【札幌市】ストーブの前から離れられなくなる季節。冬が近づくにつれ、ストーブの前で暖をとりたくなります。外にもストーブがあったらいいですよね。実は石炭ストーブを幾つも置いている公園が、札幌市白石区にあります。それが「やなぎ公園」という住宅街にある公園です。
石炭ストーブとレンガをテーマにしたやなぎ公園
JR函館本線・白石駅から約300m。平和通5丁目北の住宅地の一角に、木々に囲まれた小さな公園があります。名前の通り柳の木が目を引く公園で、シラカバなども見られる公園です。遊具も滑り台、砂場、コンビネーション遊具、ぶらんこなどがあり、近隣の子供たちの遊びの場となっています。
その遊具群の中にストーブが幾つかあります。公園東側、夏季に水場となる場所の中心に石炭ストーブの形をしたオブジェがあります。ストーブの上にヤカンが置かれているというユニークなものです。逆側の西側にも同じようにストーブがあり、こちらはレンガで囲まれた砂場の中央に石炭ストーブの形をしたオブジェがあります。
この2つが最も大きく目を引くストーブですが、公園の入口にも小さなストーブ型のオブジェがあり、合計すると8つ近くになります。また、白石煉瓦にちなみレンガもふんだんに使われている、レンガとストーブがテーマの公園なのです。
なぜ石炭ストーブがテーマに?
しかし、なぜ石炭ストーブをテーマにした公園になっているのでしょうか?公園に置かれている石炭ストーブの模型は、大正末期から普及しだした鋳物製石炭ストーブ「福禄ストーブ」を模したものですが、実は白石区がゆかりの地となっています。そして、煉瓦製造の歴史とも少し関わりがありました。
やなぎ公園とその周辺はもともと、当時煉瓦製造では大手だった鈴木煉瓦社長の邸宅の一部でした。鈴木煉瓦製造場は鈴木佐兵衛氏が1884年夏に作ったのが始まりです。1882年に平和通6丁目北付近で駒沢小平氏が煉瓦に適した褐色粘土を発見してから、この地域には鈴木煉瓦のほか遠藤煉瓦も煉瓦造りを始めた記録があり、煉瓦製造ともゆかりの深い地域になりました。ここで作った煉瓦は、道庁赤れんが庁舎やビール会社や東京駅など有名な建物にも使用されました。
当時煉瓦製造で財を成した鈴木煉瓦社長は、やなぎ公園付近一帯に大邸宅と庭園を構えたといいます。その後、鈴木豊三郎社長の娘婿・福岡清春氏は、福禄ストーブを開発。これが大ヒットとなり、後に広まる石炭ストーブの礎を築きました。一方で、鉄筋コンクリートなどの普及で煉瓦製造は下火になり、1922年に鈴木煉瓦製造場は閉鎖に追い込まれました。
このような経緯から、石炭ストーブとレンガにゆかりが深く、当時の鈴木家の面影を残すこの公園に、レンガのほか、ストーブを模したものを置くことになりました。今は煉瓦工場も福禄ストーブも見る影もありませんが、やなぎ公園に置かれているレンガとストーブ模型が、当時の繁栄を物語っています。
▼やなぎ公園
札幌市白石区平和通5丁目北8 [地図]