ガリガリ流氷を削り進む流氷砕氷船『ガリンコ号Ⅱ』で流氷観光の最先端へ

【紋別市】 冬のオホーツクの楽しみといえば流氷観光が筆頭に挙がる。1月下旬には網走・紋別などで流氷初日を迎え、2月の流氷観光最盛期に突入する。はるかかなたから北海道のオホーツク海沿岸に押し寄せてくる流氷。その自然の力をただ見るだけでなく、体で体感できてしまうのが、紋別市で運航する流氷砕氷船『ガリンコ号Ⅱ』という流氷観光船である。

流氷観光船といえば、網走市の『おーろら』と紋別市の『ガリンコ号Ⅱ』の二つがある。今回紹介する『ガリンコ号Ⅱ』は赤いボディーが魅力。船体前方にドリル(スクリュー)が付いており、流氷を文字通り削りながら進むため、その振動や揺れが体に伝わってくる感動を味わうことができるのだ。

そもそもガリンコ号Ⅱとは何なのか

その名の通り、流氷をガリガリと砕いて進む船である。これに乗って、流氷を間近で観察することができる。正確には「ガリンコ号Ⅱ」が正解である。初代ガリンコ号が実在していたというわけだ。

初代ガリンコ号は1981年12月三井造船製造で、アラスカ油田開発実験用に造船(名前は「おほーつく」)したが、その後、世界初の流氷砕氷観光船として1987年2月1日に紋別市でデビューした。初代ガリンコ号のスペックは、長さ24.9m、幅約7.5m、39t、定員は32名(後に2階部分を設置し70名)。8万人を乗せて活躍し1996年3月10日をもって現役を引退、現在は海洋交流センター(ガリンコ号ステーション)向かいの広場に置かれている。興味ある方はそこものぞいてみると良いだろう。

現代の三井造船製造ガリンコ号Ⅱは、その初代ガリンコ号の後を継いで1997年1月20日に就航した。初代に比べると、より観光向きになったのと、総トン数が4倍の150tに、全長が10m伸びて35mに、速度も3倍になったし、定員は195名に、ボディーは全身赤色になった。幅は7m、最高速度は9.5ノット、アルキメディアンスクリューは4本から2本になったが、砕氷能力が向上した(厚さ60cmまで可能)。流氷砕氷船の特徴は、このネジのように回転するスクリューが船首の海水面に斜めに取り付けられており、流氷の上から船の重さも利用して氷を砕き進む。

ガリンコ号Ⅱの予約から乗船まで

ガリンコ号Ⅱは完全予約制のため、前日までにオホーツク・ガリンコタワー株式会社(0158-24-8000)へ事前予約が必要だ。予約状況はホームページで確認のこと。運航便は、9:00、10:30、12:00、13:30、15:00の5便と、2月の最盛期には早朝6:00、16:10も加わる。どれに乗船したいか伝える必要がある。そして、海上は想像以上に芯から冷えるため、厚着の準備をしておくことをお勧めする。

▼ガリンコ号Ⅱ乗り場付近で。▼右:オホーツクタワー

当日は、出航時刻の15分前までに、紋別市中心部南東にあるガリヤゾーンというエリアの海洋交流センター(ガリンコ号ステーション)の窓口で乗船券を購入しておく。近くに、海底水族館と流氷を学べる施設「オホーツクタワー」もあるのだが、この2つは両方一緒に見学するようにオススメする。なぜならお得な料金セットがあるからであり、流氷とオホーツク海の魅力を堪能できるからである。ガリンコ号は冬季は大人3000円、オホーツクタワーは800円だが、2つ共通券だと3500円で利用できるのでお得だ。

▼乗り場にあるオブジェの数々

ガリンコ号Ⅱが見える館内ロビーで乗船案内があるまで待つ。乗船時刻になったら、乗船場の階段を登り、船の2階から乗り込む。港内は小さな氷ぷかぷか浮いていることもある。これから始まる流氷観光に期待が高まる。

▼港に浮かぶ小さな氷。▼右:前方のスクリュー部分

沖合に向けて出港―体に伝わる振動が流氷の力を物語る

▼出航直後は流氷がないことも。▼右:北海道遺産に選定されている。

流氷は必ずしも海岸沿いにあるとは限らない。毎日流氷の位置は簡単に移動する(時速2kmのときもある)。流氷の性格だから、こればっかりは当たり外れがあるだろう。ただ流氷期間中は基本的に流氷を見れる。流氷が沖合いに移動していて海岸から全く見えなくても、そのときはガリンコ号Ⅱは気を利かせて沖合い5~10kmまで行ってくれる。

▼流氷帯でも場所や見る方向によって大きさも密集度も形も違う

流氷帯までは全速力で航行し、流氷に入る直前で速度を落とすようになっている。流氷帯では、流氷に乗っかって砕くため、上下左右に激しく揺れるし、振動がからだに伝わってくる(甲板にいる場合は振り落とされないように手すりなどにつかまろう)。ガリンコ号Ⅱは大きな流氷にも果敢に突撃し、一度で砕けなければ一度後退して再チャレンジすることだってある。でっかくて白い流氷が砕け散ってゆらゆらと浮かぶ様は、見ていて飽きないものである。流氷上にアザラシ、オオワシやオジロワシといった鳥類を見られることもあり、その都度船内アナウンスも流れる。

▼操舵室。▼右:船内案内

ガリンコ号の船内は2階建て構造になっており、外に出ることができる甲板のある階の前方には、ちょっとした長いす付き部屋がある。その前は船員の部屋になっていて、操舵の様子を見ることができる。船員はよく双眼鏡を手に流氷海域を見ている。船の前方が階段部分になっており、下の階に降りることができる。

下の階は完全室内であり、座席がたくさん配置されているほか、ちょっとした売店(温かい飲み物や土産品など販売)もある。一番前の船首室はガラス張りで、スクリューが砕氷している様子を間近で見物できる。外にずっといるのはしんどいから、小まめに室内に入って流氷観光を楽しむのもいいだろう。

沖合に行き、流氷の力強さを実感する。これこそがまさに流氷観光の最先端。真髄。浜辺からでは分からない。実際に観光船に乗って感じた人でなければ分からないその魅力を一度でもいいから感じていただきたい。

ガリンコ号Ⅱ
北海道紋別市海洋公園1番地
TEL:0158-24-8000
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