ここは網走市台町。住宅街でひっそりと営業している、隠れ家カフェがあると聞いてやって来ました。開店しているのは火曜・水曜・木曜の週3日。しかも営業時間は18時30分~22時ころまで。知る人ぞ知る、夜のカフェです。
そのカフェは、夜景を望むアパートメントのペントハウスにあるという
住所をたよりに、大きな道から小さな道へと入り。潮の香りを感じながら坂道を上がっていくと、「アパートメントアップラ」を見つけました。「ノームカフェ」はここにあるらしい。
▼「ノームカフェ」があるアパートメントアップラは、網走市第一中学校の西隣
▼この階段の先に「ノームカフェ」があるという
「ノームカフェ」があるのは3階となっていますが、階段を上がりながら階数を数えると何階か分からなくなるので、とにかく屋上を目指して行ってみます。
▼階段を上りきると、網走市街の夜景が目前に
屋上に着いたら着いたで、あるのは小さな建物のみ。「ここでいいの?」と少し不安になりますが、安心して扉を開けてください。店長の石原基(もとえ)さんが優しい笑顔で迎えてくれます。
▼屋上のペントハウスに灯。ここなの?
▼近付いてみると小さく「GNOME cafe」の表示。ここだ!
大きなテーブルと、多彩なインテリアに囲まれる癒し空間
店内には大きな木のテーブルが一つだけあり、その周囲にはぐるりとベンチが配されています。知らない人同士が隣り合うこともありますが、それでも気兼ねなく過ごせるアットホーム感が特徴。時代も国籍もアート性も幅広い、多彩なインテリアが並ぶ空間で、ここちよくくつろげます。
▼「ノームカフェ」の店長、石原基さん。左は店名由来の妖精ノーム
▼黄昏前の店内。営業は火曜・水曜・木曜の18時30分~
▼窓の向こうは夜のオホーツク海。流れているのはFMあばしり
▼ノスタルジックな装飾品が多数
▼店内のインテリア一つ一つにストーリーがある
いろんな意味で涙目になる。伝説の喫茶カレーを再現した「GNOMEカレー」
石原さんが「ノームカフェ」をオープンしたのは2015年の6月。縁あって運営することとなった「アパートメントアップラ」にペントハウスが付いていたので、「せっかくだからそこで、趣味で作ってきたカレーを出そう」とカフェを始めたのでした。
ところで、石原さんが長年かけて作り続けた趣味のカレーとは? それは古き良き1980年代。当時の札幌市東区に、今も伝説として語り継がれる「カントリー」という喫茶店がありました。そしてそこのカレーが甘さの後に辛さが来る絶妙なうまさ。30年前の青年たちを魅了していたのでした。
石原さんが約10年追求しているカレーとは、「喫茶カントリー」のカレーをオマージュしたものです。「ノームカフェ」の看板メニュー、辛さ×10の「GNOMEカレー」900円として提供されています。
▼「ノームカフェ」の看板メニュー、「GNOMEカレー」
石原さんが「喫茶カントリー」カレー愛と、ここに至るまでの経緯を語ってくれました。
「大学時代、喫茶カントリーは北19条東1丁目にあってよく通いました。大学を卒業して網走市に勤務するようになっても、カレーを食べに札幌まで足を運んだものです。『喫茶カントリー』はその後、東区の伏古に移転しましたが、それからもしばしば行っていたのですが……」
20年ほど前に久しぶりに訪ねたところ、閉店したのか「喫茶カントリー」は姿を消していたそうです。しかしあのカレーの味が忘れられない。「ならば自分で再現しよう」と思い立ち、石原さんのカレー道が始まったのでした。
「レシピなどないので、自分の記憶だけがたよりです。80年代に特殊な調味料は使っていないだろうと予測し、カレー粉を数種とトウガラシ約10種でベース作りを。そこに網走産ビートシロップのカラメルソースを加えるなどして、独特の味に近づけてきました」
▼「GNOMEカレー」のチキン。甘さと辛さの調和が絶妙
石原さんがSNSで「カントリーのカレー再現に取り組んでいる」と発信すると、かつてカントリーに通っていた人々がポツリポツリと訪れるようになりました。そのたびに感想を聞いては改善を図り、本家の味に追随すべく終わりなき道を歩んでいます。
「昨日、来てくれたカントリーファンの方には、『これ、かなり近いよ』と言ってもらえました」と、笑顔を見せる石原さん。
