釧路湿原は、釧路市の北側にある日本最大の湿原です。1987年に国立公園として認定され「釧路湿原国立公園」となりました。東西最大幅25km、南北最大幅36km、面積22,070haと広大な敷地は、手つかずの自然の宝庫。死ぬまでにいちどは行っておきたい観光地だと言われています。あまりの広さに、観光の際には公園のどこからどのように回ったらよいのだろうと悩んでしまう方も多いことでしょう。
そこで編集部では、釧路湿原で有名な5か所の展望台を訪れてみました。たどったのはJR釧路駅を出発して湿原の東側から西側ぐるっと回るというコースです。是非参考にしてください。
▼JR釧路駅から出発
(1)細岡展望台(釧路町)
最初に向かったのは釧路湿原の東部にある細岡展望台です。 JR釧路駅からは、距離にして25kmぐらい、40分弱で到着しました。
展望台のすぐそばに駐車場があるので、あまり歩くことなく展望台に行くことができます。展望台からは広大な釧路湿原を見ることができ、その中を大きく蛇行しながら流れる釧路川を見ることもできます。
▼大きく蛇行しながら流れる釧路川
細岡展望台に向かう途中では、JR釧網本線の細岡駅の前を通りますので、時間があるようなら立ち寄ってみてはいかがでしょうか? JR釧網本線は、東釧路駅から網走駅までを結ぶ列車で、1日5往復ほど(区間によって本数が違う)運行されているので、タイミングがよければ列車を見ることもできます。
▼細岡駅
細岡展望台の駐車場から歩いて行けるのが釧路湿原駅です。先に書いた細岡駅の隣の駅で、細岡展望台に向かう途中の道で看板を見かけますが、そちらから行くと駐車場がないため、見学されるなら細岡展望台の駐車場から歩いて行った方がよいでしょう。
▼釧路湿原駅
(2)夢が丘展望台(釧路町)
夢が丘展望台は、達古武(たっこぶ)オートキャンプ場の駐車場を利用します。達古武オートキャンプ場は、達古武湖畔にあるキャンプ場です。 細岡展望台から達古武オートキャンプ場までは約10km、20分ほどで到着しました。
▼達古武オートキャンプ場
▼達古武湖
夢が丘展望台は、駐車場から案内板をたよりに約2.3kmの山道を歩いて行く展望台らしいのですが、実は行けませんでした。なんでも熊が出たそうで通行止めになっていたのです。ガイドブックなどを見ると「往復2時間ぐらい歩く山道はけっこうきついが最高にすばらしい景観」とのこと。訪れて通行止めが解除されていたらぜひ行ってみてください。また、もし行けなかったとしても、達古武湖を見たり、湖畔の散歩ができます。
▼熊が出たそうで通行止めだった山道
(3)サルボ展望台・サルルン展望台(標茶町)
サルボ展望台は、国道391号線沿い、塘路湖(とうろこ)の北側にあります。 達古武オートキャンプ場から11kmほど、約15分で到着しました。注意することは、駐車場がかなり分かりづらいこと。筆者はいちど通り過ぎてしまいました。
▼サルボ展望台には、このような山道を登っていく
展望台に行くには駐車場から山道を登っていきます。けっこうきつい山道を20分ほど登りますので、革靴やハイヒールなどでは行くのはむずかしいでしょう。
▼山道を20分ぐらい歩くと到着する展望台
サルボ展望台からは、釧路湿原の中でいちばん大きな海跡湖『塘路湖』を見ることができます。かなり高いところまで登るので絶景が楽しめます。
▼サルボ展望台からの絶景
サルルン展望台は、サルボ展望台からさらに歩いて30分ぐらいの場所にあります。ここは、サルボ展望台よりも視界が広く、塘路湖と周辺の4つの沼(サルルントー、ポントー、エオルトー、マクントー)を見ることができるそうです。……というのは、道がぬかるんでいて筆者の靴ではその先はちょっと厳しかったので、今回は行けませんでした。
▼サルルン展望台からの景観(写真提供:標茶町)
(4)コッタロ湿原展望台(標茶町)
コッタロ湿原展望台は、サルボ展望台から6kmぐらい、約10分ちょっとで到着しました。ほとんどの行程が砂利道で狭いので運転には注意が必要です。
▼コッタロ湿原展望台にはここから山道を登っていく
釧路湿原の北東の端にあるコッタロ湿原は、広い釧路湿原の中でも特に原生の姿をとどめているため、国立公園の特別保護地区に指定されている場所です。駐車場から山道を15分ほど登っていくと展望台があります。山道には階段が作られているため比較的歩きやすいですが、勾配がけっこうきついので歩き慣れていない人にはこたえるのではないでしょうか。
▼展望台には望遠鏡もある
