ハスカップという植物をご存知でしょうか。北海道勇払原野には大規模な群生地があり、様々なスイーツに活用されているので、北海道ではよく知られています。平野部において、国内では北海道でしか見られません。
ハスカップとはどんな植物なのでしょうか。どんな栄養が含まれているのでしょうか。収穫方法や加工方法は? ハスカップ栽培が盛んな胆振管内厚真町のハスカップ農家で話を聞きました。
ハスカップとは?
スイカズラ科スイカズラ属の植物。「クロミノウグイスカグラ」と呼ぶかもしれませんが、少なくとも道内では「ハスカップ」がメジャー。
名前の由来がアイヌ語であることはあまり知られていません。アイヌ語の「ハシカプ(枝の上にたくさんなるもの)」をそのまま読んだものです。アイヌ語「エノミタンネ(細長い実)」に由来する「ユノミ」とも呼ばれてきました。
国外ではサハリンやシベリアなど寒い地域で自生し、国内の道外では、高山植物で、標高の高い場所にしか生育しないものの、道内では平野部でも見られます。特に千歳を中心とする勇払(ゆうふつ)平野には多く自生しています。千歳ではかつて一面ハスカップが豊富に自生していたといいます。苫小牧市では市の木の花に指定しています。
低木で、高さ1m~背丈ほど。そんな樹木には、7月ごろ熟すと青紫色の実をたくさんならせます。実の形は楕円形で、長さは1~1.5cmほど。イメージとしては、ブルーベリーを思い浮かべるとわかりやすいでしょう。
いろいろな品種改良がなされており、「ゆうふつ」などあります。栽培用では、1992年に道立中央農業試験場が選んだ「ゆうふつ」が使われてきましたが、2010年には新品種が登録。それは「あつまみらい」「ゆうしげ」の2品種です。
ハスカップの実は栄養満点!
ハスカップの実は実は酸味が強くすっぱい。でも一列に並んで栽培されているハスカップの実は、甘さが多くなるように品種改良されています。その実についてアイヌでは「不老長寿」とされてきました。
また、ビタミンC、ビタミンE、カルシウム、鉄をはじめとする多種多様な栄養を含みます。特にビタミンCは、100gで50mgと、果実の仲間の中では突出しています。アントシアニンは目に良い働きをします。
ハスカップの収穫法
ハスカップ栽培地として知られているのは、前述の国内最大の自生地でもある勇払平野(=ゆうふつ、苫小牧・厚真・安平・千歳エリア)をはじめ、美唄、名寄、富良野美瑛など。1978年に試験栽培を開始し、道内で110トン程度しか生産できません。
実の収穫は手作業ですので時間がかかります。ハスカップの実はデリケートで、熟していると薄皮がつぶれて紫色の果汁が手につくこともあります。実を片手の親指と人差し指で優しく挟み、力を入れずにひねるとぽろっととれます。
ハスカップ農家では農作業として収穫されるほか、ハスカップ栽培が盛んな厚真町などでは「ハスカップ狩り体験」を楽しむこともできます。
ハスカップファーム山口農園(厚真町)によると、ハスカップの木は、枝分かれの根元から数粒ずつ三段に実がなります(不作の年になると二段くらいにしかならないこともあります)。
収穫のコツも伝授していただきました。新芽が伸びながら花芽が付くので、一番根元に近い取りづらい部分の実のほうが、最も味が乗ります。したがって、一番取りやすい手前の方は酸っぱいのです。収穫の際は、(1) なるべく日があたる面で (2) 黒々とした大粒のもの (3) 奥の根元のものを収穫するとよいと指南します。なお、実一粒は末端価格10円くらいになります。
ハスカップの活用法
実だけを収穫した後は、生だと長期保存できないため、急速冷凍して保存しています。ハスカップの一大産地の胆振管内厚真町では、塩漬けや酢漬けとして食べたり、おにぎりにハスカップを入れて食べたりしています。
つぶして加工した後は、ハスカップジャム、ジュース、アイス、シロップ、ゼリー、酒になるのがメジャー。「いろはす(ハスカップ味)」は北海道限定販売されています。千歳市の製菓「もりもと」はハスカップを積極的に採用してスイーツなどを開発しています。苫小牧近郊では、苫小牧市の菓子舗「三星」の銘菓「よいとまけ」にも使われています。
美唄では「ドラキュラの葡萄」という果汁液が販売されています。厚真町ではハスカップ寿司、ハスカップおにぎり、ハスカップクレープ、元観光協会事務局長が2017年頃にハスカップ果汁100%のザラメ糖を使って開発した「ハスカップ綿あめ」などがあります。
ハスカップは北海道ではなじみの深いベリーズです。北海道に来た際はお土産にハスカップ加工食品、お菓子などを手に入れてみるのもおすすめですよ。