北海道を旅する

崩壊進む 旧士幌線の幻のコンクリートアーチ橋「タウシュベツ川橋梁」

北海道上士幌町にある旧国鉄士幌線には、いくつかのコンクリートアーチ橋梁があり、今でもその姿を残しています。中でも、糠平湖の水位の変動により見え隠れするため「幻の橋」と呼ばれているタウシュベツ川橋梁は、内外部からの損傷が進み、崩落が危ぶまれています。

建造物の風化は避けられないものだとはいえ、失われてしまうのはやはりもったいない思いがします。そこで、カメラ機材を担いで上士幌町に向かいました。

ただ朽ちていくのを見守られるだけの橋

崩壊進む 旧士幌線の幻のコンクリートアーチ橋「タウシュベツ川橋梁」

タウシュベツ川橋梁は、1987(昭和62)年に廃線となった旧国鉄士幌線に残された鉄道橋で、造られたのは1937(昭和12)年です。

士幌線は、帯広駅から十勝三股駅までの全長約80キロメートルの鉄道。人だけではなく、木材や農産物などを運んでいました。音更川に沿って鉄道が敷かれ、川を何度も横切るため、いくつもの橋を造る必要があったのです。

▼今も一部残る旧国鉄上士幌線跡
崩壊進む 旧士幌線の幻のコンクリートアーチ橋「タウシュベツ川橋梁」

当時日本は、軍備強化に向かっていた時代。そのため工事費を抑える必要がありました。そこで、現地で採れる砂利や砂が利用できるコンクリートで橋を造ることになったのです。さらに橋の強度を高めるべく、形状をアーチ型にしました。

▼砂利や砂を利用して作られたコンクリートアーチ橋
崩壊進む 旧士幌線の幻のコンクリートアーチ橋「タウシュベツ川橋梁」

また、この地域は大雪山国立公園ということもあり、景観への配慮も考えられたといいます。士幌線沿線には、そうしたアーチ橋が計49橋造られ、そのうちアーチが二連以上ある大型アーチ橋が現在12橋残っています(詳しくは旧士幌線コンクリートアーチ橋梁群の記事を参照)。タウシュベツ川橋梁は、そんなアーチ橋のひとつです。

▼11連のアーチがあるタウシュベツ川橋梁
崩壊進む 旧士幌線の幻のコンクリートアーチ橋「タウシュベツ川橋梁」

その後、糠平ダムの建設に伴い、鉄道が移設されることになりました。タウシュベツ川橋梁は、1955(昭和30)年にその役割を終えたのです。そのまま放置されたタウシュベツ川橋梁は、水位が20mも上下する糠平湖により季節によっては水没します。さらに、自然環境による凍結や融解、地震など自然災害による影響などから、ほかの橋梁に比べて激しく損傷してしまったのです。

▼ほぼ水没したタウシュベツ川橋梁(写真提供:NPOひがし大雪自然ガイドセンター)
崩壊進む 旧士幌線の幻のコンクリートアーチ橋「タウシュベツ川橋梁」

タウシュベツ川橋梁は、立地の悪さから遺産などに登録されることはありませんでした。手つかずのまま崩壊していくのを見守られているのが現状です。

▼自然環境や災害により崩落していくタウシュベツ川橋梁
崩壊進む 旧士幌線の幻のコンクリートアーチ橋「タウシュベツ川橋梁」

NPO主催のツアーに参加してみた

さて、今回タウシュベツ川橋梁を訪れるにあたり、前もっていろいろ調べたところ、橋梁の側までは許可された車しか入れないことを知りました。車を停められるところから橋梁まで歩いて4kmぐらいなのですが、クマが頻繁に出没するため気をつけないといけないこともわかりました。また、現地周辺は携帯電話の電波も届かないところらしく、何かあったときには連絡もできないとのこと。

▼いろいろなツアーを実施しているNPO ひがし大雪自然ガイドセンター
崩壊進む 旧士幌線の幻のコンクリートアーチ橋「タウシュベツ川橋梁」

そこで、タウシュベツ川橋梁を一緒に回ってくれるツアーがあったので参加してみました。ツアーは「NPO ひがし大雪自然ガイドセンター」が実施していて、旧国鉄士幌線のアーチ群を見学するツアーなど、いくつかのツアーが用意されています。

▼今回は約20人近くが参加
崩壊進む 旧士幌線の幻のコンクリートアーチ橋「タウシュベツ川橋梁」

筆者が参加したツアーでは、車でタウシュベツ川橋梁の側まで行き、歩いて橋梁のまわりを散策しました。その後、いくつかのアーチ橋や旧国鉄士幌線幌加駅跡を見学しました。

▼車から眺めた第五音更川橋梁
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▼車から眺めた三の沢橋梁
崩壊進む 旧士幌線の幻のコンクリートアーチ橋「タウシュベツ川橋梁」

▼歩いて旧国鉄士幌線幌加駅を見学
崩壊進む 旧士幌線の幻のコンクリートアーチ橋「タウシュベツ川橋梁」

ツアーは全行程を回って2時間半ほど。タウシュベツ川橋梁周辺では30分以上自由時間があったので、それぞれに見学したり撮影したりと、思い思いの時間を過ごしていました。

NPOひがし大雪自然ガイドセンターの河田充さんにお話を伺うと、ツアーは1999(平成11)年からはじめたとのこと。ガイド中に、タウシュベツ川橋梁ができた時代背景、コンクリートを傷める凍害の凄さなど、橋梁にまつわるさまざまなことを説明するようにしているそうです。

「歩きやすい服装でお越しください。長靴も必須ですが、こちらで無料でお貸ししています」と、ツアー参加に関しての注意点も教えてもらいました。

橋梁は、崩落しかけている危険な場所。ロープ内へは立ち入らないことが原則です。これまで怪我人はでていないとのことですが、誰かが怪我を負った時点で橋梁を取り壊すことが決まっています。見学する人のモラルとマナーが問われることもお忘れなく。

▼糠平湖に水が増えつつある時のタウシュベツ川橋梁。湖面に映る姿から「めがねばし」とも言われているそう(写真提供:NPOひがし大雪自然ガイドセンター)
崩壊進む 旧士幌線の幻のコンクリートアーチ橋「タウシュベツ川橋梁」

タウシュベツ川橋梁は、季節や時間によって多彩な顔を見せてくれます。ツアーは年間を通して実施されているので、季節ごとに参加してみるのもおもしろいかもしれません。実際に行くと、周辺に熊の足跡や糞がありました。ひとりで行く場合には注意してください。

▼冬期のタウシュベツ川橋梁(写真提供:NPOひがし大雪自然ガイドセンター)
崩壊進む 旧士幌線の幻のコンクリートアーチ橋「タウシュベツ川橋梁」

取材協力
NPOひがし大雪自然ガイドセンター
所在地:北海道河東郡上士幌町ぬかびら源泉郷北区44-3 糠平温泉文化ホール内
電話:01564-4-2261
公式ページ
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筆者について

石簾マサ

石簾マサ

すべてのしがらみを捨て札幌で永住するぞ……と移住してきた50代のおっさんライター。札幌楽し~い。移住者が見た札幌の楽しさ・良さを伝えていければ……と思っております。