北海道トピックス

作り手の想いを北海道から世界へ。ブランドロゴ・パッケージで伝える

  

2020年2月某日。札幌市内で行われた「北のハイグレード食品2020」授賞式に、異色の食品が並び、来場者を驚かせました。帯広市の株式会社まつもと薬局「松本堂」が販売する「のむお酢」です。海産物や肉加工品、乳製品等が多く受賞する中で、いったいなぜ薬局の商品が? 受賞の背景には、作り手の依頼を受けた事業戦略コンサルティング(事業戦略ブランディング)の専門家、株式会社リプロール(本社:札幌市)の戦略がありました。

同社代表取締役の山口祐輔さんに、自ら造語と話す「事業戦略ブランディング®」(※)の真髄をお聞きしました。

※株式会社リプロールの登録商標。同社が考える「事業戦略ブランディング®」とは、企業の事業戦略を踏まえてブランディングを実施する手法。

経営者、一次産業者が元気になれば地域が元気になる。リプロール創業の想い

作り手の想いを北海道から世界へ。ブランドロゴ・パッケージで伝える
「黒子に徹してきた」と話す、株式会社リプロール代表取締役 山口祐輔さん(提供:リプロール)

山口さんは経営コンサルタントを目指し、会計専攻の専門学校卒業後は自動車ディーラーで営業職を3年経験しました。この時、ブランディングやマーケティング、CRM(顧客関係管理)を実地で学び、転職先ではパッケージ商品開発会社やコンサルブランディング会社を経験。経営者、一次産業者や地域活性の役に立ちたいと、25歳の2010年に企業のブランディングをサポートするリプロールを創業、2年後に法人化しました。現在は、事業戦略コンサルティング事業、食品パッケージ企画・販売事業、デザイン制作事業、輸出入貿易事業を展開しています。

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5社6アイテムで構成した北海道チョコ’豆の例(提供:リプロール)
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北海道チョコ‘豆のロゴデザイン(提供:リプロール)

先駆けとなったのが、2011年春に開発した「北海道チョコ’豆(ちょこず)」です。道内の菓子メーカー等5社が北海道産大豆とチョコレートをテーマに統一ブランドを展開するという大胆な企画。人手不足で、作るだけで精一杯で販売が追いつかないというメーカーの力になりたいと、コンセプトを決めて一年がかりで実現させたプロジェクトです。同企画は「平成24年度北海道新技術・新製品開発賞」で特別賞を受賞。このときの取り組みが、海外展開(台湾)へのきっかけともなり、今の同社の事業にも大きな影響を与えていると、山口さんはいいます。

同社は創業から10年間で、海外、日本国内の200社以上のブランディングや商品開発やデザイン等を手掛けてきました。その結果、作り手や販売者、また関わっている人や地域が元気になるというプラスの効果が生まれてきました。その具体例の幾つかをご紹介しましょう。

ブランドロゴ、パッケージを変えたらかわいいと評判に! 松本堂「のむお酢」

前述した、まつもと薬局の「のむお酢」は、どのようにして受賞まで至ったのでしょうか。まつもと薬局は、2016年の発売以来、健康を全面に打ち出した「幸福de酢」を販売してきました。薬局側は、十勝生まれのこの商品を全国的に広めるため、全国流通でも通用するトータルプロデュース(パッケージ、ロゴ、ネーミング、ウェブサイト等)をリプロールに依頼しました。

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「薬局生まれ 松本堂®」のロゴデザイン(提供:リプロール)

リプロールの山口さんは、「人の健康に強いプロ(管理栄養士や薬剤師)が作っていること、人の身体や健康のことがわかっている食品会社はほとんどないこと、人の健康を土台としていること」に着目。屋号を思い切って切り離して「薬局生まれ 松本堂®」を創設し、商品名、ロゴマーク、容器、パッケージデザインを一新しました。薬局に来る人のための商品だったものが、ブランディングのプロの手によって流通用にアレンジされて、薬局のものとは思えないパッケージの「のむお酢」として大変身を遂げたのです。

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かわいらしいパッケージデザインが女性に人気、松本堂の「のむお酢」(提供:まつもと薬局)

