JR江別駅から南西へ、直線距離にして約700メートルのところに「四季のみち」と呼ばれる遊歩道があります。地元の人々にとっては、ランニングしたり犬を散歩させたりベンチで休憩したり、何かと日常の中に溶け込んでいる様子のこの遊歩道。なんでも、江別・北広島秘境100選に選出され、2016(平成28)年には江別市都市景観賞特別部門賞も受賞しているのだとか。一体どんな道なのか、実際に歩いてみました。
まずは遊歩道の成り立ちから
「四季のみち」はもともと、北海道電力旧火力発電所が稼働していた時代、石炭を運び込む石炭車のための引き込み専用線路でした。この引き込み線はJR江別駅と高砂駅の中間あたりから分岐して、スイッチバックで石炭車が導かれていました。やがて火力発電所は閉鎖。それに伴い、当然のことながら引き込み線も廃止の運命を辿ります。
そんな引き込み線に新たな息吹を吹き込まれたのが、1991(平成3)年から1993(平成5)年のこと。約2年の月日をかけて整備され、遊歩道「四季のみち」として生まれ変わったのです。
▼遊歩道の途中には、こんなオブジェも(写真提供:江別観光協会)
遊歩道の幅は18~30メートル、JR函館本線の少し北側にある起点からほくでん総合研究所前まで、約1.6キロメートルほどの道のりです。その名の通り春・夏・秋・冬それぞれの四季をテーマにしたゾーンに分かれており、まさに四季折々の風景が楽しめる散策路です。また、途中にはさまざまなオブジェが飾られていたり、石炭車の専用線路跡地だったことを彷彿させるようなものが展示されていたり、この遊歩道ならではの特徴があるのも見逃せないポイント。
▼秋には見事な紅葉が、行く人の目を楽しませる(写真提供:江別観光協会)
さて、百聞は一見にしかず。さっそく歩いてみましょう。
実際に遊歩道を歩いてみる
遊歩道の起点には、分かりやすく看板が立てられています。
▼ちょっと消えかかった部分はご愛敬
起点のすぐ右側には、江別出身の歌人、伊東音次郎の歌碑があります。歌を詠みつつ、まずは国道12号まで続く春のゾーンへ。春になるとライラックやヤマザクラといった花が咲き誇るなど、花・香の樹種を主体に用いた、明るい構成の遊歩道です。子どもたちのための木製遊具も設置されており、親子で訪れても楽しめそうです。
▼天気のいい日はベンチに座るのも気持ちいい
「四季のみち」の中で一番長いのが、国道12号から3番通まで続く夏のゾーン。ハルニレやヤマハンノキなど、夏の日射しを遮り、緑陰をつくる樹種を用いる工夫がされています。また、ヘイケボタルの繁殖地として整備されているのも、夏のゾーンの大きな特徴です。残念ながら今ではホタルは見られないそうですが、敷き詰められた枕木が独特の風情を醸し出しています。
▼このゾーンにだけ敷き詰められた枕木
3番通から3丁目通までの秋のゾーンは、かつてここが火力発電所の石炭車専用線路跡地だった歴史を感じられる場所。歩いていると、目の前に大きなディーゼル車やタービンなどが現れ、かなりのインパクトを与えてくれます。
▼役目を終え、味わい深い雰囲気のディーゼル車
秋のゾーンで楽しめる樹種は、ナナカマドやカエデなど。言うまでもなく秋になると紅葉し、ロマンチックな空間を演出してくれます。
▼秋には紅葉とタービンの珍しいコラボが実現!?
3丁目通から4丁目通にかけての冬のゾーンは、主に針葉樹を用いて構成されています。イチイやトウヒといった木々が、白い雪とのコントラストを見せてくれるというわけです。彫刻家・山谷圭司による「冬のゆりかご」など、展示されているオブジェさえも冬にちなんでいるところに芸の細かさを感じます。
▼山谷圭司作「冬のゆりかご」
いかがだったでしょう? 「四季のみち」という名に恥じない、春・夏・秋・冬それぞれのゾーンに施された工夫が、四季折々の楽しみを演出しているということが、お分かりいただけたのではないでしょうか。もちろん、この遊歩道の本当の楽しみは、実際に歩いてみてこそ。ここでは紹介しきれなかったオブジェや詩碑などもたくさんあるので、ぜひ訪れてみてください。