カレー追求はもはやライフワークですし、「GNOMEカレー」は確かにお店の顔なのですが……。もっとも注文されないメニューが「GNOMEカレー」なのだとか。辛さ×10ですから、普通の人はちょっと敬遠するようです。
激辛派ではないけれど、渾身の「GNOMEカレー」を味わってみたい。そう思う方は、「GNOMEカレー」をベースとしながら辛さをやや軽減した、辛さ×5の「GNOMEキーマカレー」から挑戦してみてはいかがでしょう。
GNOMEのプレートメニューは、野菜サラダとおかずが満載
「GNOMEカレー」など8種あるプレートメニューはオール900円で、360度どこから見てもインパクト大! キャベツだけで120グラムはある山盛りサラダと、お手製のおかずが8種ほど添えられます。
ドレッシングやマヨネーズは、熊本県の老舗製油店から取り寄せる「しらしめ油」を使って手作りするなど、細部にまで愛情とオリジナリティが詰まっています。ごはんの量を、大盛、普通、少な目から選べることも好評。だから仕事帰りの常連客が、晩ごはんを食べに足繁く通うことにも納得します。
▼本日の気まぐれプレート。ごはん少な目バージョンでも、おなかいっぱい
▼大きなマグカップにたっぷり入ったコーヒー
コーヒーは、網走市の自家焙煎コーヒー店、「はぜや珈琲」の豆を使用。1杯500円で、食後や2杯目だと300円。夏季には5~6種のフルーツで作る「デザートスムージー」600円もお楽しみに。
「ノームカフェ」は夜営業のカフェですが、メニューにアルコール類はありません。その理由は、屋外階段を上り下りする際、飲酒をしていると危険だから。石原さんの気遣いです。
長崎県雲仙市とコラボした、「網走ちゃんぽん」も味わえる
網走市には、日本最北のちゃんぽん「網走ちゃんぽん」があり、石原さんは、その「網走ちゃんぽん研究会」の会長。「ノームカフェ」でも「網走ちゃんぽん」が提供されています。
「網走ちゃんぽん」とは……。日本一の焼きちくわ作りで網走市と長崎県雲仙市が競い合ううちに交流が生まれ、2011年に雲仙市から来た訪問団が「雲仙市の名物、小浜ちゃんぽんを網走市の食材で作ってみただろうだろう」と、試作したことから誕生した料理です。
雲仙小浜ちゃんぽん用スープをベースに、オホーツクの食材で作る。網走産の魚肉加工食品を具材として使う。「網走ちゃんぽん専用麺」を使用する、などのルールがあり、両地の交流で生まれたちゃんぽんなので、ご当地ならぬ「ご両地ちゃんぽん」と銘打たれています。
▼「網走ちゃんぽん」を作る石原さん
「網走ちゃんぽん」の専用麺は、網走産を中心とした北海道産小麦が原料。ラーメンの麺よりも2まわりほど太く、もちもちとした食感が特徴です。仕上げに麺をスープで煮るのが作法で、麺がスープを吸いぷっくりとおいしくなります。
「ノームカフェ」の「網走ちゃんぽん」800円は、網走産シジミに同じく網走産のなるとやちくわのうま味がとけた深い味わい。プラス50円でカレーのトッピングもOKです。
▼やはり野菜たっぷり。「ノームカフェ」の「網走ちゃんぽん」
▼「網走ちゃんぽん」を出す店は、「ノームカフェ」を含め現在6軒
テラスルームのハンモックで揺らぎながら、夜景を見るもよし
「ノームカフェ」の建物の隣にはテラスルームも併設されています。希望すると、ここで夜景を見ながら食事やドリンクを楽しむことができますし、このスペースを借り切ってパーティーもできます。パーティーの場合に限り、カフェ営業をしていない曜日や時間でも利用できることがあるのでご相談を。
▼ハンモックがあるテラスルーム
またパーティーの際は、飲み物の持ち込み自由で、この時だけはアルコールの持ち込みも可能です。くれぐれも足元には気をつけて。
いかがでしたか? 隠れ家度が極めて高い「ノームカフェ」に、たくさんのストーリーと魅力が隠れていて驚きましたね。営業日も営業時間も限定されていますが、網走に行ったら「ノームカフェ」で隠れ時間を過ごしてみませんか。
所在地:北海道網走市台町3丁目7-4 アパートメントアップラ3階
電話:070-1259-5779(石原)
営業日:火曜・水曜・木曜(臨休する場合があるので事前確認が安心)
営業時間:18時30分~22時ころ(LO21時30分)
公式サイト
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