「摩周鯛」をご存じですか? 調べてみると、弟子屈町(てしかがちょう)の川湯温泉にあるホテルパークウェイで食べることができる魚なのだとか。
摩周湖で捕れるから「摩周鯛」? いやいや摩周湖は淡水だから海水魚の鯛が捕れるわけないし。海辺ではない川湯温泉でなぜ鯛なのでしょう? さっそくホテルパークウェイに真相を伺いに行ってきました。
味も食感も鯛、その正体とは?
▼JR釧網本線川湯温泉駅
ホテルパークウェイはJR釧網本線の川湯温泉駅から300m弱、歩いて3~4分の場所にあります。さっそくオーナーの及川宏さんに伺ってみました。
▼オーナーの及川宏さん
摩周鯛というのは一般公募して付けられた名前で、実はティラピアのこと。1980年代に、弟子屈町にあった老人ホームが、老人の生きがいのためにということでティラピアを飼いはじめました。
最初は観賞用で食用として考えていたわけではありませんでした。その後、ティラピアは食べられることがわかり、実際に食べてみると食感や味が鯛に似ているということがわかりました。
さらに、岩手県でティラピアの養殖に成功したことなどから、弟子屈町の名物として観光客に出すことができないかと考えたのです。
▼これがティラピア
ティラピアは、アフリカや中近東の魚のため、寒いところではそのまま飼えません。水温を15℃以上で管理しないといけないので、暖房費がかなりかかってしまいます。
そこで、温泉を利用して温度管理をしたらどうだろうかと考えました。温泉水と地下水を混ぜたり、薬品を使ったりと、試行錯誤してみたのですが、温泉水100%で飼育するのがいちばんだということに気づきました。現在は、ホテルの裏にある養殖場で、約2万匹のティラピアが飼育されています。
▼ホテルの裏にある養殖場
▼源泉100%の温泉水で飼育
かつてはティラピアの養殖をしているところもいくつかありましたが、現在ではほとんどありません。そうした状況の中、最近、ティラピアのコラーゲンが良質だと言われるようになってきました。薬品会社などから問い合わせが殺到し、にわかに注目を集めているのだそうです。
リーズナブルなお宿で摩周鯛を堪能
▼ホテルパークウェイのロビー
ここで摩周鯛が食べられるホテルパークウェイについて紹介しておきましょう。
ホテルパークウェイは、1972年(昭和47年)にオープンしたホテルで、まるでアメリカ映画に出てくるような洋館で、味のある雰囲気を醸し出しています。
ホテルや旅館などの宿泊施設では、季節に応じて宿泊料金を変えていることが多いのですが、こちらでは季節などを問わず、ずっと同じ料金で営業しています。ちなみに料金は1泊2食付きで1人7,170円です。もちろん夕食には摩周鯛が付いてきます。
▼部屋はいたってシンプル
料理の内容によって、異なるコースが用意されています。摩周鯛の活きづくりが付くコースが1泊2食付きで9,330円、道外から来られる方に人気の蟹などが付いたコースが1泊2食付きで11,490円です。
▼夕食。この日は摩周鯛の刺身と唐揚げが付いていました
料理についてお聞きすると、冷凍物を使わないことと、なるべく地産地消を目指していると教えてくれました。米には特にこだわっていて、精米して一週間で使い切る分だけを蘭越町から取り寄せているのだとか。
摩周鯛も、作る直前に養殖場にその都度捕りに行っているとのことで、厨房で摩周鯛の写真を撮りたいので見せてくださいとお願いすると、厨房にはないということでした。いかに新鮮な状態で客に出しているかが、よく伝わってきました。
▼食事はこのレストランでいただきます
気になる温泉についても紹介しておきましょう。
こちらの川湯駅前温泉は、ナトリウム-炭酸水素塩泉。以前は重曹泉と呼ばれていたのだそうです。加水をしていない源泉100%掛け流しで、源泉の温度は64.2℃、phは7.1、神経痛や筋肉痛、関節痛などに効き、疲労回復や健康増進、冷え性など、多くの効能があります。詳しくはホテルのホームページを参照ください。
▼ホテルにある内湯
▼内湯とは別の場所に露天風呂も
温泉は、湯量が豊富で、温度も高めなので、ホテルの暖房にも活用しています。また、JR川湯温泉駅にある足湯もここの源泉からお湯を引いています。
▼JR川湯温泉駅にある足湯
摩周鯛は1年間で30cm、800gほどに育ちます。刺身、唐揚げ、甘酢餡かけ、塩焼き、釜めしなど調理方法もバリエーション豊かです。
鯛に似た味わいで、良質のコラーゲンが含まれている摩周鯛。食べてみたいと思った人は、ホテルパークウェイを訪れてみてはいかがでしょう。