五稜郭で公演を続けて30年―函館市民が創作する「函館野外劇」

創立100周年を迎える北洋銀行と結びつきの強い道内主要都市の話題をお伝えする100周年連載。今回は函館からお届けします。

函館には夜景やグルメ以外にも数多くの名物があります。今回は毎年7月から8月にかけて行われる「市民創作 函館野外劇」をご紹介します。「劇」を野外で上演するだけでも十分ユニークですが、函館野外劇には知っておきたいエピソードがたくさんあります。他に例を見ない取り組みとして国内で数々の賞を受賞している、函館野外劇の歴史と魅力を探ります。

そもそも函館野外劇ってなに?

函館野外劇は、国の特別史跡である五稜郭を舞台に函館の歴史を再現する壮大な歴史絵巻。ペリー提督率いる黒船の来航や五稜郭築造、土方歳三が奮戦した箱館戦争など、函館で起こった歴史的な出来事とそこで懸命に生き抜いた人々の姿が次々に描かれます。

本格的な舞台照明はもちろんのこと、本物の馬が走り、本物の火薬を用いた鉄砲・大砲が鳴り響くなど、野外劇ならではの迫力ある演出が魅力です。

▼黒船を率いて箱館に上陸したペリー提督と、それに応対する松前藩の役人の一場面

▼五稜郭の完成を象徴する場面。五稜郭の設計者・武田斐三郎とコロポックルたちが函館野外劇のテーマソングを歌う

いつどのように始まったの?

函館野外劇は、地元カトリック教会の司祭だったフランス人宣教師フィリップ・グロード神父(故人)の提唱がきっかけで始まりました。五稜郭商店街を活性化させるアドバイスを求められたグロード神父は、自らの生まれ故郷で行われている「ル・ピディフ野外劇」を引き合いに、五稜郭でも函館地方の歴史をテーマとした野外劇を始めてはどうかと提案したのです。

これを受けて市民有志がさっそくフランスへ視察に。2年後の1988年夏に、初めての市民創作函館野外劇として12日間の公演を行いました。以来毎年夏に五稜郭公園で公演を続けており、今年でなんと30年目の節目を迎えます。

どのように運営されているの?

発足当初より、函館野外劇は多くの市民ボランティアによって支えられています。現在はNPO法人化された市民創作「函館野外劇」の会が主催・運営を行っていますが、この方針は変わっていません。劇の出演者に加え、受付や会場整備、衣裳、小道具、効果係など、運営にかかわるスタッフはすべて市民のボランティア。その数は1公演あたり250名以上にも上ります。

ペリー提督や土方歳三など主要キャストについては、毎年春先にオーディションを行って選考し、その後何度も練習を積んで夏の本番に備えます。

こうした市民手づくりの運営体制と芸術性の高さが評価され、これまでに「北海道ふるさと大賞」(1997年)や国土交通省「手づくり郷土賞」(2006年)、JTB交流文化賞「審査員特別賞」(2011年)など、数々の名誉ある賞を受賞しています。

ちなみに、ペリー一行を迎える町人役などのエキストラは、公演日の18時頃までに申し出ると当日飛び入りでも参加することができるとか。参加することで、もっと魅力に触れることができますよ。

▼多くの市民ボランティアに支えられて迎える壮大なフィナーレ

観劇するにはどうすれば?

その年の上演スケジュールは公式サイトに掲載されるので、函館旅行に野外劇観劇を組み入れたい場合はまず日程を確認しましょう。2017年は7月14日(金)から29日(土)までの毎週金曜・土曜と8月11日(金)・12日(土)の計8日間の開催が予定されています。公演時間は19時30分から20時40分の約1時間。野外劇のため雨天の場合などは中止になる場合があります。

当日券は大人1,500円、学生(高校生以上)800円、小中学生400円ですが、お得な前売券や、親子チケット(前売りのみ)もあります。前売りチケットは函館市内プレイガイドや五稜郭タワーチケット売場で購入できますが、事前に函館野外劇公式サイトの「チケット予約」のページから申し込むこともできます。ネット予約の場合は、当日に会場入口のチケット売り場で代金を支払います。

さまざまな困難に何度も襲われながら、そのたびに不死鳥のようによみがえった函館。その歴史をわかりやすく再現した「市民創作 函館野外劇」を観劇した人は、「函館のことがますます好きになった」と口をそろえます。この夏に函館を訪れる予定のある方は、ぜひ「函館野外劇」鑑賞を予定に組み込んでみませんか?

「函館野外劇」の会事務局からのコメント「今年は節目の第30回公演。楽しい企画で皆さまをお待ちしています。意外に知られていない北海道の歴史が約1時間で楽しくわかるので、夏の一夜を函館公演で過ごしてみませんか タクシーやマイカーなどの交通手段を使えば、野外劇を観てから函館山の夜景見学をすることも十分可能です」

函館野外劇公式サイト