築50年の書店を中心街活性化の起爆剤に。長万部で進む交流拠点づくり

北海道新幹線 長万部駅開業を10年後に控える人口約5,000人の長万部町で、地域おこし協力隊の佐藤理華さんが中心となって、中心街活性化のための取り組みが進められています。閉店した書店をリノベーションして街の人が交流するスペースを作り、商店街に活気を取り戻そうというのです。その取り組みに賛同者が集まり、支援の輪が広がっています。

築50年の旧「かとう書店」との出会い

祖父母が町内で酪農を営んでいることもあり、幼少期から長万部町の移り変わりを見てきたという佐藤理華さん。長万部を訪ねるたびに、あの頃の活気が戻って欲しいと思っていたそうです。

ある時、長万部駅からニセコに向かう旅行客が乗り換えのため、列車の時間待ちをしているのを見ました。「一泊して長万部を見てもらったらいいのに」。ゲストハウス経営の経験がある佐藤さんは、さっそくゲストハウス開設を思い立ちました。今から約2年前のことでした。

地元商工会等の協力を得て空き店舗を探したところ、新幹線開業に向けて業者にほとんど買い占められている状況。3か所ほど空き地があった中で紹介されたのが、駅から徒歩2~3分程度の距離にある旧「かとう書店」でした。

営業当時のかとう書店(提供)

「かとう書店」の前身は、1930年(昭和5年)に同町静狩で創業。教科書を扱う事業を行っていたといいます。1972年(昭和47年)に駅前商店街のメイン道路沿いに移転新築し、1981年(昭和56年)3月に改装。町唯一の書店でしたが、高齢化と人口減に伴って、二代目オーナーが2016年(平成28年)10月20日の閉店を決断。翌日にお別れ会が執り行われました(書店オーナー自分史より)。

築50年の建物とはいえ、閉店して2年ということもあり、内装もきれいな状態。佐藤さんは、「一年間、どうしたら活用できるかを静かに考えていた」のだといいます。

そんな折、長万部町地域おこし協力の募集がなされることに。2020年6月、駅前地域・商店街空き店舗利活用担当の地域おこし協力隊として着任することになりました。

街の人が交流する場をつくりたい

長万部駅前商店街の現在

佐藤さんは現在、旧「かとう書店」の利活用をメインに、駅前商店街活性化の構想を練っています。とはいえ簡単ではありませんし、時間がありません。2020年、駅前商店街では向かいの甘太郎食堂を含む3店舗が高齢化や後継者不足で閉店。余計に人通りが少なくなったのです。

「かとう書店は、かつて本屋・文房具屋として老若男女が集まる場所でした。今ではシャッター街で、駅前通りは人が歩いていません。そこで私は、わざわざ行きたくなる駅前にするために、(当初思い描いていた)ゲストハウス機能だけでなく、街の人が交流する場をつくろうと考えました」(佐藤さん)

旧「かとう書店」は、メインストリートに面する店舗側と、住居兼事務所だった裏側とにわかれています。まず手掛けるのは、裏側の住居兼事務所だった建物です。どんな構想を思い描いているのか教えてくれました。

喫茶スペースに生まれ変わる1階部分

「1階は昔ながらの純喫茶。リモートワークだけでなく、田舎暮らししたい人や移住体験したい人向けに、長万部がどんなところか体験できる場所にします。喫茶スペースは、街の人が一日店長できるトライアル喫茶になります。高校生が実際に商品を作って販売してみるなど、街の人が主役の喫茶にしたいです。将来的には書籍搬入口だったスペースを町唯一のコインランドリーにして、衣食住をイメージできる場所にしたいですね」

簡易宿泊施設になる2階

「2階は簡易宿泊施設です。3部屋と食堂を設けます。2階の水回りと電気・消防設備の新設等だけで約690万円かかる見込みです」。

SUP(サップ)体験の拠点に

さらに、素通りされる長万部町にとどまって町の魅力を味わってもらいたいとの願いから、1階をアクティビティ案内拠点とすることも検討しています。「自転車、SUP(サップ)、キャンプグッズ、スキーグッズのレンタルも行います。観光だけでなく人や場所をつないでいきます」と佐藤さん。既に広域連携で今金町ピリカ湖でSUP体験、八雲町と黒松内町とを結ぶ自転車アクティビティが動き出しています。

新たな拠点づくりには、約20人からなるサポートメンバーが心強い味方です。既に、書店の廃材を使ってベンチを作り塗装するなどの作業を、プチ移住した人たちの協力を得て行っています。不足分はクラウドファンディングで支援を募ります。「今では、街の人から『いつ開けるの?早く開けてね』と言われるようになりました。必要とされているんだなと感じますね」(佐藤さん)。

北海道新幹線延伸開業にかける思い

「町の活性を取り戻すには、まずは駅前かな。町民ひとりひとりが元気になって支える中で、長万部にないものを駅前に作って北海道新幹線延伸開業を迎えるプランを思い描いています。『長万部駅にあえて降りたい』と言わせるために何を売りにできるか、その仕組みづくりを考えています」と佐藤さん。

北海道新幹線延伸で再整備される長万部駅

北海道新幹線長万部駅開業に伴って、駅前ロータリーが整備される予定ですが、駅の正面口が商店街側になるか温泉側になるかは未定。駅前商店街の姿もいくらか変わることでしょう。

「駅前整備について確定していないからこそ、街の人を動かすくらいのことを仕掛けていこうと思っています。『そんなに人が集まる場所があるなら商店街側を駅正面口にしようか』となるのを期待しています」(佐藤さん)

旧「かとう書店」の新たな拠点の誕生は、北海道新幹線延伸を追い風に、駅前商店街、さらには長万部町を変える可能性を秘めています。サポーターの後押しを受けながら、佐藤さんの挑戦は続きます。

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