安平町追分に泊まれる居酒屋!? 地元民と旅人が集う「旅の轍」

新千歳空港から車で約20分、安平町追分にある旅人宿「旅の轍」。

夜6時、宿にお邪魔すると、友達の家に来たかのようなアットホームな雰囲気とたくさんの日本酒が目に飛び込んできました。そしてキッチンから現れたのは笑顔が素敵な宿主、鈴木智也さん。通称のみぞうさん。

17年間北海道の旅をして奈良から移住してきたというのみぞうさんと、そんな宿主が創った宿、旅の轍に集まる人々の魅力を探ります。

アットホームな雰囲気の秘密

▼旅人さんと地元の人で囲む宴の席

第一印象で感じる居心地の良さのひとつは、地元の人がよく出入りしているというところ。宿なのに、地元の人が当たり前にここを集いの場として利用しているのです。

そのため旅人さんは、北海道の日常に入り込むような感覚を味わうことができます。

地元の人と一つのテーブルを囲んで、日本全国から集まった日本酒を飲み比べ、ご自身も旅人だったというのみぞうさんに北海道旅の情報を教えてもらう。ここは、旅の始まりにふさわしい場所です。

宿主のみぞうさんの秘密

▼お酒がよく似合う、のみぞうさん

のみぞうさんが初めて北海道を旅しに来たのは、1998年2月。ある日会社から帰ってきた夜何気なく見ていたテレビで釧路湿原のタンチョウヅルとオホーツク海の流氷を見て心惹かれました。しかし、当時勤めていた会社では流氷の季節にまとまった休みを取ることができなかったため、迷った挙句に退社。それからは北海道を旅することに熱中し、利尻島のユースホステルでお手伝いをしていた時は毎晩ギターを弾きながら旅人さんたちをお迎えしたり、稚内で自転車を買って480㎞先の根室まで走ったりと、思い出に残る旅を重ねたそうです。

▼日本全国旅をしながら集めた可愛いワンカップ

鉄道好きが心躍る仕掛けがたくさん

▼各部屋の名前は、寝るところという意味で夜行急行列車の名前

北海道移住を考え、宿を立ち上げることを決め、ご自身が鉄道好きだったこともあり、SLと関係の深い安平町に場所を決めました。宿の中にもSLや鉄道に関するものが散りばめられています。

▼かつて電車で使われていたプレート

移住者への大きな心遣い

物件を探し始めてから実際に取得するまで、4年の年月がかかったという旅の轍。

何度も奈良から北海道へ通っていたので、その時お世話になった安平町役場の方や、その時泊まっていた旅館の方が、今では旅の轍によく遊びに来てくれるそうです。

そのように縁が続いていくのは、安平町の方々の移住者を歓迎してくれる心遣いと、のみぞうさんのみんなから愛されるキャラクターによるものなのだと感じました。

のみぞうさんはこう話します。「移住の時に安平町の方にたくさん助けてもらったので、自分も次に移住してくる人の力になってあげたい」。最近は地方に移住を考える人が増えていますが、そんな方も旅の轍に行ってのみぞうさんに移住のエピソードを聞いてみるのも面白いかもしれません。

泊まれる居酒屋?

旅の轍には、安平町に住む地元の方々、日本全国からの旅人さんたち、そのほかに札幌近郊に住むお客さんもよく泊まりに来るそうです。札幌方面から遊びに来る方はほとんどお酒を飲みにやってきます。

なぜ近くの居酒屋ではなく、わざわざ遠くの追分までやってくるのか聞いてみると「程よい距離感で気軽に旅に出る感覚を味わえて、ここに来ればお喋り相手になってくれるのみぞうさんがいるし、飲んだらそのまま布団に転がり込めるのでつい足を運んでしまうの」と、江別市に住む常連さんは答えてくれました。つまりここは、単なる宿ではなく、アットホームな泊まれる居酒屋のような宿なのです。

▼夜が更けるころには、いつのまにか旅の轍ファミリーの一員に

そんな旅の轍では、前日の飲み会で仲良くなった旅人さんたちを連れて、近所のラーメン屋さんや温泉、アイス屋さんなどに出かけることもあるそうです。ノープランで北海道に来て、旅の轍で出逢った方と翌日の予定を立てる、そんな気ままな旅のかたちもおすすめですよ。

旅人宿「旅の轍」
所在地:北海道勇払郡安平町追分青葉1-24
電話:0145-25-3333
料金:素泊まり2,800円、朝食付き3,300円、2食付き4,300円
※男女別相部屋のドミトリー形式
※冬季暖房費プラス300円