「めんみ」をご存じでしょうか? 北海道民なら、すぐに麺つゆのことだとわかります。なぜ北海道民はわかるのか、それは北海道限定販売の麺つゆだから。
販売しているのは醤油でおなじみのキッコーマンです。キッコーマンほどの大手が北海道限定の麺つゆを作っているという謎。その謎を追って千歳にある北海道キッコーマンの工場を訪れました。
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道民にとってのめんみとは
出迎えてくれたのは、北海道キッコーマン株式会社の小川善弘社長です。そもそもめんみとは、全国的に発売されているほかの麺つゆと何か違いがあるのでしょうか?
▼工場長も兼ねている小川社長
「一般に売っている麺つゆは、昆布とかつおのだしにしょうゆやみりんを加えて作られています。それに対しめんみは、かつお、にぼし、昆布、さば、ほたてなど5種のだしに、しょうゆとみりんを合わせたものです。ほたてが使われているのは珍しいんですよ」
工場内には、めんみのだしを作る専用ブース「北のめんみ屋だし工房」が設けられています。
▼めんみ作りの核ともいうべき場所(写真提供:キッコーマン株式会社)
また、2倍濃縮や3倍濃縮が多い麺つゆですが、5倍濃縮というのもめんみの特徴。北海道民は、これを醤油代わりに使うことも多いのだとか。
▼裏には料理ごとのうすめる割合が表記されている
最近では、北海道ならではの文化や習慣を紹介したテレビ番組が放送されたり、書籍が出版されたり、めんみが北海道限定だと知っている道民も多くなってきています。
しかし、少し前まではめんみが全国販売の商品だと思っている人がほとんどでした。化学調味料のことを「味の素」というように、麺つゆのことを「めんみ」というのが普通だと思っていたのです。
なんと最初は全国販売だった
それにしても不思議なのは、大手企業であるキッコーマンが北海道だけに向けて限定商品を作っているという事実です。
「実は最初から北海道限定だったわけではありません。元々は全国どこででも買える商品だったのです」と、小川社長の口から意外な過去が明かされました。
1959(昭和34)年に、しょうゆとみりんを合わせた万能調味料の萬味(まんみ)が発売されました。言うまでもなく、これがめんみの原点です。その後、1961(昭和36)年には、だしを加えためん類用まんみを発売。1964(昭和39)年、名称がめんみに変わりました。
▼右が最初に発売された萬味、左がめん類用まんみ(写真提供:キッコーマン株式会社)
徐々に変化を遂げてきためんみですが、その歴史の中で、いつしか北海道だけの販売になっていきました。「濃いめで甘辛の味が北海道民に合ったのでしょうね」と小川社長。
北海道ではスーパーなどであたりまえのように売られているめんみですが、道外では北海道物産を扱う店でしか買うことができません。そのため、道外で暮らす北海道出身者は、わざわざそうした店に出向いて買い求めているようです。
▼北海道キッコーマンでは大量のめんみが製造されている(写真提供:キッコーマン株式会社)
めんみで北海道メニューをつくってみよう!
ところで、道民にはなじみ深い調味料ですが、もし道民以外の人がめんみを手に入れた場合、どのように活用できるのでしょう。それを教えてくれるのが、キッコーマンの公式サイト。「『めんみ』でつくる北海道メニュー」というレシピ紹介のページがあり、参考になります。
中でも小川社長のおすすめが「ほたじゃが」。簡単でおいしいということだったので、レシピを参考にして実際に作ってみました。
▼本当に簡単でおいしいできあがり!
使いこなせば、なにかと重宝しそうなめんみ。北海道に住んでいなくても、北海道物産展などで取り扱っている場合もあるので、見かけた際にはぜひ手に取ってみてください。また、北海道旅行に来る機会があれば、新千歳空港でも販売しているのでお土産にいかがでしょう。ま、北海道まで来たのなら、先に述べたようにどこのスーパーでも手に入るんですけどね。