古材を活かし自らリノベーション!ぬかびら源泉郷「糠平温泉 中村屋」

「ぬかびら源泉郷」の魅力をユニークな方法で楽しませてくれる2つの個性的な宿をご紹介するシリーズ。前編の「山の旅館 山湖荘」に続き、今回は「糠平温泉 中村屋」をご紹介します。自然の中で本当にゆっくりしたい方、心の洗濯をしたい方、そして自然をアクティブに楽しみたい方も必見です。

自分で焼ける、火鉢でおやつ。

ぬかびら源泉郷で、もうひとつ、個性的な宿が「中村屋」。ロビーに足を踏み入れると、そこは古き良き時代の日本の香りが漂うレトロな空間。柱時計が時を刻む音、火鉢で時折パチッと炭が燃える音など、忘れていた暮らしの音が心をほどいてくれることに気づくでしょう。

広いロビーには、心地好いソファーやイスが配されています。目を引くのが火鉢。「これでおやつを焼くんですよ」と笑う中村健次さん。実はロビーはカフェにもなっていて、壁にかかった黒板にメニューがあります。

どれも十勝産、上士幌産にこだわった材料で手作りされたもの。例えば、十勝産小麦の生地に小豆あんのスコーン(各150円)、上士幌産の野菜を入れたおやき(各200円)、ビスケット(200円)など。

オーダーすると、中村さんが炭を持ってきて火を興してくれます。真っ赤になった炭をボーッと見ているだけでも癒やされるような気がします。カフェはどなたでも利用できますので、日帰り入浴とともに、またドライブの途中に立ち寄るのもOKです。

▼中村屋を色々な意味でまだまだ造り続けている中村健次さんと奥様の舞さん。「中村屋」のおもてなしはどれもお二人の心遣いが程よい距離感で感じられて心地好いのです

ひとつずつ作り上げたリノベーションの客室

そんな「中村屋」ですが、以前は50室も有する大きな温泉ホテルでした。ホテルから小規模の宿へと方向転換したのは1995年。以来、舞さんのお父様がコツコツと一人でリノベーションを行っていました。そこへ2002年に、健次さんと舞さんが糠平に戻り、地元の自然、食材の豊富さを改めて知ることとなります。

「ここでしか味わえない良さがある、この宿でしか感じられないものがある……それを大切にしていこうと思いました」と語る健次さん。それから14年をかけて自分たちの手で部屋をリノベーションしてきました。

「最初は大工さんに入ってもらっていましたが、間近に見ながら大工作業を覚えました。見よう見まねでしたが、自分たちでやってみようと……。宿の方を営業しながらでしたから、けっこう大変でしたね(笑)」と言います。部屋の内装をはがし、骨組みだけにして、どんなふうにしようかとイメージを広げます。部屋の向き、広さ、柱がどこにあるか……すぐイメージできるところもあれば、なかなかうまく完成図が浮かばないことも。

「時には十勝の古民家の古材や、タイル屋さんに古いタイルを買い付けに行ったり……大変だと思いましたが、今は楽しいですよ。古いものの良さを活かして新しいものを組み立てる、その作業は喜びでもあります」

現在は17室あるうちの7室をリノベーション。どの部屋も木をふんだんに使っているせいか温もりを感じられるようなやさしい空間。随所に中村さん夫妻のセンスが光ります。部屋の家具などの使いやすさ、そして滞在中くつろげるような湯浴みと快適な眠りのための気遣い。どれも「自分たちが滞在するなら……」の視点からだと気づきます。それこそが中村屋のサービスの原点となっているようです。そしてリノベーションは、これからも続きます。

▼中村さんたちスタッフがリノベーションした室内。細かなところまで使いやすさと快適さを考えています。畳のヘリにはエゾシカの皮を使用。優しい色合いです

▼古材の特徴を活かした客室の入り口。こんな演出も糠平の自然と融合しているようなスケールの大きさを感じます。
客室の入り口に埋め込まれたタイルも、ひとつずつ手作業で作りました



▼枕やリネンは選べるようにセットされています。心遣いが嬉しい

▼トイレの引き戸の取っ手は、旧士幌線の鉄路の枕木を固定していた犬釘を利用

▼「ヒトリシズカ」と名付けられた、屋根裏的小部屋。宿泊の方専用の貸切スペース。音楽を聴いたり、読書をしたり、思い思いの時間をどうぞ

▼天井にも糠平に自生する植物の絵が。館内あちこちに楽しい発見がちりばめられています

「あったらいいな」がぎっしりの『エゾリスの穴』

宿にいる時間を持てあましてしまう……そんな経験はありませんか? 例えば読書をしたいけど本がないという場合、中村屋にはロビーに、廊下の端っこに、ちょっとした空間に本棚があります。

