました。2005年2月さっぽろ雪まつりにて創刊、以後1年2回ほど発行しており、2007年2月に第5号、2008年4月に第7号、2009年4月には第9号を発行しています。これはジンギスカンに関する情報が掲載されているフリーペーパーです。
4月29日が「羊肉【よーにく】」にちなんで「羊肉の日」とされたのもつい最近のこと。2004年3月23日にこの日が日本記念日協会に正式に認定されました。2004年10月22日には「北海道遺産」のひとつとして認定されました。このころ、首都圏でもジンギスカンがブームとなりました。2007年12月には「農山漁村の郷土料理百選」にも選ばれました。
2003年11月18日には北海道食文化フォーラム「ジンギスカン」が札幌市羊ヶ丘で2005年9月17日には札幌市羊ヶ丘で第1回「ジンギスカンサミット」が開催されました。同じころ、「ジンギスカン大使」が発足しPRにつとめています。