まつもと薬局 栄養部部長の一色恵さんは、「山口さんは、わたしたちのこだわりや想いを形にしようと努力してくれた。健康らしさよりも、かわいいデザインを提案してくれたので驚いた。試飲会では、瓶もデザインもかわいいと評判が良い」と、気に入っている様子。若い女性でも買いやすいカジュアルなパッケージになったので、従来と異なる客層に受け入れられ、売上も伸びています。

リブランディング後、製造はもとよりデザインが評価されて「北のハイグレード食品2020」を受賞したほか、「フードアクションアワード2019」で入賞。新聞やテレビなどで紹介されると、知名度が一気にアップ。「お客様から問い合わせが多くなり、店頭に置きたいという問い合わせ、商品開発の話もいただくようになった。薬局に興味を持ってくれたことがとても嬉しい」と一色さんは振り返ります。

「北欧の風 道の駅とうべつ」のオリジナル「黒豆ご飯のもと」が大ヒット!

2017年にオープンした石狩管内当別町の「北欧の風 道の駅とうべつ」。その看板商品と言っても過言ではないのが「黒豆ご飯のもと」です。2019年の発売から1年間で1万缶以上を販売する大ヒット商品になりました。

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当別町の「北欧の風 道の駅とうべつ」

話は遡ること約2年前。道の駅の運営会社である株式会社tobe(トゥービィー)からリプロールに、当別町の特産品を使った商品開発ができないかと相談がありました。それまで道の駅では、当別町内の商品や姉妹都市の商品を販売しており、オリジナル商品はほとんどなかったといいます。

リプロールの山口さんは、当別町の特産品を調査し、栄養価の高い黒豆に目をつけます。お米と黒豆でなにかできないかと、炊き込みご飯を提案。道の駅に来た人向けに、簡単で、日持ちし、誰かにプレゼントできることを考慮し、炊いた後に混ぜるだけの缶タイプで発売することを決定しました。札幌市の南華園に製造を依頼し試食を重ねる傍ら、山口さんはパッケージデザインも並行して行いました。こうして「黒豆ご飯のもと」は、検討から約3ヶ月というスピードで発売にこぎつけました。

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道の駅の看板商品になった「黒豆ご飯のもと」を手にする鷲尾マネージャー

発売後、反響は上々。メディア露出や札幌で試食会を実施した効果も相まって、主婦層から人気を得ました。リピーターも多く、自分用とギフト用など複数購入する人が続出。ギフトを受け取った人も買いに来るという好循環が生まれています。tobeのマネージャー鷲尾亜希さんは、「かつてお客様からおすすめを聞かれても答えられないことが多かったが、今では道の駅の強みや、何を売っていくかが明確になった」と喜んでいます。

鷲尾さんによれば、町内に豆菓子を作っている生産者はいるものの、当別町の特産品の一つであることを知らない地元の方は多いといいます。黒豆が当別の農作物の主役として知られるようになったのも、「黒豆ご飯のもと」のヒットによるところが大きいと評価。また、商品製造のために生産者から原料をまとめ買いしており、少しずつ町内の作り手の安定につながっているとのことです。山口さんは「この取り組みによって、当別町が元気になっていると感じる」と話します。

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道の駅オリジナル商品は全10アイテムを開発

なお、これまでリプロールはtobeとともに、道の駅オリジナル商品として全10アイテムを開発してきました。道の駅とうべつは現在、オープン初年度と比べてオリジナル商品の売上が10倍近く伸びており、その半数以上を占めるのが「黒豆ご飯のもと」となっています。

長沼ファームのブランド牛「馬追和牛®」が飯寿司「ビーフ・ズーシー」に。海外展開も。

空知管内長沼町で、道内では珍しい黒毛和牛の大規模一環肥育(出生・肥育・出荷までを自社で行うこと)を行っているのが、有限会社長沼ファーム。1頭1頭の管理を徹底し、安心・安全な和牛をお届けしたいとの熱い想いを持っている代表取締役の森崎睦博さんは、6次化を検討している中で、リプロールの山口さんと出会いました。

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安心安全をお届けしたいと話す長沼ファームの森崎社長(提供:長沼ファーム)

「個々の農家が自社ブランドを持ち、積極的にアピールする時代である」と強調する山口さんは、国内の販路拡大に向けて、まず馬追和牛のブランドロゴを考案。28ヶ月を目安に出荷していること、森崎さんが二代目社長であること、八通りの八であることから末広がりに描き、ロゴマークを完成させました。同社もリプロールへブランドのトータルプロデュース(パッケージ、ロゴ、ウェブサイト等)の依頼を行いました。

