北海道一いや日本一?道南の巨大洞窟に広がる氷筍の森

冬の北海道には他では見ることのできない、特有の寒さからなる様々な風景や造形物があります。その中に、以前にも取材している氷筍があります。

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北海道で氷筍を見ることができる場所は、以前取材した3箇所くらいかと思っていましたが、今回、氷筍写真家である森大輔さんから、他にも道南に氷筍を見られる場所があるとの情報を得ました。おそらく道内一、いや日本一であろう規模だということなので、森さんの撮影に同行することにしました。

往復5時間、冬山探検装備。

当日は森さんと、よく一緒に探検しているという三浦裕さんと私の三人で、氷筍のある洞窟へと向かいました。目的地までは、ひたすら冬山登山、しかもかなりの危険地帯とのことで、それなりの装備が必要です。

洞窟の中へ入るので、ヘルメット、ヘッドランプ、さらには洞窟内の地面が氷で覆われているので、アイゼンを携帯し、スノーシュー(カンジキ)を履いて登ります。

慣れている二人は、ソリに荷物を載せて引っ張るという、北極点を目指すかのような出で立ち。目的地までは片道約4.5kmあり、登りで2~3時間はかかることを考えての装備なのだそうです。

▼重い荷物を長い距離運ぶためのソリ

巨大洞窟と3mを超える氷筍の森

3時間ほど歩いて到着した先には、雪の中にぽっかりと口を開けた洞窟が見えてきます。ここで、小休止しつつ、洞窟探検の装備を身につけます。

周りは崖で囲まれた地形で、入り口には雪が大量に積もっているため、洞窟に入るというよりは降りていくという感じです。

高さ10m、幅15mほどの広さの洞窟内部には、奥へと続く横穴がいくつかあり、その中には崩れた土砂で半分埋まっているものや、扉のように氷で塞がれた穴があり、そのどれもが探究心をくすぐります。その中の一つ、入り口から氷筍らしきものが確認出来る横穴へと入っていきます。

一歩進むごとに暗い洞窟の奥に氷の柱が見えてくるのですが、横穴へ完全に入ると、まさに息をのむ光景が広がっていました。

横穴への入り口は狭いものの、中の高さは約15m、幅は30mあるかと思われる広さで、中央に岩の柱があり、ドーナツ状の空間となっています。

さらに先が見通せないくらい深くまで洞窟が続いており、ドーナツ状の空間とその先の暗がりまで、高さ3mほどある氷筍が人が通れないほど、びっしりと生え揃っているのです。「闇の中の氷の森」とでも表現したらよいでしょうか。

▼先が見通せない奥まで氷筍がビッシリ

写真や動画を撮るにしても、どこから手をつければ良いものか迷うくらいです。

案の定、地面は氷筍と同じく泥や砂利、空気すら含まない氷で覆われていますので、アイゼンを装備していても慎重に移動しなければなりません。壊さぬようにゆっくり移動しながら撮影を続け、気がつくと滞在時間は3時間を超えていました。

人を寄せ付けない場所に存在している事と、指先で触れたたけでも壊れてしまうような儚さと妖艶な輝きを合わせ持つ氷筍に、三人共静かにですが、確実に興奮していたのでしょう。

まだまだ撮り足りないと思わせるほど、広大な氷筍の森。自然の驚異の造形物とは、このようなものなのでしょう。

▼人の背丈を超える氷筍

危険と紙一重の光景

圧倒的な光景を堪能できましたが、森さんが昨年訪れた時よりも、氷筍の数が減っているとのこと。その理由は、以前氷筍があった場所の洞窟の一部が、崖崩れで埋まってしまっているためでした。

洞窟内を注意深く見回すと、所々天井に穴があり、その真下には崩れ落ちたと思われる土の山がありますし、洞窟内の壁を指で押すと、パラパラ崩れる部分があります。

私的な感覚ですが、多分、地震が起こるたびに崩れているのではないでしょうか。また、水が凍る時の体積の膨張など、さまざまな要因で少しづつ崩壊が進んでいるように思われます。

▼天井に見られる穴は、岩が崩れ落ちた跡

▼崩れ落ちた土砂の上に新たな氷が育っています

氷筍自体、気温等の条件が揃わなければ育たないもの。気軽に行くことができない冬山の中という場所と、洞窟の状態からも数年後には氷筍は見られなくなるかもしれません。

今回、綿密な計画と準備、装備を整えて入ったわけですが、氷筍を見ることができたのは、運が良かったとも言えるでしょう。同時に、北海道にはまだまだ人知れず魅力ある光景が存在しているのではないかと思わせてくれます。

【動画】動画で見る道南の巨大洞窟の氷筍の森

https://www.youtube.com/watch?v=af8sYyk69SM