里山復活でホタルを繁殖!長万部町「ほたるの里山」で1000匹が乱舞する

夏の夜の風物詩となれば、花火とホタルが挙げられるでしょう。半世紀前までは豊かな自然が多く、夏には当たり前のようにヘイケボタルを見ることができました。しかし、最近ではホタルが生息できる環境が激減しているので、ホタルを見たことがない方も多いのではないでしょうか。

そんな中、ホタルを復活させようと各地で様々な取り組みが行われております。特に有名なのは、沼田町でしょう。道南の長万部町では、個人の方が20年以上の活動を通して、ホタルを自然のままの状態で繁殖させることに成功しています。

ホタル鑑賞できる遊歩道を毎年無料で開放し、多くの人が儚くも美しい光を自然の中で楽しめる「ほたるの里山」。どのようなところなのか見に行ってみました。

1000匹を超えるヘイケボタルの乱舞

場所は長万部町蕨岱(わらびたい)。
隣接する黒松内町に近く、国道5号から脇道へ入り1kmほど走ったところにあります。国道5号を函館方面から来ると右側に小さな看板がありますので注意して確認してください。

「ほたるの里山」は個人の土地を無料開放している場所で、いつでも見に行くことができます。車を3~4台停められるスペースがあります。入り口看板や遊歩道にはロープや誘導灯が設置してあるので、夜でも気をつけてゆっくり歩けば初めての方も安心して楽しめます。

森の中へと通じる遊歩道は約250m。奥へ進むにつれ水の流れる音が聞こえてきて、それに合わせるように、宙を舞うホタルの光が見えてきます。

小川沿いに飛び交うホタルの数は1000匹を越える数。しばしたたずむと自分の肩や頭をかすめて飛ぶものや、腕や差し出した掌へ留まるものもいます。

ホタルの光の数に圧倒するだけでなく、ホタルがまとわりついてくるという現象に、子供達だけでなく大人でもついつい声をあげ、その優雅に舞う姿に魅了されます。

▼しばしたたずむと自身の周りにもホタルが飛び交う

もともと生息していたホタルを自然のまま復帰

「ほたるの里山」は、長万部町で写真館を営む小泉幸雄さんが、自身の土地で全てを管理されており、写真館のお仕事がない限りほぼ毎日 夕方から、初めて来た方を無償で案内しています。筆者も取材で何度か通いましたが、毎回迎えていただきました。

▼「ほたるの里山」代表の小泉幸雄さん

小泉さんは、写真館経営で数十年間休みも満足にとれない忙しい毎日だったことから、休養と気晴らしを兼ねて実家の畑作業を始めます。実家の目の前にある沢にホタルが生息していることは以前から知っていたので、畑作業の傍ら生い茂る笹を刈り、自身や親戚、友人達と鑑賞を楽しむようになりました。

同時に、昔から生息しているホタルを増やすことはできないか思案するようになり、1996年5月5日に「ホタルの自然復帰の促進と生態と飼育の研究、生息環境の保護及び生息地拡大」を目的とした、「長万部ホタル自然復帰研究会」を発足することになります。

その後噂が広まり「ほたるの里」として一般にも開放することにし、観光協会のウェブサイトに掲載されたり新聞やテレビの取材も来たりするようになり、多くの人が訪れるようになります。

多くの方に、特に子供達にも楽しんでもらいたいとの思いから、夜の暗い中を歩くための安全を考え、ロープを張ったり、ホタルを刺激しないよう極力光を抑えた誘導灯を設置したりするなど遊歩道を整備。また、生息域の拡大等、環境の整備を続け現在に至ります。

▼安全に鑑賞できるようロープなどを設置

▼迷わないよう極力光を抑えた誘導灯も設置

会ができてから今年で23年目。「楽しみながらここまでやって来た。ホタルを見て喜んでもらえると、私も嬉しい」といいます。しかし、一般開放した当初はゴミの放置やロープを切られたり誘導灯を盗まれたりと、マナーの悪さに悩んだとのことです。

里山の復活

小泉さんは、会を発足してから現在までホタルについての講演や、ホタルの幼虫放流の協力等で精力的に活動を続けています。その活動の中からも様々なことを学んでおり、ホタルを繁殖するには昔ながらの里山の復活が不可欠ということにたどり着きます。

ホタルが繁殖するには気候のほか、綺麗な水とその水温、ホタルの幼虫の餌となるカワニナなどの生息、増水時でも流されない溜まりの有無、冬季でも凍らない湧き水などなど、様々な条件がうまく合わないといけません。

小泉さんがやってきた活動は、里山の復活につながるものであり、数年前から里山を作るという意識を持って活動しているとのこと。そのことから「ほたるの里」は今年から「ほたるの里山」と名前を変更しました。

「ほたるの里山」は小泉さんのご好意により年中開放していて、興味ある方はいつでも敷地内へ入ることができます。毎年7月20日~8月20日頃までの1カ月間はホタル鑑賞のため、遊歩道の整備や案内をしつつ夜間開放をしています。

敷地内には、ホタルのほかにも標高が高い場所で見られるクルマユリなどの植物や、カワセミ、フクロウ、アカゲラなどの鳥たちを見ることができ、昼間でも見所満載。筆者も取材中、鹿に出会いました。四季によって変わる木々や草花、そこへ訪れる動物や昆虫、昔ながらの自然の姿を楽しめる場所なのです。

ただし遊園地でもない自然の中へ入ることになりますので、すべてにおいて自己責任であるということを忘れないようにしましょう。また、あくまでも個人の敷地内へ入らせていただくので、マナーを守って楽しみたいですね。

▼日没から1時間くらいが鑑賞に最適

ホタル鑑賞の注意点

ホタルの鑑賞に関して注意してほしいことがあります。特に暗い場所を歩きますので、懐中電灯やLEDのヘッドライトを照らす方が多くいます。その場合は足元だけを照らし、できるだけ行く先を照らさないようにしましょう。あまりに多くの光が当たるとホタルは光らなくなります。他の鑑賞者や写真撮影者への配慮というのもありますが、自分自身が楽しむことができなくなりますので、一番注意しなければなりません。

ほたるの里山
所在地:山越郡長万部町字蕨岱
お問い合わせ:諸事情により現在閉鎖中(2021年2月10日更新)