稚内市民に愛されるソウルフード「チャーメン」って何?

【稚内市】 たこしゃぶやホッケなど海産物が美味しい最北の街・稚内。その稚内に、地元に住む人や出身者以外にはあまり知られていないB級グルメが存在する。それが「チャーメン」。稚内には数えきれないほどのチャーメン提供店が存在し、ソウルフードとして市民に愛されているが、その発祥についてはいまだ謎が多い。今回はそんなチャーメンの魅力と謎に迫る。

そもそもチャーメンとは?

チャーメンとはそもそも何なのだろうか。漢字では「炒麺」と書く中華料理の一つである。見た目は具をふんだんに使ったあんかけ焼きそば。中華麺については、茹でた後、炒めたり焼いたり揚げたりと、バリエーションは地域や店によって様々である。

チャーメンという名の料理は、日本国内ではごく限られた地域でしか食べることができない。道内では室蘭市、岩内町といった港町で出しているお店があるが、数はそれほど多くない。1958年に始まった室蘭市の北京亭は、炒めた塩焼きそばのことをチャーメンとし、あんかけをかけたあんかけチャーメンと区別する。岩内町でも数店舗が提供しているが、あんかけをかけた焼きそばをチャーメンとしている。

一方、稚内市には、その比ではないほどの数のチャーメン提供店舗が存在する。あんかけ焼きそばと同じとしているお店も一部あるものの、チャーメンとして別メニューを設定しているお店が圧倒的に多い。値段は750円~850円程度が多い。

▼稚内のチャーメン

▼メニューにもしっかり「チャーメン」と

稚内のチャーメンの特徴は、というと、(1)中華麺は茹でた後にフライパンで焼いたり(揚げたり)して焼き色を付ける、(2)野菜や海産物など数多くの具をたっぷり使ったあんをかける、(3)味は塩や醤油が多く選べる、(4)ボリューム満点。あんかけ焼きそばとチャーメンの違いは何か?というと、炒めるか焼くか、と言うこともできる。

▼麺を炒めるか焼くかの違い。一部はカリッとしている(味の角さんのチャーメン)

稚内市民に聞く、チャーメンの美味しいお店はどこ?

稚内市民に聞いてみると、チャーメンって何?という人と、ソウルフードだと言いきる人にわかれる。とはいえ、稚内ではチャーメンが広まっており、地元ではほとんどの人が知っている状況だ。当たり前すぎて、チャーメンは全国にあるメニューだと思っている市民もいるほど。

チャーメンをメニューとして出しているのは中華料理店や食堂やラーメン店など。特に、稚内といえばラーメンということもあり、稚内市民は、老若男女問わずファミレス感覚でラーメン店に行くのだが、そこでチャーメンに接することになる。しめはラーメンより○○店のチャーメンが食べたい!となるのが稚内市民だそうだ。

具体的には、最強とされる「味の角さん」を筆頭に、「ラーメン広宣」「大王本店」あたりが人気だとか。他にも「食堂よしおか」「味の大番」「活・海鮮レストラン夢広場」「わっかないラーメン」、穴場では「稚内グランドホテル」を挙げる人も。

地元の人が選ぶ、稚内チャーメンの美味しい店

「味の角さん」(稚内市中央1丁目5-30・0162-23-3565) [地図]
醤油味のあん。麺の焼き加減が絶妙という老舗中の老舗。利尻昆布使用。

「ラーメン広宣」(稚内市中央2丁目8-18・0162-23-2526) [地図]
醤油味のあん。しっかりと焼いた麺とたっぷりの具が特徴。

「食堂よしおか」(稚内市中央2丁目7-7・0162-22-6364) [地図]
醤油味のあん。麺は硬めで油が少なめ。

「大王本店」(稚内市中央3丁目16-26・0162-23-7766) [地図]
塩または醤油のあん。絶妙な麺の硬さにこだわる。女性にちょうどいいサイズ。
「味の大番」(稚内市港1丁目2-21・0162-23-7360) [地図]
味噌味のチャーメンも提供する数少ないお店。
「稚内グランドホテル」(稚内市大黒2丁目8・0162-22-4141) [地図]
知る人ぞ知るホテル・レストランのチャーメンもうまいと定評。

チャーメンを出しているお店では、酢が置いてあるか、または出てくるので、まず一口はそのまま食べ、そのあとに酢を入れて食べるのがツウの食べ方らしい。是非ご参考いただきたい。

なぜ稚内でチャーメンが広まったのか?

このように稚内で根付いたチャーメンだが、発祥はどこか、なぜここまで広まったか、何店舗で出しているのかなど、謎は多い。

稚内のチャーメンの発祥地については、2つの説が有力とされる。(1)約20年以上前に閉店した「香蘭(コーラン)」(現在の香蘭ビル、地図)で始まり弟子が広めたという説、(2)現在も営業する人気店「味の角さん」を起源とする説、である。

香蘭については、既に店主は亡くなっており定かなことは言えないが、塩で炒めて酢も出してくるのは、ここから始まったとされている。一方、味の角さんは「先代が戦後に店を始めた。うちがチャーメン発祥だと思う」と話している。

▼香蘭ビル

▼味の角さん

前者は塩ベース、後者は醤油ベースであることから、現在稚内で主流となっている塩と醤油のチャーメンは両店が源流に近いといえるのかもしれない。そして、港町ゆえに漁師や船乗りに愛され広まっていったと考えられる。いずれにしても、両店とも、古くから栄えた稚内中央町に位置していることから、この地区が発祥地だという点では概ね意見が一致しているようだ。

▼稚内市中央町地区

稚内市料理飲食店組合によると、市内全体では約20店前後がチャーメンを出しているというが、同組合加盟店以外についてはわからない部分も多く、最終的には相当な数にのぼるという。担当者は「2013年夏に一度調査をしたことがあるが、実数については未知数で結局わからなかった」と話す。チャーメンを稚内のB級グルメとして売り出そうとする動きもあるが、まだ具体的な実現には至っていない。

謎に包まれているとはいえ、最北の地で市民に愛されていることに変わりはないソウルフード「チャーメン」。あんかけ焼きそばとは別物として、一度食べて比べてみていただきたい。

※店舗数に関して事実誤認があったため一部訂正いたしました。2014/5/10