ハガレン作者の新連載「銀の匙 Silver Spoon」が評判

 漫画家の中には当然ながら北海道出身の方もいらっしゃるのだが、あの漫画の作者が北海道出身?ということも意外と多いものだ。荒川弘さんもその一人。名前だけでピンとこないかもしれないが、「鋼の錬金術師」通称「ハガレン」と言えば、あぁーという声も聞こえてきそうだ。十勝出身の彼女が2011年、北海道を舞台にした新連載を始めているが、それが好評のようだ。
(※写真はイメージ)

 荒川弘さんの新連載タイトルは「銀の匙(さじ) Silver Spoon」。『週刊少年サンデー』で2011年4月に連載開始した。北海道の仮想農業高校「大蝦夷農業高等学校」通称「エゾノー」に札幌の進学校からなぜか入学してきた少年・八軒勇吾が主人公だ。

 酪農科に一般入学した彼のまわりは、将来の夢を持った酪農家出身の生徒ばかりで、八軒は優等生ではあるものの将来の夢を持てずにいる。農業や酪農のことなんて何も知らない彼が、驚き・戸惑いながらも、夢を持つ同級生、家畜の世話と触れ合いといった経験を通して、様々なことを学んでいくという青春ストーリーである。

 物語の舞台は、敷地一周20km、面積日本一を誇る農業高校が舞台。これは実際の高校がモデルになっていて、作家荒川弘さんの出身地十勝にある帯広農業高等学校である。酪農施設や寮生活もこれに基づいている(実際作者自身も農業高校出身である)。馬、牛、鶏、豚など、様々な家畜が登場する。子ブタのシーンは可愛いと話題だ。


「銀の匙 Silver Spoon 1」荒川 弘


「銀の匙 Silver Spoon 2」荒川 弘

 この漫画に登場する名称は北海道各地の地名、特に十勝の実在の地名を使用している。たとえば、主人公の八軒勇吾は、札幌市西区八軒。主人公が密かに想いを寄せる御影アキは、清水町の御影地区から取っている。

・八軒勇吾:札幌市西区八軒
・御影アキ:清水町御影
・駒場一郎:音更町駒場
・稲田多摩子:帯広市稲田

 実際、最初の自己紹介のシーンからは道内各地から来たことが分かる。清水第一中学校、幕別東中学校、中札内南中学校、帯広川西中央中学校、下浦幌中学校、別海中風連中学校、大樹晩成中学校、主人公の八軒自身は札幌市の新札幌中学校出身でで、ここでもやはり十勝の地名が目立つ(中学校名は実在しない)。

 その他、帯広競馬場が実名で登場する。主人公らはここで北海道遺産の「ばんえい競馬」を見学することになるのだが、こうした内容からも帯広市を舞台にしていることが分かる。

 さてこの「銀の匙 Silver Spoon」、コミック本は2011年7月に第1巻、2011年12月14日に第2巻を発売したが、これまで合計するとなんと100万部に達すると言い、異例のヒットになっている。

 内容自体もコミカルで大変面白い。主人公が酪農業に無知であることから、主人公とともに北海道の酪農事情を学んでいけるのも良い。農業高校を経験した作者だから書ける部分も大いにあるだろう。道民こそ手にとって読んでいただきたい。