北海道の農作物といえばじゃがいも。紛れもなくじゃがいも。じゃがいもといえば北海道なのであります。日本一おいしいホクホクなじゃがいもです。じゃがいもの白い花が咲き誇る広大なじゃがいも畑の風景も、北海道らしいですよね。
じゃがいもや馬鈴薯という名前も使いますが、北海道では「ゴショウイモ」と呼ぶ人が多くいます。ゴショウイモという名前は、1株から五升分の収穫量があるという意味の「五升イモ」に由来します。ただ単に「イモ」と呼ぶ人も少なからずいますね。
そんな「ゴショイモ」こと、じゃがいもにスポットをあててみましょう。
なぜ北海道が生産量日本一?
北海道のじゃがいも生産・収穫量は、日本一です! なんと国内の8割の生産量を誇っているのです(約223万トン)。道民だけではとても食べきれない量です。2位の県が10万トンくらいですから、圧倒的シェアですね。味、つまりおいしさも北海道はナンバーワンと、厚い支持をうけています。
では、なんで北海道がじゃがいも生産量ナンバーワンなのでしょうか。第一の理由は、昼と夜の温度差が大きいから。第二に、梅雨が無く春から秋に雨が少ないので糖度やでんぷん質が高まるから。他にも、厳しい環境なので害虫も少ないし、そのぶん農薬も少なくクリーンなので、おいしいじゃがいもがたくさんとれます。
北海道の有名な産地といえば、羊蹄山麓の後志管内ニセコ町、倶知安町などがあり、良質なジャガイモ生産においてひと目置かれる存在です。しかし振興局別で見ると、一番はやっぱり十勝管内で、道内40%超の収穫量です。続いてオホーツク管内。その次に後志管内、上川管内と続きます。
いろいろある北海道のじゃがいも
一口にじゃがいもといっても様々な品種があります。代表的な男爵いも、細長いメークイン、北海道うまれのきたあかりなどがあります。北海道では様々な品種のじゃがいもが育てられています。
男爵いも
北海道におけるじゃがいもの歴史は、1706年に現在の檜山管内せたな町で栽培された記録があるようですが、本格的な普及は明治時代のことでした。明治時代の1873年以降、開拓使がアメリカから種芋を輸入したのが始まりでした。しかし大きなきっかけとなったのは「男爵いも」です。
男爵いもの名前の由来は、函館どつくの川田龍吉男爵。1908年(明治41年に、留学中に英国人の恋人とじゃがいもを食べた思い出があったこともあり、英国からアーリーローズの変種アイリッシュ・コブラー種芋を輸入しました。これを七飯の自家農園で育ててみたのですが、これがあっという間に近郊に広まっていきました。
そしていつしか「男爵いも」と呼ばれるようになりましたが、正式にこの名前になったのは、北海道の優良品種に決まった1928年(昭和3年)のことでした。男爵芋の主な産地は、檜山管内今金町、後志管内京極町および倶知安町です。
男爵いもの特徴はご存知、丸みを帯びている形で、白い肉色、でんぷん含有量が多くホクホク感のあるじゃがいもです。
メークイン
男爵いもの後、1917年(大正6年)になると「メークイン」が北海道に上陸しました。そして北海道の優良品種として男爵いもと同じ1928年(昭和3年)に認められるようになりました。特徴は、形が細長く、表面は芽が少なくて浅いこと、そして煮崩れが少ないこと、粘り気があるので煮込み料理に向いています。
メークイン発祥の地は道南の檜山管内厚沢部町だとされています。道庁檜山農事
試作場ではじめて試作され、しかもメークイン発祥の地の碑まで建てられる熱の入れようです。
きたあかり
「きたあかり」は、北海道生まれの新品種として大注目のじゃがいもです。男爵いもとツニカを父母とし、1987年には北海道優良品種にも選ばれたエリートです。
名前の由来は、北海道の「北」、そして希望の明るさからだそうです。甘味が強く、肉色は黄色めで、男爵芋以上にでん粉が多いのが特徴。ビタミンCやカロチンも豊富であり、料理時間は短くていいというメリットがあります。
カルビーがお世話になってます……
「ポテトチップス」といえばカルビー。チップスだけじゃなくじゃがりこも作っている会社ですね。そのカルビーの子会社にあたるカルビーポテトは本社が帯広市にあるという北海道の会社。カルビーが作るポテトチップスの原材料となるジャガイモは、ほとんどここから提供されています。
それは当然、北海道がじゃがいもの名産地だから。しかも良質。上川管内美瑛町など地域ぐるみで契約を結んでいるとか。
ポテトチップスの原材料となるじゃがいもの品種は「トヨシロ」。かつて「農林一号」でしたが、このトヨシロの誕生で、焦げづらく、凹凸も少ないためにポテトチップス生産がしやすくなったようです。1976年のことでした。
北海道流のじゃがいもの食べ方! じゃがバター、イカの塩辛、揚げ芋、いももち
北海道開拓時代や戦時下の北海道において、稲作がなく専ら畑作だったこともあって、作りやすく貯蔵もしやすいじゃがいもなどに頼った食生活を道民は送っていました。
じゃがいもはそれほど北海道民に密着した重要な食べ物です。おやつ代わりに食べることもあります。ジャガイモをどうやって食べるのでしょうか。一番はあつあつのじゃがいもにバターをつけて食べるのが一般的でしょう。
函館など道南地方では、新鮮なジャガイモに、バターの代わりになんとイカの塩辛をつけて食べるのが常識となっています。塩味との絶妙なコラボレーションが絶妙なのです。北海道内でも地域によって食べ方に違いがあります。
ジャガイモを使ったおいしいおやつといえば、国道230号沿いの中山峠(札幌市-喜茂別町)の土産店で売っている「揚げ芋」。これはおいしすぎで、大変人気です。
また、古くからの家庭料理「いももち」という北海道ならではのおやつもあります。茹でてすりつぶしたジャガイモに片栗粉を混ぜて作ることで、もちのような感触を再現しています。形は団子状または大根輪切りの薄いバージョンと考えてくれればよいかと思います。
倶知安町では男爵いものでんぷんを使った「豪雪うどん」も食べられています。
オホーツク管内小清水町でもじゃがいも栽培が盛んです。じゃがいも街道と呼ばれるじゃがいも畑に囲まれた道路が有名です。そんな小清水町のローカルフードは「でんぷんだんご」。町民の間で親しまれています。また、北海道みやげに名を連ねるお菓子「ほがじゃ」も小清水町の工場で生産されています。
じゃがいもを食べる際は、北海道民の食べ方を真似して食べてみてください。きっと病みつきになりますよ。
※本稿は2008年6月16日に公開した記事を再編集したものです。