▼館内のちょっとしたスペースには本棚が置かれています

その他に、例えば旅先から手紙を出したい、お部屋でアロマを楽しみたい、絵を描きたい、星座を観察したい、目の疲れを取りたい、トランプで遊びたい、取れたボタンをつけたい、頭痛がする、切り傷を作ってしまった……こんなことに対応できるアメニティやグッズ、備品がズラリと並んでいるのが「エゾリスの穴」と名付けられている小部屋です。

▼滞在の時間をもっと快適に楽しくしてくれる「エゾリスの穴」。24時間利用可能なコンビニエンス小部屋

お部屋にあるけど足りなくなったというものから、旅に持ってくるのを忘れたもの、糠平で遊ぶためのものまで、多種多彩なものがズラリと並んでいます。24時間利用できるのもうれしい。宿の時間、糠平での時間をもっと快適に楽しく、そんな心遣いが詰まっています。

夕食は1杯の自家製果実酒から、朝は牛乳の配達から

アキグミ、黒実山査子、蝦夷山桜、オンコなどなど、「中村屋」自家製果実酒が常時10種類、他にもジュースが用意されています。体調や気分によって選ぶのも楽しい時間。効能を読みながら好きな1杯、夕食は果実酒選びから始まります。

▼夕食前に果実酒を1杯どうぞ。ノンアルコールドリンクもあります

また、夕食と朝食で使っている食材の生産者と販売者を黒板にズラリと明記。夕食には糠平周辺で採れた山菜や野草、十勝の食材が中心となっています。

「十勝の豊かな食材、おいしいものを一生懸命作っている人たちの想い、そういうものをていねいに伝えて行きたい」と話します。黒板に並んだものをミルだけでも、どれだけの生産者、販売者が関わっているのから分かります。ふだん何気なく食べているものにも、実は多くの人が関わっている。美味しい食事には美味しさを支える人がいる、そんなことを改めて感じるでしょう。

そして朝、目覚めの時間に合わせて上士幌町の「しんむら牧場」の牛乳を部屋のドアに掛けておいてくれるのも嬉しいサービス。牛乳配達がある宿、ちょっと素敵だと思いませんか。

「中村屋」では、夕食、朝食とも、食事のみの利用も可能です。入浴をセットでもOK。いずれも予約が必要なので、詳細は問い合わせください。

おみやげ選びはじっくりゆっくり

「中村屋」1階にある「おみやげのまるみ」。そこは「中村屋」のセレクトショップです。いわゆる北海道土産の店ではありません。「中村屋」で過ごした時間、糠平を感じた時間をお持ち帰りできるような品々が並んでいます。

▼「おみやげのまるみ」には、中村さん夫妻が厳選したものがズラリ。宿での滞在時間、糠平で思い出をそのまま持ち帰ることができるようなものが揃っています。自分へのお土産にもどうぞ

部屋で使ったリネン類、エゾシカの皮で作られたバブーシュー、クッション等の小物、オリジナルのリネンやデニムのエプロン、お部屋にもある中村屋せっけん、その他にも厳選した地元で作られたお菓子やお茶、豆の量り売り、地元作家の作品など、とにかく「中村屋」のおもてなしを表現するものが並んでいるのです。

「ここで過ごした時間、感じたことを持ち帰っていただけるようなショップにしたかったんです。私たちが美味しいと思ったもの、いいな~、素敵だな~と感じたものを揃えています」と中村さん。ひとつずつ手にとり、じっくりとお土産選びを楽しめるでしょう。もちろん自宅用に、自分用にも素敵なものに出会えるはずです。

また、野菜市も行っています。実際に食事に使っている新鮮野菜を購入できるとあって、お土産よりも自宅用に購入する人も多いそう。日によって登場する野菜が変わります。

最後までかけ流しの湯を楽しんで

チェックアウト後にも「ひとっ風呂」を無料で利用できるのも「中村屋」ならでは。糠平は自然の宝庫。登山、釣り、トレッキング、冬にはゲレンデで……とたっぷり遊んだ後にひとっ風呂浴びたいもの。その想いをかなえてくれる嬉しいサービスです。遊んだ汗を流して体を温めながら糠平での時間を思い返す……そんな濃厚な時間を最後まで過ごして欲しい。そんな想いを感じます。

▼源泉かけ流しの湯は、お肌がすべすべ、芯からじんわり温まります。
脱衣所も木をふんだんにつかった優しい作り。お風呂上がりのくつろぎのひとときを

▼露天風呂で明るい時間は周囲の自然を、夜は真っ暗にして満天の星空を……そんな贅沢な時間が、ここにあります

ぬかびら源泉郷のかけ流しの湯を思う存分味わってください。

糠平温泉 中村屋
所在地:上士幌町ぬかびら源泉郷
TEL:01564-4-2311
FAX:01564-4-2367
ウェブサイト
※ペット同伴での宿泊も可。詳細はHPまたはお電話で問い合わせを。

日帰り入浴:7:30~10:00、14:00~20:30(最終受付)
大人 500円/小学生 300円/幼児 200円