釧路のローカルフード「スパカツ」とは?「泉屋」で誕生の経緯を探る

熱々鉄板のミートソーススパゲッティの上に、どどーんと乗ったトンカツ。誰もが魅了されずにはいられないその料理、北海道民なら、もっと言えば釧路市民なら、一目で「あぁ、あれね」と頷くはずです。その名は「スパカツ」。釧路市発祥のローカルフードですが、今や道内のあらゆるお店で食べられるほど人気を得ています。改めて、みんな大好きスパカツのルーツを追ってみました。

ボリュームも満点、スパカツの魅力

▼1950年代から続く「レストラン泉屋」

地元釧路では誰もが知るところですが、スパカツ発祥の店は「レストラン泉屋」です。ここでスパカツ誕生の経緯を探る前に、食べたことがない人のために泉屋のスパカツがどんなものか、ご紹介しましょう。

▼写真を見ているだけでお腹が鳴りそう!

こだわりのミートソースには、たっぷりの玉ねぎが使われています。煮込んでから少し寝かすのもポイントらしく、酸味と甘味が程良く中和するために企業秘密の辛味成分も入っているのだとか。ソースそのものに、独特のコクと奥深さが感じられます。

そして驚くべきは、その量の多さです。ミートソースの重さは約280g。市販のものがだいたい140gということを考えれば、その量がわかりやすいのではないでしょうか。ちなみに麺も180gとボリューム満点。麺の上にミートソースをかけ、トンカツを乗せてさらにかけるというのがまた、うれしいですね。

スパカツ誕生の経緯とは

▼若かりし頃の小泉俊一社長(写真提供:レストラン泉屋)

さて、スパカツ誕生秘話は、1950年代に社長である小泉俊一さんが修行していた札幌のホテルから地元の釧路市にUターンして戻ってくるところから始まります。当時の釧路にはまだ洋食文化がなく、店でポタージュやマカロニを出したところ、お客さんから「何これ?」と不思議がられたといいます。

▼1958(昭和33)年の泉屋の様子(写真提供:レストラン泉屋)

スパカツを考案したのは1960(昭和35)年頃。最後まで温かく食べてもらおうと鉄皿で出したスパゲティが話題となり、さらに当時ごちそうだったトンカツをミートソースに乗せたらどうだろうという発想から生まれました。ちなみにその頃のメニュー名は「ミートソースポークカツレツ」。オーダー時、店員が厨房に向かって「スパカツひとつ!」と言っているうちに、お客さんにも「スパカツ」の名が浸透したそうです。

スパカツ以外にも食べたい、あれやこれや

▼古き良き昭和の雰囲気を残す店内

ところで、スパカツが誕生する以前、話題となっていたスパゲティは、今でもしっかりメニューに残っています。そのひとつが店名を冠した「泉屋風」です。素朴な塩味の、ここでしか食べられないスパゲティなので、こちらもぜひおすすめです。

また、開店当初に名物になったのがカレーライス。卵が珍しい時代に、カレーライスの上に目玉焼きを乗せたことがお客さんを驚かせたようです。泉屋のカレーライスには、今でも目玉焼きが乗っています。

お客さんを驚かせたという点では、さらに「何だこれは!?」とビックリ仰天させたのが、ピザでした。

▼ミックスピザにエビとサラミを追加トッピング

昭和40年代に釧路で初めてピザを出したところ、中には「手づかみで食べさせるとは何事だ!」と怒り出すお客さんもいたのだとか。今となっては冗談のような話ですね。ちなみに上の写真は、ミックスピザにエビとサラミをトッピングしたもの。見た目に分かるように、泉屋のピザはチーズの量がかなりたっぷりで、薄い生地なのに持つと重厚感があります。もちろん、食べておいしいのは言わずもがなです。

釧路の洋食の歴史は、まさに泉屋と共にあったと言って過言ではないでしょう。スパカツ発祥の地を求めて訪ねたら、まだ洋食に慣れていなかった時代のお客さんの反応も含め、昭和の食文化の興味深い話をいろいろ聞くことができました。タイムトリップしたような気分になれる店内の雰囲気も含め、ぜひ昭和から続く「ザ・洋食」の楽しさ、おいしさを堪能してください。

レストラン泉屋
所在地:北海道釧路市末広町2-28
問い合わせ先:0154-24-4611
営業時間:11時~21時00分(L.O.20時30分)
定休日:なし

(2022年9月14日:営業時間を更新しました。)