トマトなのになぜ桃なの?鷹栖町の「オオカミの桃」の真相とは

道内各地の特産品や地場産業の話題をお伝えする連載「北洋銀行のこの街紹介」。今回は、旭川市のお隣、鷹栖町からお届けします。

ある日、車で通りかかった鷹栖町の道沿いに、気になる看板を発見しました。「オオカミの桃」という、大きな赤い文字。あれは何なのだろうと気になって仕方ありません。オオカミの桃とは、いったい何?

オオカミの桃って何? どうしてそんな名前なの?

▼これが「オオカミの桃」看板だ!

オオカミの桃という言葉そのものも気になりますが、筆書きしたような荒々しい文字も気になります。よく見れば、建物の入口には「株式会社鷹栖町農業振興公社」と書いてあります。ますます混乱してきたので、思いきって中へお邪魔することにしました。

▼「オオカミの桃」の正体は……

皆さんは、この記事のトップ写真でもうお分かりですね。そう、オオカミの桃の正体は、果汁100パーセントのトマトジュースなのでした。札幌の道産品セレクトショップきたキッチンや、東急百貨店地下食料品売り場でも取り扱っているので、知っている人も少なくないかもしれません。

オオカミの桃はかつて稲作中心だった鷹栖町に、農産物の付加価値を高め、町民の健康づくりにも役立つような特産物を作ろうと、1981(昭和56)年から製造が始められたのだそうです。

▼30年以上前からトマトに注目した鷹栖町

気になるネーミングは、トマトの学名「ソヌラム リコペルシカム」に由来しています。リコペルシカムはラテン語で直訳すると、リコスはオオカミ、パーシコスは桃。それらをつなげて「オオカミの桃」と名付けたというわけです。

ところが、このユニークな名前が大当たり! 1983(昭和58)年、北海道全域から212市町村(当時)が参加した「ニューフロンティア・フェスティバル」に出品したところ、ネーミングの奇抜さとそのおいしさから、なんとベストテン(ランク2位!)入りするという高い評価を得たのです。

▼余計なものは何も加えず、トマトそのものの味

その後、消費者からの問い合わせや、流通業界からの要請などもあり、1986(昭和61)年に公社を設立し本格的な出荷を始めました。以来、30年以上にわたってファンを増やし続けている人気のトマトジュースとして、鷹栖町の特産品になっているのです。

徹底した出荷基準の下で育ったトマトを使用

▼ハウスで大切に育てられるトマト

オオカミの桃の味を決める大切なトマトの出荷契約生産者は、現在、鷹栖町と旭川市で105軒。トマトをただ煮込むというシンプルな作り方で、樹上完熟させたトマトのみを使用することから、出荷基準の徹底をお願いしているそう。

▼徹底した管理の下ですくすくと

ビニールハウス内で育てるとはいえ、やはり日照時間といった気象条件の影響は避けられません。その年に採れたトマトで作られるオオカミの桃は、毎年8月1日から販売が始まるのですが、年間生産本数は公表されていません。ただ、早い時では年明け早々に完売してしまうこともあるといいます。

▼トマトの品種はナイショ!

また、トマトの品種についても公表はされていません。取材時にこっそり教えていただいたヒントによれば、ほどよい甘さとほどよい酸味のバランスがいい、レッド系と呼ばれる品種だということです。

実際にオオカミの桃を飲んでみると、そのバランスの良さが納得できるはず。濃厚なトマトの味をダイレクトに感じながらも、えぐみや渋みは全くなく、スッキリとした後味です。

▼ジュースになるのを待つ、真っ赤な完熟トマト

オオカミの桃は、塩の入ったタイプと入ってないタイプの2種類があり、どちらも税抜き900円(1リットル)です。先述したようにきたキッチンや東急百貨店でも取り扱いがあるため、札幌市内でも手に入ります。

とにかくインパクトのあるネーミングなので、一度その名を知ってしまえば、いざ出会った瞬間にパッと目に飛び込んでくると思います。そんな時は迷わず手に取って、ぜひ一度飲んでみてください。鷹栖町が誇るおいしい恵みが、瓶の中にギュッと詰め込まれているのを実感するはずです。

北洋銀行 旭川北支店

所在地:旭川市大町1条3丁目14番地の12
電話:(0166)51-3121

取材協力

株式会社鷹栖町農業振興公社
所在地:北海道上川郡鷹栖町11線5号5番地
電話:0166-87-2938