コッタロ湿原展望台からは、ヨシやスゲの湿原や、その中を蛇行するコッタロ川など美しい自然を目の当たりにすることができます。アオサギなどの野鳥を見ることもできるようです(筆者は見られませんでした)。さらに運がよければタンチョウなどが見られることもあるということです。
▼広大な敷地に広がるヨシやスゲの湿原
ちょっと寄り道!鶴見台(鶴居村)
ここは湿原とは関係ありませんが、タンチョウ(丹頂鶴)が見られることで有名な場所です。コッタロ湿原展望台から、次の目的地である釧路湿原展望台に行く途中(少しだけ遠回りしますが)にあるので寄ってみてはいかがでしょうか? 鶴見台は、コッタロ湿原展望台から約20km、30分ぐらいで到着しました。
▼タンチョウの給餌場「鶴見台」
鶴見台は、タンチョウの給餌場のひとつで11月~3月の間、朝方と午後2時半頃の2回タンチョウにエサを与えているそうです。タンチョウを群れで見ることができるので、鶴居村の観光十景に選ばれています。
ただ、タンチョウがいないときもあるので、必ず見られるわけではないことに注意して下さい。特に暖かくなるとタンチョウは移動してしまうので、冬以外はタンチョウがほとんどいないということです(稀にここで越夏するタンチョウもいるそうですが)。ちなみに筆者が行ったとき(11月上旬)には、タンチョウを見ることはできませんでした。
▼ここにタンチョウの群れが訪れる
(5)釧路市湿原展望台(釧路市)
釧路市湿原展望台は、鶴見台から約13km、20分ぐらいで到着しました。ちなみに鶴見台に寄らなかった場合、コッタロ湿原展望台から約30km、40分ほどで着くと思われます。
釧路市湿原展望台は、湿原に群生する「ヤチボウズ」をモチーフに建築設計家「毛綱毅曠」が設計した建物で、1984年にオープンしました。屋上からは、湿原や釧路市街を見渡せることができます。
▼釧路市湿原展望台内では、湿原に関すること、湿原に生息する生物などについて知ることができる
今回、紹介している展望台で唯一の有料施設ですが、映像で四季の湿原を見ることができたり、湿原の歴史などについても知ることができる施設ですので、寄ってみることをオススメします。
▼釧路市湿原展望台の屋上から見た景色
釧路市湿原展望台の裏には、1周約2.5kmの湿原展望遊歩道(北斗展望台園地)があり、歩いてサテライト展望台へ行くことできます。少しの登り降りはありますが、ほとんど木道で繋がっているので、登山靴などでなくても回ることが可能です。ゆっくり回って1時間ちょっとで釧路市湿原展望台に戻って来れますので、ここに来たならぜひ回ってみてはいかがでしょうか。こちらの湿原展望遊歩道は無料で回ることができます。
▼湿原展望遊歩道。このように木道が続いているので歩きやすい
▼釧路展望遊歩道にあるサテライト展望台から見た釧路湿原
所在地:釧路市北斗6-11
電話:0154-56-2424
開館期間:通年
開館時間:5月~10月/8時30分~18時00分、11月~4月/9時00分~17時00分
休館日:年始年末(12月31日~1月3日)
入館料:入館料(1人1回)/大人470円 高校生250円 小中学生120円
(釧路市湿原展望台を含めた湿原関連施設5ヶ所を入場料1,020円(通常5ヶ所で2,450円)でまわることができる、5日間有効パスポート「しつげん55パス」が利用可能)
釧路湿原をほぼ一周し、出発地のJR釧路駅に戻りました。釧路市湿原展望台からは約16kmで、30分ほどで到着しました。JR釧路駅を朝の8時に出発し、展望台ではちょっとした休憩なども入れながらゆっくり回って戻ってきたのは15時半でした。夢が丘展望台が通行止めで行けなかったことや鶴見台にほとんど滞在しなかったことで、少し所要時間は短くなったかもしれませんが、ゆっくり回っても1日かからず回ることができるでしょう。
注意することは、展望台にトイレがない所が多いこと。また、展望台周辺にお店がないので、飲み物、食べ物などは前もって買っておいた方がよいでしょう。もちろんゴミ箱もないので持ち帰りましょう。
湿原をめぐる行程では、釧路川べりで大きな魚を見たり、車の横にエゾシカの群れがいたり、空いちめんに猛禽類が舞っていたり、畑にタンチョウがいたり、山の斜面にキタキツネがいたりと、これまで見たことない風景、生きものを目の当たりにすることができました。
▼釧路川べりまで行くことができた
▼エゾシカ、猛禽類の群れ、タンチョウ、キタキツネ
広大な湿原に感動することはもちろん、道中での発見も多く、充実した時間を過ごすことができました。これから釧路湿原観光を考えている方は、こうした行程そのものの楽しみも味わってみてはいかがでしょうか。
参考文献:釧路湿原国立公園連絡協議会ウェブサイト、釧路観光コンベンション協会ウェブサイト