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長沼ファーム「馬追和牛®」のブランドロゴ(提供:リプロール)

早速、「海外進出に興味ある?」との山口さんの誘いに応じ、2018年に台湾へ輸出して北海道物産展で現地販売を実現。森崎さんのもとには、「今までの和牛なんだったんだろう」「定期的にお願いしたい」という声が寄せられたといい、現在も定期的に台湾の百貨店や飲食店で馬追和牛を展開しています。国内でも馬追和牛として提供してくれる店舗が増えているほか、長沼町のふるさと納税の返礼品としても扱われるようになっており、リピーターも多いといいます。

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台湾に進出した長沼ファームの森崎さん(左)とリプロールの山口さん(右)(提供:リプロール)

その馬追和牛は2019年11月、「ビーフ・ズーシー」という飯寿司となって新登場しました。「牛肉で飯寿司できない?」という雑談の中から生まれたユニーク商品は、キンキのいずしで有名な伊達市の株式会社中井英策商店が3年半の試行錯誤の末、発売。中井英策商店 代表取締役の及川昌弘さんは、「前例がなく面白いと思った。これまで年配のお客さん中心だったが、ビーフ・ズーシーは若い人に人気。北海道の食文化を若い世代にも受け継がれることは嬉しい」と喜びを隠せません。

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新商品ビーフ・ズーシーに馬追和牛®が使われている(提供:中井英策商店)
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山口さんが結びつけた二人。長沼ファームの森崎社長(左)と中井英策商店の及川社長(右)(提供:リプロール)

ビーフ・ズーシーは「第27回北海道加工食品コンクール」で奨励賞受賞、「令和2年度北海道新技術・新製品開発賞」で優秀賞を受賞し、高い評価を受けています。

受け入れられなかった白い黄身の卵を「米艶®」として展開し成功

卵の黄身は黄色――。この固定観念が強い日本において、白い黄身の卵を販売するのは簡単ではありません。十勝管内音更町の株式会社竹内養鶏場は、2010年に白い黄身の卵の生産をはじめました。鶏は、食べたものがダイレクトに卵の黄身の色に表れます。一般的には飼料を変えて黄身に色付けしていることが多いのですが、本当の意味で安心安全を追求した結果、お米を主原料とした白い黄身の卵に行き着いたのです。

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「米艶®」を手に微笑む竹内養鶏場の竹内康浩さん(提供:竹内養鶏場)

自社の想いとしてストーリーを伝えたい、自社ブランドを作って価値の分かる人に価値ある価格で売りたい、独自販路を持っていきたいと希望していた同養鶏場の三代目 竹内康浩さんは、リプロールの山口さんに相談。山口さんは、竹内さんの想いがしっかり伝わるように、トータルプロデュース(パッケージ、ロゴ、ネーミング、ウェブサイト等)を依頼しました。

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「米艶®」のブランドロゴ(提供:リプロール)
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白い黄身が特徴の「米艶®」(提供:竹内養鶏場)

白い黄身の卵のネーミングは「米艶(こめつや)®」としました。山口さん曰く、「漢字2文字がインパクトを持ち、他にないものになる」。2013年に「米艶」発売後、2018年には、とうもろこしを主原料とした「玉艶(たまつや)®」も発売。食卓に届くことをイメージして、10個ではなく6個パックで販売しています。

竹内さんは、事業戦略ブランディングを依頼して以降「すべてがプラスになっている。札幌きたキッチンで販売後、飲食店に広がって、友達のシェフを紹介してくれるなど横のつながりで広がっていっている」と話します。メディアの取材も増え、売上は2倍近くに上りました。

「作り手の想いをパッケージで伝えられることを初めて知った」

こうした作り手や販売者とリプロールの山口さんを結び合わせてきたのが、北海道産食品の卸売や道外の北海道どさんこプラザの店舗運営を行う株式会社北海道百科の常務取締役 勝浦忠さん。道産品セレクトショップ「きたキッチン」の立ち上げに従事したほか、道内各地の商品開発のアドバイスを行うなど、道産食品を育てていきたいとの強い想いを持っています。

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リプロールの山口さんのブランディング戦略を絶賛する北海道百科の勝浦常務

