北海道在住の漫画家・田島ハルさんによる連載コラム「うましか道~うまいしかない北海道~」。第1回目の今回は、「小樽モンブランの謎」です。
トップイラスト
小樽あまとうのモンブラン。山に見たてたチョコケーキ。生クリームの万年雪にチョコの岩肌。喫茶店の給仕さんは美人ぞろい。きっと社長の好みにちがいない……。
小樽あまとうのモンブラン。山に見たてたチョコケーキ。生クリームの万年雪にチョコの岩肌。喫茶店の給仕さんは美人ぞろい。きっと社長の好みにちがいない……。
小樽モンブランの謎
「小樽のケーキ屋でモンブランを頼んだら、高確率でチョコケーキが出てくる」と言うと、大抵の人はびっくりする。私もその一人であった。
この謎現象は、米華堂、小樽あまとう、パールマリーブ、館ブランシェなど、地元民に長年愛されている店で起きる。
数年前に初めて訪れた、小樽あまとうの本店二階の喫茶室。昭和のムード漂う深紅の絨毯とベルベットのソファーに、何ともいえない”あずましさ”を感じながらメニュー表を開くと、さも当然のように、チョコケーキに「モンブラン」と名が掲げてあるので面食らってしまった。
真相はつまり、こうだ。
1936(昭和11)年、東京でモンブランケーキが流行っていると風の噂で聞いた店主。当時はネットもなければ流通も発達していないので、実物をお目にかかることができない。
「きっと”モンブラン”だから、アルプス山脈の”モンブラン”みたいな山っぽいケーキだべ!」
そんな想像だけで作られたのが、「小樽のモンブラン」なのである。
細かいことは気にしないおおらかさと、新しいもの好きな気質が合わさった道産子の産物……。
昭和から店内を優しく照らす橙色のシャンデリアの下に、しれっと「モンブラン」でいるチョコケーキも、道産子のおおらかさも、私はどちらも愛しく感じるのだ。
イラスト・文:田島ハル
この連載は、北海道ファンマガジンのフリーペーパー「別冊 北海道ファンマガジン」でもご覧いただけます。