「水道水のおいしい都市」として選ばれたのは北海道内に2都市しかないのをご存知でしょうか? その一つが苫小牧市です。水道水をペットボトルに入れた「とまチョップ水」は売れ行き好調。ほかにも苫小牧の地酒「美苫」も水道水を原料に使っています。それほど苫小牧の水道水がおいしいのはなぜでしょうか? その秘密に迫りました。
苫小牧の水道水がおいしい理由
苫小牧市の水道水は全国有数のおいしい水です。その証拠に、1985年に当時の厚生省の「おいしい水研究会」が調査し発表した「水道水のおいしい10万人以上の都市」に、北海道から帯広市と苫小牧市だけが選ばれています。苫小牧市民に話を聞くと、市外に移住した際に水道水のわずかな違いに違和感を感じることもあるのだとか。水質、塩素くさくなく、水温が冷たい、といった要素が関係しているそうです。
なぜ苫小牧市の水道水はおいしいのでしょうか? 苫小牧市内の水道水は大きく2か所の浄水場から配られています。一つは西側の錦多峰浄水場、東側の高丘浄水場です。水源も異なり、後者の高丘浄水場は幌内川や勇払川から取水しています。
勇払川の源流は支笏湖東部、国道276号線と453号線の交差点から近いところにあります。落葉や枯葉が幾重にもなり、樽前山の火山灰などが堆積する天然のろ過装置を雨水が通り、炭酸ガスやミネラルが与えられながら、山麓に広がる森から湧き出し清流となるのです。
▼樽前山
▼勇払川の丸山遠見の滝・七条大滝
苫小牧の水道水を化学的に見ると、蒸発残留物(ミネラル分)は1リットルあたり90~175㎎(水道法に基づく基準:500㎎以下)、硬度は25~75㎎(同:300㎎以下)、残留塩素は0.3㎎(同:0.1㎎以上、おいしい水研究会のおいしい水基準は0.4㎎以下)となっています。
▼地酒「美苫」や「勇払原野」などの仕込み水に苫小牧の水道水を使用
苫小牧の水道水はおいしいということで、2001年に発売された地酒「美苫」の原料水にも使われています。高丘浄水場の水を小樽市の田中酒造まで運び作っています。また焼酎「勇払原野」「北のろまん」も苫小牧の水を仕込み水に使っています。そのほか水耕栽培のトマトなど野菜栽培にも苫小牧のおいしい水は使われてきました。
苫小牧の水道水をペットボトルに!「とまチョップ水」が登場
おいしい水道水をペットボトルに入れて販売するボトルドウォーターは、1989年に函館市が「はこだての水」を発売して以来、札幌市、小樽市、帯広市などで発売されてきました。
苫小牧市でも2007年度に最初のボトルドウォーターを作成し、第58回全国植樹祭で配布したり中越沖地震被災者への支援品として活用しました。2012年度には水玉模様のラベルのパッケージで市内に配布、苫小牧港開港50周年の2013年度には初めてとまチョップがラベルに採用され、イベントなどで配布されました。2014年度も同様で、発売前に計4度 ボトルドウォーターを作成したことになります。
▼これまでのボトルドウォーターの変遷(左から順に2007年度、2012年度、2013年度、2014年度)
2014年度までは市内の会議やイベントなどで無償配布してきたボトルドウォーターですが、より多くの人に手に取ってもらいたいとの思いから、2015年6月29日に「とまチョップ水」(500ml)を発売しました。水道水は高丘浄水場のもので、恵庭市の工場に運んでペットボトルにしています。
▼2015年に発売したとまチョップ水
市上下水道部によると、キャラクターをパッケージに採用している例は全国的にも数少ないとのこと。北海道のご当地キャラクターの中でもとりわけ人気の高いとまチョップがパッケージに描かれていれば、ついつい手に取ってみたくなるのもうなずけます。実は苫小牧市の水道水のイメージキャラクター、カワセミをイメージしたスイミーも描かれているので見つけてみましょう。
現在は市役所売店、道の駅ウトナイ湖、アルテンゆのみの湯、ココトマ苫小牧観光案内所の4か所で販売され、製造した3万本のうち累計1万7千本も売れたというボトルドウォーター。主に観光客や市外の方向けですが、会合で配布するためにと箱買いする市民もいるといいます。
▼道の駅ウトナイ湖ではイートインすると苫小牧の水道水が飲める
市では今後、販売先を増やしながら苫小牧の水道水のおいしさをPRしていく考えで、市上下水道部総務課の担当者は、「選ばれたおいしい水なので、苫小牧に来て是非飲んでもらいたい」と話しています。
※写真提供:苫小牧市上下水道部総務課