そんな勝浦さんは、2011年に知り合った山口さんのブランディング能力の高さを早くから見い出していました。「一番素晴らしいのは、各素材の特徴を掴んで、わかりやすく伝えてくれること。こだわりを作り手から聞き出して消費者に伝えることはとても難しい。山口さんはしっかり話しこまれて、作り手を理解されているので、説明がなくても想いが伝わるパッケージデザインが出来上がってくる」と評価します。

そして、前述の「米艶®」を好例に出します。「正直、白い黄身の卵は見た目では売れないと思っていた。作り手の想いは素晴らしいものだが、それを伝えるのは本当に難しかった。売り方を迷っていた中で、それをパッケージで伝えられることを初めて知った驚きの商品だった」と振り返ります。

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きたキッチンで販売されている竹内養鶏場の「米艶®」

リプロールの山口さんは、このほかにも海外でのパッケージデザインコンテストの受賞歴や、スーパーで販売されている商品まで手掛けているだけでなく、2012年に初めて訪れた台湾では、2017年から百貨店の日本物産展プロデュース等も手掛けているといいます。今では中国語も習得しました。今般のコロナ禍においても、オンライン商談を取り入れた新たな物産展の取り組みを行っています。10月28日~11月10日まで、台湾高雄市の大立百貨店では日本伝統工芸の職人が8社(岩手県、山形県、新潟県、大阪府、滋賀県等)参加する物産展が開催されており、現地メディアからも非常に多くの注目を得ているといいます。

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新たな物産展の取り組み「大立百貨店の日本職人展」(提供:大立百貨店)

また、食品パッケージ企画・販売事業の取り組みとして、自社PB(プライベートブランド)商品のフードデリバリー、テイクアウト向け液漏れ防止機能付き容器「おうちでかんたん®」を2020年8月に発売しました。全国の飲食店から連日問い合わせが来ており、「今まで配達中の液漏れが懸念され、テイクアウトやフードデリバリーの取り組みで課題のあったラーメンやスープカレーなどもこれがあれば、少しでも飲食店の役に立てると考えたため、取り組んでいる」と山口さんは話します。沖縄県では、沖縄そば専門店への導入実績もあります。

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全国から問い合わせ殺到中の「おうちでかんたん®」(提供:リプロール)

創業10周年を迎え、今後もリプロールの企業活動の信念である『経営者の力になる』、『顧客のワンストップパートナーになる』ことに磨きをかけ、「事業戦略ブランディング®」の手法を用いて地域活性化に貢献していくことでしょう。

受賞実績

受賞商品名
2012年北海道新技術・新製品開発賞食品部門【特別賞】北海道チョコ’豆(ず)
2012年All Japan natural cheese contest【金賞】黒松内blue cheese(トワ・ヴェール)
2014年日本全国ご当地味噌&醤油グランプリ【最高金賞】きんきの露®(魚醤)(株式会社中井英策商店)
2016年北のハイグレード食品+2016【受賞】十勝糖彩®(株式会社珈琲専科ヨシダ)
2016年2016金點設計獎-Golden Pin Design Award(台湾国際デザインコンテスト)【受賞】さとうむすび®(吉田農場)
2019年フード・アクション・ニッポン・アワード2019【受賞】のむお酢(株式会社まつもと薬局)
2020年北のハイグレード食品2020【受賞】のむお酢(株式会社まつもと薬局)
2020年第27回北海道加工食品コンクール【奨励賞】ビーフ・ズーシー(株式会社中井英策商店)
2020年北海道新技術・新製品開発賞食品部門【優秀賞】ビーフ・ズーシー(株式会社中井英策商店)

これまでの制作実績等はリプロール公式サイトをご覧ください。
https://www.reproall.com/works

フードデリバリー、テイクアウト向け液漏れ防止機能付き容器「おうちでかんたん®」
https://www.ouchide-kantan.jp/

取材協力:株式会社北海道百科/株式会社竹内養鶏場/株式会社中井英策商店/有限会社長沼ファーム/株式会社tobe/株式会社まつもと薬局

(提供:株式会社リプロール)

筆者について

編集部

北海道ファンマガジン編集部。編集部スタッフが取材執筆した記事や、名前を出さないライターの記事、寄稿記事の掲載の際にもこのアカウントが使われます。