札幌には一風変わったあんぱんがあります。あんぱんと言うよりも月餅のような、お菓子に見えるその形。名前を「月寒(つきさむ)あんぱん」と言います。
札幌に住んでいる人にとっては、小さな頃からある、誰もが食べたことのある、なじみの深い「月寒あんぱん」。それゆえ、あんぱんという名称が付いているお菓子なのだと認識されているのです。販売元の月寒あんぱん本舗に詳しく教えてもらいました。(上の写真提供:株式会社ほんま)
100年以上の歴史を持つ月寒あんぱん
おじゃましたのは、地下鉄東豊線月寒中央駅の4番出口に直結している月寒あんぱん本舗の月寒総本店です。代表取締役社長の本間幹英さんにお話をお伺いしました。
▼明るく広々とした月寒総本店。イートインスペースもあり
明治初期、陸軍にお菓子を販売していた大沼甚三郎さんが、当時東京で大ヒットしていた木村屋の「桜あんぱん」を、レシピなしに見よう見まねで作ってみました。
饅頭のような形になったのは、小麦粉と膨張剤のみで作ったから。その製法を指南されたひとりが、本間与三郎(創業者)さんです。与三郎さんは、ツキサップ(現在の月寒)で製造を開始しました。それが「月寒あんぱん」のはじまりです。
▼株式会社ほんま代表取締役社長の本間幹英さん
「当時、月寒は陸軍の町で、うちは兵隊さんが日常使うものを売る雑貨店でした。雑貨を売る一角でお菓子なども販売していて、そこであんぱんを一緒に売っていたと聞いています」と本間社長。
「当時は、単にあんぱんと言っていたんですよ。同じようなあんぱんを販売しているお店が近所に7店あったのですが、戦時中、物資不足ですべての店が閉店せざるを得なくなりました。戦後、お店を再開できたのはうちだけだったのです。それからうちのあんぱんが月寒あんぱんと呼ばれるようになったのです」
▼2013年に移転した恵庭工場
月寒あんぱん本舗のこだわりは、素材の味を生かすお菓子作り。創業以来、徹底的に素材にはこだわってきたのだと本間さんは言います。こしあんに使う小豆は十勝産。卵、砂糖も100%道産のものを使用しています。
さらに大切にしているのが「歯ごたえ感」です。「月寒あんぱんの中のあんはこしあんです。こしあんを使うことによって食べたとき、あんと皮が一緒になくなります。これは粒あんだとムリなのです」と本間さん。お菓子の種類によって異なる柔らかさ、昔の職人が大切にしてきた「歯ごたえ感」を今に残しているのだそうです。
▼月寒あんぱん
意外とバラエティ豊かなラインナップ
ここで、月寒あんぱん本舗の代表的なお菓子を紹介しておきましょう。
月寒あんぱん
十勝産小豆100%のこしあんを薄い生地で包み込んだお菓子でです。たっぷり入ったこしあんは食べ応えがあります。こしあん以外に、黒糖あん、南瓜あん、黒胡麻あん、抹茶あんがあります。125円(税別)。
月寒ドーナツ
50年以上前から同じレシピで作られているドーナツです。十勝産小豆100%のこしあんを自社配合の記事で包んで揚げた懐かしい味のお菓子です。8個入り330円(税別)
月寒あんぱんスティック
スティックタイプの月寒あんぱんです。細長いので食べやすいのが特徴です。こしあん以外に黒胡麻あんがあり、さらに季節商品のかぼちゃあん、赤肉メロンあん、いちごミルクあんがあります。こしあんは100円、黒胡麻あんは130円(どちらも税別)。
月寒あんぱん復刻版
創業当時の月寒あんぱんを復刻したものです。現在の月寒あんぱんよりもサイズはかなり大きめです。330円(税別)。
(※価格はすべて月寒総本店もの)
最後に、これからの月寒あんぱんについて本間さんにお伺いしてみました。「月寒ドーナツの話がでると、懐かしいとおっしゃる方が多いのですが、私たちが目指しているのは、そうしたことではありません。懐かしがられるのではなく、いつも食べてますよと言われるようになりたいのです」。
現在では、スーパーでも販売されており、より手軽に買うことができるようになった「月寒あんぱん」。そういえばしばらく食べてないなという人も、久しぶりに食べてみてはいかがでしょうか。
(2023年4月19日:店舗の営業時間を更新しました。)