道内各地の特産品や地場産業の話題をお伝えする連載、「北洋銀行のこの街紹介」。今回は安平町からお届けします。
北海道ではじめてチーズ工場が誕生した地として知られている安平町。北海道のチーズといえば、今や全国的に有名ですが、その起源を探るべく、安平町とチーズの歴史を紐解いていきましょう。
町のシンボル、チーズを復活させる!
▼「遠浅(とあさ)工場」と呼ばれ親しまれたチーズ工場(写真提供:雪印メグミルク株式会社 酪農と乳の歴史館)
安平町とチーズの歴史が始まったのは、1933(昭和8)年。現在の雪印メグミルク株式会社の前身である北海道製酪販売組合が、この地に本格的なチーズ専門工場を作ったのがはじまりです。雪が少なくチーズづくりに適した冷涼な気候であったことが、決め手となりました。
▼ゴーダチーズが作られている様子(写真提供:雪印メグミルク株式会社 酪農と乳の歴史館)
初年度は、ゴーダチーズとエダムチーズの製造を、翌年にはプロセスチーズの生産を開始しました。
▼プロセスチーズが作られている様子(写真提供:雪印メグミルク株式会社 酪農と乳の歴史館)
本格的なチーズづくりは日本のみならずアジアでも珍しく、その先駆けとなった安平町の工場は、やがて町のシンボル的存在となっていきました。ところが1985(昭和60)年、製造規模の拡大に伴い手狭になった工場は、道東の大樹町へと移転します。52年間にわたって築かれてきた町とチーズの関係は、このまま絶えてしまうものと思われました。
しかし、もう一度チーズの灯をともしたいと立ち上がった人がいたのです。チーズの製造販売を手がける有限会社プロセスグループ夢民舎(ムーミンシャ)の宮本正典さんです。
▼夢民舎のチーズ工房
宮本さんと志を同じくする町内の酪農家、畑作農家など“夢見る民”が集まり、工場移転からわずか5年後の1990(平成2)年、夢民舎は誕生しました。雪印でチーズ製造に携わっていた技術者によって開発を進めたものの、生乳供給の難しさなど、順風満帆というわけにはいきませんでした。それでもカマンベールに照準を絞った狙いが的中し、徐々に知られるようになっていきました。こうしてチーズの灯は途絶えることなく、現在にまで受け継がれているのです。
▼チーズがずらり並ぶ圧巻の風景
夢民舎を代表する商品が、カマンベールチーズ。早来地区の牧場で摂れた新鮮な生乳のみを用いた「カマンベールはやきた」です。なめらかでクリーミーな舌触りと奥行きのあるコク、癖のない味わいが特徴です。
▼人の手で丁寧につくられていくカマンベールチーズ
また、夢民舎から独立した、チーズ工房角谷(かくや)の「角谷さんのカマンベール」も誕生し、現在の安平町はまさにチーズの町として再び盛り上がりをみせています。
▼雪景色のチーズ工房角谷
実際に食べて、そのおいしさを知ってほしい
人の手で愛情を持ってつくられたチーズは、本当に美しい輝きを放っています。
▼「カマンベールはやきた」の神々しい姿
インターネットなどでお取り寄せすることも可能ですが、やはりその地で、フレッシュなチーズを味わってみたいものです。そんな時には、ぜひ安平町にある「レストランみやもと」に立ち寄ってみてください。
▼夢民舎直営店「レストランみやもと」
実はこのレストラン、宮本正典さんの奥さまである富子さんが経営する、夢民舎直営店なのです。
▼宮本正典さんと富子さんご夫妻(写真提供:夢民舎)
ここで食べられるのは、たとえばこんなお料理。
▼写真を見ているだけでお腹が鳴りそう!
ハンバーグにカマンベールチーズがとろりと乗った、誰もが虜になってしまいそうなメニューです。
もちろん、なかなか現地まで行くことができないという人は、お取り寄せでも十分にその魅力を堪能することができます。
▼カマンベールはやきた
▼角谷さんのカマンベール
チーズ好きな人は、ぜひ安平町の名前を覚えておいてください。町の人々の情熱が一度は消えかけたチーズの灯を再びともしたように、きっとその情熱は、もっともっと広がっていくはずです。そして、いつしか日本の誰もが「安平町といえばチーズの町」として認識するような日が来るかもしれません。
北洋銀行 沼ノ端支店
所在地:北海道苫小牧市拓勇東町4丁目3-15
電話:0144-57-7321
取材協力
所在地:北海道勇払郡安平町早来大町95番地
電話:0145-22-2511
所在地:北海道札幌市東区苗穂町6-1-1
電話:011-704-2329